工業用清浄度検査のサンプリング法シリーズの続きとなる今回は、液体の解析によく使用されるサンプリング方法である直接液体ろ過を取り上げます。簡単に言うと、直接液体ろ過は液体内に存在する粒子の検査に使用するサンプリング法です。
直接液体ろ過では、懸濁粒子を含んだ液体をメンブレンフィルターでろ過し、その表面に粒子を集めます。次にフィルターメンブレンを光学顕微鏡で撮像して、粒子解析を行います。清浄度解析のために液体サンプルを抽出する際に従うべきベストプラクティスなど、この液体サンプリング法の詳細について説明します。
少ない粒子、大きな効果:機械におけるきれいな液体の重要性
海運、エネルギー、オフショア、製薬などは、きれいな液体の利点が理解されている産業として挙げられます。
オイルを使用するフライス盤
機械におけるきれいな液体(特にオイル)の利点には以下があります。
- 保守点検の時間とコストの最小化
- 性能と生産性の最大化
- 部品と機械の寿命の長期化
- システム停止頻度の低減
- 修理と部品交換の低減
液体に汚染物質が少ないほどエネルギーの節約と機械寿命を延ばすことにつながるため、こうしたすべての利点はコストの節約になります。例えば、オイルがきれいであるほど、オイルの温度は低く、粘度は高く、性能は高くなります。保守点検時間の短縮と修理の少なさは、人件費とハードウェア費用の節約にもなります。
オイルコンタミネーションと解析に関するインタビューで説明されていたように、微粒子、水分、塩分にさらされたオイルは潤滑性が失われます。その結果、腐食、添加剤の劣化、硬化や沈殿物の形成が生じます。また、バルブなどの機械部品の詰まり、停止、摩耗が発生します。
こうした部品の修理には費用も時間もかかるため、清浄度解析を実施してオイルのコンタミネーションレベルを評価することが重要です。このためには、直接液体ろ過でオイルサンプルを採取し、顕微鏡ベースの工業用清浄度システムでサンプルフィルターのコンタミネーションを解析します。以降では、このサンプリング手順のベストプラクティスについて説明します。
システムから液体サンプルを抽出するためのベストプラクティス
液体の工業用清浄度検査を実施する場合、システムから液体サンプルを抽出するときに、清浄度、外部コンタミネーション、サンプリング箇所、機械の状態をすべて考慮する必要があります。
サンプル検査中の不要なコンタミネーションを防ぐため、すべてのステップで清浄度を意識してください。以下にベストプラクティスを示します。
- サンプル検査の実施時はヒュームフードや安全キャビネットを使用する
- サンプリング機器はヘプタンなどの溶剤でクリーニングする
- クリーニング中は糸くずの出ないリントフリークロスを着用する
- 検査後は常にサンプルをペトリスライドに入れて運搬・保管する
画像提供:Europafilter Norge
清浄度解析のオイルサンプリング手順例
以下の手順は、顕微鏡ベースの工業用清浄度解析のために行うオイルサンプリング例です。
オイルサンプルを抽出するときは、オイルサンプルが外部の不純物で汚染されないようにすることが重要です。ベストプラクティス例を挙げます。
- 真空を利用してオイルを抽出する
- オイルを汚染すると思われるポンプを通さない
- タンクの底や角はコンタミネーションが集中している場合があるので、タンクの中央から抽出する
清浄度を念頭に置いたオイルサンプリング手順例は以下のとおりです。
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ヘプタンやクリーンオイルなどの溶剤でじょうごを濡らし、リントフリークロスでふき取ります。次に、メッシュを溶剤で濡らしてリントフリークロスでふき取ります。
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じょうごを所定の位置に置いて、じょうごとメッシュの内部を洗浄します。これでオイルサンプル機器がクリーニングされ、使う準備が整いました。
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- じょうごを取り外し、メッシュスクリーンの上にフィルターメンブレンを置きます。オイル解析用の通常のフィルターメンブレンはニトロセルロース製で、細孔径は約0.8 µmです。これでシステムはフィルタリングの準備ができました。
- オイルサンプルをじょうごに注ぎます(予想される粒子コンタミネーションに応じて2 ml~100
ml)。フラスコ内を真空にしていき、液体をフィルターに引き込みます。
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- サンプルボトルの3分の1まで溶剤を入れます。ボトルを振ってからじょうごに注ぎます。
- サンプル水位がじょうごの細くなった先端まで下がったら、じょうごの内壁を洗浄します。
- すべてのサンプルがサンプルフィルターを通ったら、じょうごを取り外すまでしばらくそのままにします。
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サンプルフィルターを取り外し、フードの下または乾燥炉内で乾燥させます。サンプルフィルターをペトリ皿に置いて、フィルターホルダーにメンブレンを載せます。
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- サンプルが不必要に汚染されたり、機器に埃が付着したりするのを防ぐため、顕微鏡システムをフードの下に置くことを検討してください。この例では、顕微鏡をラボのクリーンルーム内に置き、ワークステーションとジョイスティックのセットアップをラボの外部に置いています。画像に不要な影が入らないように、顕微鏡を均一な照明下に置いてください。
液体清浄度検査の専用アクセサリー
OLYMPUS CIX100コンタミネーション解析システムには、直接液体ろ過を実施するための専用サンプルホルダーが用意されています。これらのサンプルホルダーは、用途に合わせて、直径が25 mm、47 mm、55 mm、背景が白と黒の種類があります。
液体のフィルタリングに溶剤を使用する場合は、溶剤に対して概ね不活性である黒色の背景のサンプルホルダーを使用することをお勧めします。解析を簡易化するため、CIX100システムのソフトウェアでオペレーターがサンプルタイプを選択すると、該当の設定が自動的に読み込まれます。
サンプルホルダーを載せて検査を開始するのがどれだけ簡単かは、下のビデオで見ることができます。
工業用清浄度検査の詳細
液体やオイルの工業用清浄度検査に使用できる、当社の顕微鏡システムとサンプルホルダーの詳細に関しては、当社にお問い合わせください。このブログシリーズでは、別のタイプのサンプリング法についても取り上げます。テープリフトサンプリングについての次回のブログをお楽しみに。