溶接部の品質管理と品質保証(QA/QC)は、製薬施設において重要です。 プロセス配管では、アクセスできない場所に数多くの溶接部や継ぎ手があり、困難な作業が伴うことがあります。 こうした溶接部の1か所でも欠陥があれば、腐食、漏れ、または汚染が発生しかねません。
医薬品生産ラインの汚染防止は、医薬品の製造管理および品質管理の基準(GMP)が定めている主な目的の1つです。 低品質または誤った元素の混入が消費者に届かないようにするため、GMPの準拠は製薬業界にとって必須条件です。 GMP要件には、詳細な文書によってすべて裏付けられたQC/QA検査と監査に支えられる、厳密な機器の保守点検とクリーニング手順の実施が含まれます。
工業用内視鏡検査:欠かせないGMPツール
ステンレス鋼プロセス配管の溶接部は、自動加工でも手動加工でも検査が難しい可能性があります。 溶接部の内部欠陥や母材上の欠陥の識別には、超音波探傷やX線探傷などの検査法を使用するのが一般的です。 しかし、溶接や熱処理加工後は、溶接部の内径(ID)や溶接部ルートを検査員が目視で調べる必要があります。その際、アクセスが制限されるため、工業用内視鏡検査は有望な非破壊ソリューションとなります。
硬性鏡やビデオスコープなどの工業用内視鏡検査(RVI)ツールは、すべての配管および溶接部が目的に沿い、溶接部コードと業界標準の準拠を確保するのに役立ちます。 以降の記事で、製薬工場でRVIを使用する最適なタイミングを習得するとともに、ステンレス鋼管溶接部の目視検査の効率を上げるビデオスコープの機能を見つけてください。
ビデオスコープをプロセス配管検査に組み込む3つの方法
1. 機器の初期設置、修理、または拡張の後
初期運用前、プラント拡張中、または修理中に、QA検査員はRVI機器を使用して、検証が必要なすべての溶接部分を検査しします。
- 内径(ID)表面仕上げ
- 溶接ルート部分の欠陥(ルートのアンダーカット、ルート溶け込み不良、溶け落ちなど)
- 溶接部付近の熱影響部(HAZ)(ASME BPE 2016に規定された色の相違など)
- 溶接されたパイプの形状不一致(溶接金属過多、溶接オーバーラップなど)
プロセス配管の溶接部検査におけるIPLEX™ビデオスコープの活用方法
複雑なプロセス配管網の溶接部を検査するために、適切なRVI機器を入手することが最初の課題です。 当社のビデオスコープには、以下のように役立つ機能があります。
- オリンパスのビデオスコープには、さまざまな直径(最小4 mm)と長さ(最長30メートル)の挿入管が用意されており、複雑な形状の溶接部ルートやID、広範なステンレス鋼管網を検査するために、直接近づいて見ることができます。
- パイプに記された番号は各溶接部の位置を示していますが、この番号を、記録された検査ビデオや画像に対応させることができます。 IPLEXビデオスコープシリーズ用のInHelp™検査支援ソフトウェアを使用すると、生産ライン上の溶接部位置によってファイルをソートできるので、データの追跡と検査ログの記録が容易になります。
- オプションのUV光源を浸透試験に組み合わせれば、白色光では検出不能の見えない表面の欠陥を識別できます。
ルートの溶け込み不良を示すステンレス鋼管内溶接部のビデオスコープ検査
- 220度の直視レンズ先端部など、広角光学アダプターを使用すると、複雑な形状の溶接部IDが見られるので、欠陥検出率(POD)を損なうことなく、検査効率と速度が向上します。
220度広角レンズ光学アダプター(左)および120度直視光学アダプター(右)を使用したビデオスコープによる溶接部検査
220度アダプターでは、溶接部の正面と背面どちらの状態も、完全に観察できます。
2. バッチ間のクリーニング後と製品間の切り替え後
プロセス配管内の溶接部と表面は、内部を通過する製品の流れを阻害しないことが重要です。 製品が詰まり出すと、後で通過する製品が台無しになったり汚染されたりする可能性があります。 残留物の蓄積が発生する主な区域は、パイプ内の溶接部、エルボー、および継ぎ手です。
保守点検担当者がバッチ間または製品切り替え時に機器をクリーニングした後、これらのアクセスできない困難な区域の二次汚染を防ぐため、RVIで残留物をチェックすることが推奨されています。 検査員はビデオスコープまたは硬性鏡を使用して、製品の流れと接触する領域にあるすべての溶接部の清潔さを確認できます。 米国の食品医薬品局(FDA)など、 地域の規制当局の多くは、このような検査を推奨しています。
