このアプリケーションノートでは、厚さ測定と探傷ソリューションを使用して弾性率を測定する方法について説明します。非分散形で等方性を持つ工業用材料において、弾性のヤング率と剛性率、およびポアソン比を測定する方法を学びます。 弾性率の理解弾性のヤング率は、物質が引っ張られたり、圧縮されたりする状況下で、応力(単位面積当たりの力)に対する歪み(変形)の比率として定義されます。 弾性の剛性率は、剪断応力を受けている物質の歪みに対する応力の比率と同じです。 ポアソン比は、1つの軸に沿って応力を与えた物質の横歪みに対する軸歪みの比率です。 |
これらの基本的な材料特性は、生産用途や研究用途に多く用いられ、音速と材料の密度の測定を基に計算で導くことができます。音速は、適切な機器を使って超音波パルスエコー手法で簡単に測定できます。 下記手順は、均一性、等方性、非分散性を持つあらゆる材料(つまり速度が周波数によって変化しない)に有効です。これは断面寸法が、試験周波数の波長に近くない場合に、ほとんどの金属、セラミックおよびガラスについて該当します。ポリスチレンやアクリルなどの硬質プラスチックは、測定は可能ですが音響減衰が高いため難しい測定となります。 ゴムは分散性が高く非線形弾性特性を持つため、超音波測定には向いていません。軟質プラスチックも同様に、横波モードでは減衰量が極めて高いため、通常は検査することができません。異方性材料の場合では、弾性特性が方向によって異なるほか、縦波や横波の音速も方向によって異なります。異方性材料における弾性率のフルマトリックスの生成には、通常、6つの異なる超音波測定値が必要です。材料に気孔があるか、粒度が粗い場合、材料の弾性とは無関係に、粒子のサイズと方向、または気孔のサイズと分布によって、音速にばらつきが生じます。 弾性率計算に必要な検査機器弾性率計算のための音速測定には、通常、39DL PLUS™や一振動子ソフトウェア付属45MGのような超音波厚さ計、またはEPOCH™ 650やEPOCH 6LTのような音速測定機能を持つ探傷器が必要です。72DL PLUS™厚さ計では、より高い分解能の伝搬時間(TOF)測定が可能で、速度測定の精度がさらに高くなります。 この試験では、縦波モードや横波モードでパルスエコー音速測定を行う材料に適した2種類の探触子も必要です。一般的に、広帯域の縦波探触子(10 MHz)のM112またはV112や、垂直入射の横波探触子(5 MHz)のV156があります。これらの探触子は金属や焼成セラミックのサンプルに使用します。非常に厚いものや薄いもの、または減衰が激しいサンプルには、その他の探触子が必要になります。用途によっては、対になった探触子を試験体の両側に配置する透過法を使用することもあります。特定の探触子の推奨事項と機器のセットアップについてお困りの際は、お問い合わせください。 試験体は、所定の厚み部分を通過する音響伝搬時間のクリアなパルスエコー測定が可能な、あらゆる形状があります。理想的な試験体は、少なくとも12.5 mm(0.5インチ)の厚さがある滑らかな水平面で、使用する探触子の直径を上回る幅または直径を持つものです。エッジ効果は、測定されたパルス伝搬時間に影響を及ぼす可能性があるため、幅の狭い試験体を測定する際は注意が必要です。短いビーム路程を通過するパルス伝搬時間は変化が小さいため、非常に薄い試験体を使用する場合は分解能が制限されます。このため、試験体は5 mm(0.2インチ)以上の厚さがあることが推奨されます。どの場合でも、試験体の厚さを正確に認識する必要があります。 厚さ測定と探傷ソリューションを使用した弾性率計算手順適切な探触子と機器設定を使用して、試験体の縦波および横波の音速を測定します。横波の測定には、SWC-2などの特殊な高粘度接触媒質を使用する必要があります。39DL PLUS厚さ計や一振動子ソフトウェア付属45MG厚さ計は、入力された試験体の厚さを基に素材の音速をダイレクトに表示します。またEPOCHシリーズの探傷器は、音速校正手順により音速を測定できます。いずれの場合も、各機器のユーザーマニュアルに沿った手順で音速測定を行うことをお勧めします。縦波と横波探触子の両方で、所定の厚さ部分を往復通過する経過時間を単純に記録して計算します。 高精度の音速測定には、72DL PLUS超音波厚さ計(+または–10ピコ秒)をお勧めします。必要に応じて、音速を求めるために単位をcm/秒またはインチ/秒に変換します(時間は通常μ秒で測定し、cm/μ秒またはインチ/μ秒に106を掛けてcm/秒またはインチ/秒を出します)。求めた音速を次の式に当てはめることができます。 単位に関する注記:音速をcm/秒で、密度をg/cm3で表す場合、ヤング率はダイン/cm2の単位で表されます。インチ/秒およびlbs/in3などの英語圏諸国単位を、ポンド/平方インチ(PSI)で表すための係数として使用する場合、力の単位と質量の単位としての「ポンド」を区別してください。係数が単位面積あたりの力を表しているため、英語圏諸国単位で計算するときは、質量/力変換定数(1/重力加速度)を上記の式の解に掛けてPSI単位の係数を算出する必要があります。もしくは、最初の計算をメートル単位で行い、変換係数を使用します。1 PSI = 6.89 × 104ダイン/cm2を使用します。あるいは、インチ/秒で速度、g/cm3で密度を入力し、1.07×104の変換定数で割ってPSI単位の係数を導き出します。 剛性率を求めるには、横波音速の二乗に密度を掛けます。再度、cm/秒とg/cm3の単位を使用して、ダイン/cm2またはインチ/秒およびlbs/in3の英語圏諸国単位を導き出し、その結果に質量/力変換定数を掛けます。 参考文献弾性率の超音波測定の詳細情報については、以下の文献を参照してください。
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