オイルコンタミネーションは、ごみ、金属粒子、その他の破片がオイルに蓄積すると発生します。時間がたつにつれ、検出されなかった汚染物質によって部品が損傷し、機械の不具合につながることさえあります。
この目に見えない問題を解決に導くため、製造、オフショア、海運、重車両、エネルギーの各産業では、オイルクリーニングシステムが使用されています。クリーニングシステムでオイルから汚染物質を取り除くことによって、オイル交換の削減または廃止、機械寿命の延長、運転維持費の削減がかないます。
オイルクリーニングの重要性とオイル清浄度の解析方法について、EvidentのアプリケーションスペシャリストであるPeter Büscher博士に話を伺いました。
Q:汚れたオイルによってどのような問題が発生しますか?
Peter:微粒子、水分、塩分があると、オイルの潤滑性が失われ、腐食、添加剤の劣化、樹脂や沈殿物の形成が生じます。このことからバルブなどの機械部品の詰まり、停止、摩耗が発生し、費用も時間もかかる修繕・保守作業へとつながります。かつて、汚染や酸化が発生したオイルは単純に廃棄されていました。これは無駄なやり方でした。クリーニング方法さえ分かれば、オイルはいつまでも長持ちする可能性があるからです。
Q:オイルに対する汚染物質の影響について教えてください。
Peter:オイルには汚染物質を原因とする「目に見えない問題」があります。定期的に交換しないと機械部品は不具合が続きます。私たちはこのプロセスに慣れきっていて、別の方法があるかもしれないとは考えません。しかし、オイルを100%クリーンに保てれば、理論上は劣化せず、交換の必要がなくなります。機械部品はいつまでも使えるかもしれません。不具合のリスクと生産のダウンタイムは大幅に低減します。
ほとんどの機械に組み込まれているオイルフィルターは、機械部品に対する直接の損傷になる大きな粒子から守ります。オイルに含まれる大きく危険な粒子はわずかしかありません。大半は極めて小さい粒子です。ただし調査によれば、こうした微粒子は他の汚染物質と結合し、オイルの酸化を加速させます。これによってオイルの潤滑性が失われ、樹脂や沈殿物の形成につながります。これらが粘性のある表面となり、徐々にバルブや可動部品の詰まりや停止を引き起こします。
新しい機械は古い機械に比べて非常に厳密な公差で製造されているため、繊細になっています。現代の機械は、故障の影響を受けないように、よりクリーンなオイルやシステムの定期的なクリーニングを必要とします。
オイルクリーニングシステムの仕組みを教えてください。
Peter:オイルクリーニングシステムは人間の腎臓に似て、潤滑油がシステムを通過するたびに徐々にクリーニングし、完全にきれいになるまで続きます。例えば、オイルから水分や固形の汚染物質を効果的に除去するシステムもあります。
オイルクリーニングシステム。画像提供:Europafilter Norge。 |
オイルは超清浄状態になると、酸化が止まります。酸化がなければ、オイルは必要なあらゆる品質を維持できるため、理論上は交換する必要がありません。
Q:オイルクリーニングシステムを生産工程に組み込む利点は何ですか?
Peter:オイル交換しなくてすむので費用の節約になるのはもちろんですが、機械の稼働時間が増えることによる節約が大きいです。Electric Power Research Instituteの研究によれば、軸受、ジャーナル、潤滑油システムに関連する強制停止時間の半分は、汚染されたオイルが原因でした。
完全にクリーンなオイルを使用すると、バルブ、シリンダー、軸受、その他の影響を受ける機械部品の摩耗も低減します。長期的に見て、維持費の大きな節約になる可能性があります。
Q:環境に対するオイルの影響は、気候変動対策に関する対話の重要なテーマです。オイルのクリーニングによって廃棄はどのように削減されますか?
Peter:使用済みオイルは有毒です。新しいオイルよりも毒性が強く、食物連鎖内の最も小さな生物に突然変異の作用を及ぼすおそれがあります。廃棄オイルの量が増えるにつれて、費用と環境への悪影響の両方が大きくなります。
有毒な廃棄オイルの量は、クリーンなオイルを使い続けた場合と同程度まで削減できます。オイルクリーニングシステムを使用することで、各業界は費用を削減すると同時に環境対策も実施できます。
Q:オイルに含まれる微粒子、水分、塩分などの汚染物質を除去することの重要性について先ほど教えていただきました。これらの汚染物質を詳細に解析することは重要ですか?
