鉛は地殻中に見つかる天然重金属です。鉛がガソリンや塗料などのさまざまな製品に広く抽出・使用された結果、土壌と空気のどちらも鉛の含有量が増加しました。
米国の規制で有鉛のガソリンと塗料が禁止されて暴露が減量した一方で、長期間にわたり環境内で分解されていません。その結果、過去に土壌に加えられた鉛は有害なまま残り、環境や健康をむしばみます。
鉛の暴露が及ぼす健康被害
鉛の暴露に安全なレベルはなく、過度な暴露は脳、神経系、腎臓の損傷を招く恐れがあります。鉛中毒は胎児や幼児への重大な健康上のリスクとなります。大きい子供や大人よりも、鉛を吸収および保持しやすいためです。影響としては、成長や発達の遅延、IQの低下、学習や行動上の問題があります。
土壌からの鉛の暴露は、交通量の多い都市部に住む子供たちのリスクがより高くなります。有鉛ガソリンを使用する乗用車や、有鉛塗料を使用した古い建物(米国で1970年代後半より前に立てられた多くの家)の周りに鉛が多く存在するためです。都市の鉛はハウスダストにも含まれ、子供たちへの主な暴露経路であると考えられます。
ハンドヘルドXRFを使用した土壌の鉛検査:調査研究
土壌中の鉛を検査する簡単な方法の1つが蛍光X線で、もっとよく知られる名はXRFです。ハンドヘルドXRF分析計は携帯型の装置で、その場で行う元素分析によって土壌の鉛やその他の重金属を即時に検査できます。現在、多くの調査研究がハンドヘルドXRFを頼りに土壌の鉛を検査しています。
1例が、ノースカロライナ州ダラムで塗料とガソリンによる都市土壌生成への影響を分析した、最近の研究です。簡単に言うと、都市土壌生成は長年にわたり土壌を変化させる自然および人工プロセスです。
調査プロジェクトは、都市全体で表土の鉛(Pb)の濃度を定量化することを目的としていました。この研究では、沿道と居住環境に注目し、交通量の多い通りと少ない通り、さまざまな年齢の人が住む家と近隣を対象にしました。もう一つの目的は、都市土壌生成が長期的に表土のPb濃度をどのように変化させているかを考察することでした。
図1:Simonsonが1959年に発表した土壌生成の一般的フレームワークの4要素に基づく、土壌の鉛(Pb)が時間の経過とともに移動し再分配される都市の土壌プロセスを表す図。
この研究のため、道路、住宅地、氾濫原から土壌サンプルが採取されました。サンプルは空気乾燥させてふるいにかけてから、マイラーフィルム付きのサンプルカップに入れました。ハンドヘルドXRF分析計(具体的にはVanta™ Mシリーズ分析計、50 kV X線管付き)を使用して土壌サンプルを検査し、元素組成を判定しました。
測定された元素には、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)のほか、鉛(Pb)などの微量金属が含まれます。合計133か所の土壌サンプルがXRF分析計で検査されました。
分析の結果、研究者たちは鉛レベルの上昇が住民の年齢と一致する相関を見出しました。つまり、古い家ほど周辺土壌に暴露されている鉛の量が多くなっていました。研究ではさらに、都市土壌プロセスは塗料やガソリンによる土壌の鉛汚染を薄めて分散させる傾向にあることが分かりました。この発見は、鉛の暴露を減らすための公衆衛生手法の指針になるかもしれません。
この研究は最近論文として公開されました。タイトル:「Urban-Soil Pedogenesis Drives Contrasting Legacies of Lead from Paint and Gasoline in City Soil」、著者:Anna M. Wade、Daniel D. Richter、Christopher B. Craft、Nancy Y. Bao、Paul R. Heine、Mary C. Osteen、Kevin G. Tan。
この研究の詳細は、こちらの論文をご覧ください。
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