税関業務および国境警備
ポイント 国境の通関検査機関を通過する物品は膨大な量であるため、ラボで広範囲にわたり検査することは現実的ではありません。同じことが、大量破壊兵器の拡散防止に役立つ金属検査にもいえます。ハンドヘルド蛍光X線分析計を使用すれば、検査官は、物品を、車両の中、積荷ドッグ、あるいは世界中の遠隔地などいずれの場所でも検査ができます。その結果、はるかに大量の物品を非破壊で迅速に検査できます。現場での大量測定により、さらに強固な規制実施を実現できるのです。 |
兵器拡散防止:世界の安全を守るために
兵器の秘密計画に関わる積荷を発見したり追跡することは非常に重要です。発送の際、意図的に積荷内容を虚偽記載することが往々にしてありますが、ハンドヘルド蛍光X線分析計DElTAは、これらを数秒で検査できます。検査官は通常、Zr、W、Nb、Hf、Ni、Ti、Ta、Crなどの元素を探します。それは、これらの元素が、原子炉の製造に使用される高度な特殊合金の成分であるためです。特殊アルミニウム合金の中に、濃縮ウランに使用される特定の化学物質が含まれていることがわかると、真の使用目的をあぶりだすことができるのです。
国境での通関検査:国民の安全と生活を守るために国境の通関検査官はアメリカ合衆国だけでも15,000人以上います。違法薬物や兵器など明らかに禁止されている物品の持ち込みを阻止するため、国境管理を行っています。そこでは、一見無害ながら実は大量破壊兵器に使用される物質や有毒性金属を含む物質の持ち込みを阻止しています。ハンドヘルド蛍光X線分析計があれば、国境を越える前にこうした物質を即座に検出することが可能です。 一例として1990年代初め、ハンガリーで消費されていたパプリカにパーセントレベルの鉛(Pb)が含まれていることが判明しましたが、それは数名の死者やかなりの病人がでた後のことでした。事故なのか、何者かによる意図的な行為なのか、本当の原因を特定することはできませんでした。 |
一部の国々では、子供が使用する製品であっても有毒金属を原材料とすることに制限が設けられていません。つまり、輸入品のクレヨン、チョーク、プラスチック製玩具や家具などに、有毒レベルの金属が添加剤として含有されている可能性があるためです。中でも最大の問題となるのが、化学結合されず浸出する可能性のある添加物です。これは、一般には、安定剤(Cd、Pb)、難燃剤(Sb、Br)、着色剤(Cd、Pb、Cr)に含まれています。つまり、プラスチック製玩具やクレヨンなどを噛むと、それまで表出していなかった有毒金属が浸出する可能性があるということです。これと似た問題は輸入物の食料品用装飾容器にも起きており、有毒レベルの鉛(Pb)やカドミウム(Cd)が、輸入品の銀めっき深容器から浸出する可能性があります。
米国食品医薬品局が、品質管理規則を実施することは、きわめて重要です。例えば、米国食品医薬品局では、ステンレス鋼製の外科手術器具に最低12%のクロミウム(Cr)含有を求めています。しかし輸入製品の中には、この最低含有量を大きく下回る器具も多く存在しています。ハンドヘルド蛍光X線分析計はこの問題に対処できる優れた検査機器です。大量の物品を、国境の通関手続地において、ダメージを与えることなく迅速に検査することができます。
米国で発生した9.11テロ事件以降、世界経済は「安全性を伴わないジャストインタイム」よりも「ハイテク装備化された国境」を経由して市場に届けることに急速にシフトチェンジしました。ハンドヘルド蛍光X線分析計は「ハイテク装備化された国境」を経由する配送システムにおいて、輸入品を正確かつ安全に可能な限りジャストインタイムで処理する業務のサポートに欠かせないツールです。