あなたのレーザー共焦点顕微鏡測定は信頼できますか?9ポイント測定試験による自己検証
走査型レーザー共焦顕微鏡法(SLCM)は、研究施設および製造業の生産ラインの両方において一般的な検査ツールになっています。SLCMは405nmのレーザー光源を備えており、高解像度の水平(XY、~200 nm)情報と垂直(Z、~10 nm)情報を統合して、数秒で3次元(3D)画像を生成します。SLCMで測定できる範囲は、光学顕微鏡(OLM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)と重なります。さらに、必要なサンプル調製は最小限ながら、この顕微鏡は大きなサイズを含む様々な形状のサンプルに対応することができます。SLCMは消耗品を必要とせず、システムメンテナンスも最小限で済みます。 これらの利点の全てが、SLCMを有用な検査ツールにしています。 上記4つの技術の違いを下表に要約します。
走査型レーザー共焦点顕微鏡、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、および光学顕微鏡の比較
SLCM | SEM | AFM | OLM | |
---|---|---|---|---|
サンプル調整 | 不要 | 必要 | 必要 | 不要 |
3D画像 | 必要 | 不要 | 必要 | 不要 |
消耗品 | 不要 | 不要 | 必要 | 不要 |
XY解像度 | ~100 nm | 10 nm | 0.1 nm | ~300 nm |
Z解像度 | ~10 nm | 該当せず | 0.1 nm | 該当せず |
減圧 | 不要 | 必要 | 不要 | 不要 |
イメージング速度 | 速い | 速い | 遅い | 速い |
高解像度測定技術として、SLCMは視野全体にわたる高い精度と再現性を提供します。あなたのシステムの精度と再現性を確認する1つの方法は、定期的に、通常年1回、較正証明書を取得することです。一般に、証明書を取得するには、A2LA(米国試験所認定協会)公認のサービスエンジニアに、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)が認定するトレーサブルな校正規格に基づいた装置の検定を依頼する必要があります。しかし、あなたのシステムの状態を、自分で1週間または1か月ごとに検証できる簡単な方法があります。それが9ポイント測定試験です(図1)。
図1.信頼できる測定値を確保できるよう、視野内の9ポイントで特徴を測定します。青色のドットは個々の測定位置を示します。
方法はシンプルです。最初に、容易に認識できる特徴または既知のサンプルを選択します。図1に示すように、視野内の9つの異なる位置で特徴を測定します。データを記録し、全く同じ位置で再び測定を行います。システムの球面収差が視野全体で良好に補正されていれば、全てのデータが一定で、変化はわずかなはずです。当社のLEXTOLS5000走査型レーザー共焦点顕微鏡を使用した例を示します。ここでは表面に穴がある鋼板(図2a)を使用しましたが、可能であれば標準的な校正用標準サンプルを使用することを推奨します。穴の深さは最深部で測定しました(図2b)。次に、穴を顕微鏡の視野内の9つの異なる位置に移動し、各々の位置で同じ測定を行いました。深さの平均値は6.976 μmで、深さの最小値と最大値の差は0.267 μmでした。標準偏差は9.6%で、これはシステムが、正確で再現性のある測定値を提供していることを示しています。
(a) | (b) |
図2. (a)鋼サンプル上の穴、および(b)縁部の最も高いポイントと、穴の最も深いポイントとの間の測定値を示すグラフ。
適切な光学部品を使うことの重要性を示すために、OLS5000に付属する測定専用の50X LEXT対物レンズを、市販の非オリンパス製対物レンズと交換しました。測定値の分散は0.267 μmから0.911 μmに跳ね上がり、標準偏差は34.7%にまで上昇しました!同一の特徴の測定結果において、このような有意な変化量が生じていることは、市販の対物レンズで得られるデータが信頼できないことを示しています。こうした結果は多くの測定ラボにとって許容できるものではなく、ここで紹介したクイックテストがシステムの性能を確認するために重要であることを実証しています。
(a) | (b) |
図3: (a)オリンパスLEXTの専用対物レンズを使用した高さデータ(b)オリンパス製ではない汎用の市販対物レンズを使用した高さデータ
研究および製造のための測定アプリケーションにおいて、測定の正確さと再現性は重要です。使用しているシステムを1年に1回専門的に検証するのは賢明なことですが、これを1週間または1か月ごとに実施するのは実際的ではありません。幸い、本稿で例示した9ポイント測定技術は、システムが一貫した情報を提供していることを確認するための、迅速かつ容易な方法であることが実証されました。データの大きな変動を防ぐことができるよう、この技術をシステムの標準手順として自主的な検証に追加することは有効であると言えるでしょう。さらにこの試験は、レーザー共焦点顕微鏡に使用する対物レンズとして可能な限り最高品質のものを選択することの重要性も証明しています。