PMI検査は、製造、石油化学製品、および生活・家庭用品において重要な役割を担います。 正しい金属または合金を正しい場所に使用することが重要ですが、材料の組成に異常(重金属による汚染など)がないようにすることも重要です。 蛍光X線分析は、構成要素のPMI検査で正しい金属または合金を使用していることを確認するための、効果的で使いやすい方法です。
ハンドヘルド蛍光X線分析計は、持ち運びが簡単で試料の前処理が最低限で済み、結果がすぐに得られます。 蛍光X線分析の最も一般的な用途の1つである合金判定では、Vanta™蛍光X線分析計を使用すれば、多くの場合、わずか1、2秒で品種を判定できます。
材料の組成
ハンドヘルド蛍光X線分析計は、元素周期表にある元素の90%以上(マグネシウムより重いもの)を定量化できます。これは、商用合金に使用される元素の大部分をカバーします。 図1は、一般的な合金元素の代表的な1検出限界を示しています。この検出能力により、蛍光X線分析計が明確な品種判定を行える対象は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、クロムモリブデン合金、多くの配管やフランジの材料、真鍮(しんちゅう)、青銅やその他の銅合金、はんだ、チタン合金、工具鋼、それにニッケルやコバルトをベースにした多くのいわゆる「超合金」と呼ばれるものです。
図1: 一般的な合金元素の典型的な検出限界1
ハンドヘルド蛍光X線分析計では、マグネシウムより軽い元素を直接測定することはできません。 こうした合金元素には、リチウム、ベリリウム、炭素などがあります。 これらの元素は以下のようにさまざまな用途に使用されています。
- 航空宇宙産業における一部のアルミニウム合金に含まれるリチウム
- 一部の銅合金に含まれるベリリウム
- 多くの低合金鋼に含まれる炭素
それでも、こうした合金の品種の多くは、他の合金元素の組成に基づいて判定することができます。 ただし、これらの軽元素を定量化する必要がある場合は、他の分析方法が必要になります。
試料の条件
蛍光X線分析計の働きは次のように要約できます。(1) X線が照射される。 (2) X線が検出器に戻る。 (3) ‚“x‚ÈŒvŽZ‚É‚æ‚èデータが処理される。 (4) 品種判定(図2)。蛍光X線分析は表面を測定する技法です。 アルミニウムなどの軽量合金の場合、蛍光X線分析では試料表面の数百ミクロンまでしか測定できません。 鉄や銅などの主要金属の場合、測定されるのは試料表面の百ミクロン未満までです。金や鉛などの高密度材料に至っては、表面の数十ミクロンまでしか測定されません。 つまり材料の表面はバルク組成を正確に反映する、ということが重要な意味を持ちます。 塗料、シーラー、亜鉛めっきなどの表面汚染は、分析を大きく狂わせる可能性があります。 同様に、サンドブラストやショットブラストの残留物、研磨、さらには泥なども、PMI検査に支障をきたす場合があります。 重要なのは、蛍光X線分析を行う前に試料をきれいにすることです。
図2: 蛍光X線分析によるPMI検査プロセス
ハンドヘルド蛍光X線分析計では、低ワットのX線管を使用します。 X線の入出力が低ワットであるため、分析計を試料に近い位置で使用することが重要です。 理想的なのは、試料を装置の測定窓に直接接触させる方法です。 試料の形状が複雑な場合はこの方法は困難ですが、Vanta分析計は側面が狭くできているため、例えば90°でパイプに溶接されたフランジなどの斜めになっている試料にも装置を近づけることができます。
試料の表面温度
蛍光X線分析におけるX線の物理的特性は、試料の温度に差異があっても基本的には変わりません。また、VANTA蛍光X線分析計は環境条件が異なる場合でも信頼性の高い性能を発揮するよう設計されています。 熱ドリフトや性能の低下がない状態で作動するのは、使用環境温度が-10 °C~50 °Cの範囲内です。2
Vanta分析計が修正なしで試料を測定できる最高温度は約100 °Cです。この温度を超えると、装置の測定窓に使用されているポリプロピレンフィルムが損傷します。オリンパスでは、高温検査専用のフェイスプレートオプションを用意しています。このフェイスプレートには、最高315 °Cの試料を測定できるカプトンウィンドウが含まれます。
結論
蛍光X線分析はPMI検査を行うための強力な方法です。広範な分析能力があり使いやすいため、PMI検査を迅速に自信を持って行うことができます。これは生産損失を回避するだけではなく、誤った組成の材料を使用することで起こる傷害や人命にかかわる事故を防ぐという重要な役目を果たします。
[1] 検出限界は、検査時間、試料の種類、および干渉元素の組み合わせによって影響されます。これらの値は典型的なものですが、試料や検査条件によって異なる場合があります。そのため参考値として示しています。
[2] オプションのファン付きの場合。 オプションのファン取り付け時はIP54に準拠。 ファンなしで33°Cで連続運転できます。