用途
パイプ製造時における内壁減肉箇所の検出。
背景
壁の局所的な減肉は腐食以外の原因によっても起こります。例えば、板材を丸めて巻き上げる製造工程(パイプ製造工程の初期成形段階)でも壁の減肉が起こる可能性があります。成形ローラーが鋼板に加圧痕を残す可能性がり、また、成形ローラーに加えられる高い表面圧と高温のため、鋼板に剥離が生ずる可能性もあります。さらに、剥離した金属片がローラーから分離して鋼板の通る経路に落下すると、その金属片がローラーに固着する可能性があります。その結果、固着した金属片が、ローラーが巻き込む鋼板上に加圧痕を作り出します。ローラーが作り出すこのような痕跡も、腐食によって生ずる減肉と同じように見えます。
実は、このような問題を抱えた新規製造のパイプが使用されている例が数多くあります。ある程度の期間使用されてから腐食検査を実施すると、上に説明したような理由で発生した減肉も誤って腐食組織と見なされることがあります。このような誤った判断は、プロセス技術者が腐食の進行速度について誤った決定を下す原因となり、不適切なプロセス変更や不要な化学薬品の添加を招くことになります。しかし、製造時または設置時にシンプルな超音波厚さ測定を実施するだけで、このような問題の存在を明らかにすることができます。
機器
超音波厚さ計38DL PLUS または、波形表示オプション付きの超音波厚さ計45MG、および、二振動子型探触子D790(5MHz)。
例
下に示すのは、1018グレード炭素鋼を材料としてERWプロセスで製造した壁材(8 x 0.250インチ)の写真です。暗い色で見える痕跡は、パイプ成形工程で生じた凹み(減肉)を表しています。このケースでは、外径と内径表面のどちらにも腐食は見られません。
厚さ測定は、腐食調査と同じ方法で実施します。左は、問題の無い肉厚を厚さ計が測定している写真です。右側の薄い測定値の写真は、内側表面で減肉が発生していることを示しています。
検査を実施する場合、問題となる箇所が製造時にできたものであるのか、あるいは腐食組織であるのかを判別するために考慮すべき項目は次の通りです:
- ERWパイプか、シームレスパイプかの判別。
- 壁の減肉がパイプの軸方向に配向しているか、ランダムかを見分ける。
- パイプ系統の接合の多くの部分または全部がERWである場合は、それぞれの接合部の問題箇所がどのラインに沿っているかを決定する。このラインは、配管が走る方向に対してずれた方位を示すことがある。
- パイプの接続がシームレス方式であり、減肉箇所が存在していないか。
結論
パイプの製造上の不具合は、超音波厚さ計で検出することが可能です。パイプの検査員が、このアプリケーションノートで説明したような新規製造のパイプでも欠陥が発生する可能性を認識することは有用です。パイプの製造品質においてこのような潜在的な問題があると思われる場合は、検査員と加工業者の品質管理担当者とが情報を共有することが重要です。それにより、パイプの腐食検査において腐食速度の過大評価を防止することにも繋がります。