残留物蓄積の検査が楽になる方法
溶接部、エルボー、継ぎ手の周辺にある残留物を検査する場合、ビデオスコープ・硬性鏡の二者が持つ機能で作業が楽になります。
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高速かつ徹底的な検査の場合、広角の光学アダプターを使用するとパイプ内部の完全なパノラマ画像が映し出されるので、ビデオスコープの画面で直接、薬剤の残留物を確認できます。
ビデオスコープの画面に映るパイプ内の残留物
- ステンレス鋼管などの高反射表面によるハレーションは、ビデオスコープまたは硬性鏡による検査を妨げる場合があります。
オペレーターは適切に観察するために、照明の明るさを手動で調整する必要があります。
IPLEXビデオスコープには、この問題を解決するテクノロジーが備わっています。
- PulsarPic™プロセッサーは照明システムと相互作用し、明るさが最適に自動調整されるので、クリアで鮮明な画像が得られます。
- WiDER™画像処理テクノロジーは幅広いダイナミックレンジに対応し、ハレーションを防ぐために明るさが低減した場合でも、暗い場所の可視性を保ちます。
- 複雑な配管網、狭い角、制限のあるスペースを通ってすばやくターゲットに近づけるように、反応性の高いスコープ先端湾曲機構TrueFeel™を、ジョイスティックまたはタッチスクリーンで正確に操作できます。
- GMPに基づく文書化要件に対応できるように、InHelpソフトウェアはユーザーフレンドリーな検査データ管理およびレポート作成機能を備えています。 記録を適切に保持するため、工場では各ターゲットの場所に番号を振り、ビデオスコープでの検査ごとに、ビデオおよび画像ファイルを取得する必要があります。 必要な検査画像をクリックすれば、カスタマイズしたレポートテンプレートを使用して、詳細なレポートを簡単に作成できます。
3. 定期検査:腐食と構造的完全性
製薬工場は腐食など構造的完全性の問題を免れません。 配管を通過するプロセス用水は定期的にモニタリングして、不純物の含有をチェックします。 こうした汚染の原因としては、孔食周辺に生息する微生物が、製造機器内の生物由来の残留物で増殖することが挙げられます。
プロセス配管の衛生上の健全性を確保するには、定期的な予防保守の一環として、すべての溶接部とアクセスできない場所をビデオスコープまたは硬性鏡で検査するのがよい対処法です。
紫外線が微生物を照らし出す
プロセス配管、容器、タンク内の微生物を検出する場合、UV光源オプションのある硬性鏡またはビデオスコープが便利です。
- 微生物のコロニーを白色光で検出するのは困難です。 IPLEXビデオスコープのUV照明モジュールでは、この検査を首尾よく実施できます。 UV光源とともにビデオスコープを使用すると、この有機物質が蛍光発光して見えます。
製薬工場におけるビデオスコープまたは硬性鏡検査のチェックリスト
ステンレス鋼管やその他のプロセス配管を検査する際のヒントを以下にまとめます。
- 挿入管の長さと直径を、用途に合わせて選択します。 各種の長さや直径の挿入管に対応するビデオスコープおよびボアスコープをご用意しています。
- 用途に最適な光学先端アダプターを選択します。 PODが高く、高速で効率的な検査を行うには、220度の「魚眼」レンズをお勧めします。
- 検査中および検査後に適切な衛生状態を維持します。ビデオスコープの挿入管は、使用前後にイソプロピルアルコール(IPA)で拭って汚れを取り除きます。
- 溶接部の完全性を検査する場合は、 使用前にホワイトバランスを正しく設定してください。 熱影響部の変色を検出して、合格基準を満たすかどうかを検証するためには、正確な色表現で観察することが重要です。
- 光源の明るさを調整して、光沢のあるステンレス鋼製のパイプ、タンク、および容器内のハレーションを低減します。 IPLEXビデオスコープの光源は、ユーザーの代わりに自動的に調整を行います。
- 側視アダプター付きの挿入管が回転することで、パイプ内の溶接部を隈なく検査できます。 大径パイプの場合は、挿入管をパイプの中心に配置するのを支える、センタリング装置を使用します。
- 検査内容をすべて記録し、文書化します。すべての溶接部検査の静止画像とビデオを記録して、品質管理の検証および監査の証拠として使用します。
次回のブログでは、InHelp検査支援ソフトウェアを使用して、コードに準拠した検査の文書化が楽になる方法について、詳しくご紹介します。 どうぞご期待ください。