Peter:はい、定期的にオイル解析を行えば長期的なオイル状態のモニタリングが可能で、システムの状態の明確な傾向解析につながります。このデータを解析することで、問題の特定、機械寿命の延長、運転維持費の削減、予知保全の促進、生産性の維持がかないます。
Q:詳細なオイル解析が必要なのはなぜですか?オイルの汚染物質はシステムにとって危険ですか?
Peter:はい、汚染物質には甚大な影響力があります。オイルはシステム内でたくさんの役割を果たします。歯車装置や油圧装置を考えてみてください。オイルの主な目的には、部品の潤滑と分離(ギアボックスやスライディング機械部品など)、動力転送(油圧やギアボックスなど)があります。
オイルには清浄の役割もあります。汚染物質を取り込んでフィルターへ運んでからオイル備蓄槽に集めて、再利用します。オイルには冷却液や熱伝導流体、水や湿気の吸収の作用もあります。
さらに、システム内の腐食、酸化、発泡を防ぎます。オイルのさまざまな役割を理解すれば、オイルクリーニングがシステム全体にとって重要であることが明確にわかります。オイルが汚染されている場合、最終的には電力、熱、ノイズが大きくなるため稼働量が高くなるほか、機械部品の摩耗と保守に伴う停止のため維持費が高くなります。
Q:オイル解析からどのようにして信頼性の高いデータを取得しますか?
Peter:オイル解析の実施には、いくらかの調製と検査手順が含まれます。サンプル調製と解析手順の最中は、絶えず「清浄性を考える」必要があります。すべての手順で清浄性、正確性、最大限の注意を意識して初めて、信頼性の高いデータが手に入るのです。
サンプル調製から粒子レビューまでのオイル解析工程例。画像提供:Europafilter Norge。
Q:市場にはどのようなオイル解析システムがありますか?
Peter:オイル中の微粒子検査に用いられる従来の方法は、レーザーベースの自動パーティクルカウンター(APC)です。ただし、APCの測定値では、粒子の形状(繊維など)や反射(金属など)非反射の区別に関する詳細は得られません。また、レーザーベースのパーティクルカウンターでは、透明の粒子を見逃したり、液中の泡をカウントしたりすることがよくあります。
オイルサンプル中の微粒子を包括的に観察するため、顕微鏡ベースの粒子検査システムにはAPCより優れたさまざまな機能があります。清浄度の工業規格では、粒子の数、粒子サイズ分布、粒子特性など、コンタミネーションの性質について詳細な情報が要求されるため、この検査方法は重要です。
OLYMPUS CIX100コンタミネーション解析システムはオイル解析用の顕微鏡ベースのシステムです
Q:インラインオイル検査が増加傾向にあります。これは顕微鏡ベース解析にどのような影響がありますか?
Peter:オイル解析の現在の傾向の1つは、インラインオイル品質検査です。これにはメリットもデメリットもあります。インラインオイル品質モニタリングでは、長期的なオイル品質値の傾向がすぐに得られ、クラウドベースの表示で結果を簡単に共有できます。一方で、特にISO値が低い不正確なデータや汚れたオイルを使用した場合、結果はそれほど正確ではありません。さらに、ときどきラボ解析で結果を検証する必要があります。OLYMPUS CIX100工業用清浄度システムのような顕微鏡ベースのシステムでは、傾向分析のためにクラウドにコピー可能な結果が得られます。
オイル品質値の傾向解析。画像提供:Europafilter Norge。
Q:OLYMPUS CIX100システムは工業用清浄度検査専用です。このシステムがオイル解析に最適なのはなぜですか?
Peter:OLYMPUS CIX100システムには、固定のシステム設定があるので、ユーザーは最小限の調整だけをすればよいのです。ハードウェアとソフトウェアがシームレスに統合されていて、高いスループットと信頼性の高い正確なデータを手にすることができます。
もう1つの重要なメリットは最大限の自動化で、ユーザーエラーの低減とスループットの向上に役立ちます。全自動システムによってイメージング条件が再現可能になるため、画質の向上、優れた繰り返し性、再現可能な位置決め、統合された校正が実現します。段階的なソフトウェアガイダンスのおかげで、検査や処理にかかる時間が短縮され、処理の誤りが減少し、ユーザー操作が最小限になります。
効果的な検査システムでは、サンプルをリアルタイムで解析する必要もあります。OLYMPUS CIX100システムの場合、新たな偏光観察法により、2.5 µm~42 mm範囲の反射粒子と非反射粒子の両方をライブ解析できます。この独特なオールインワン式スキャンソリューションを使用すれば、2つの別々の画像を必要とする検査システムに比べて2倍の速さで粒子スキャンを完了できます。カウントおよびサイズ別に分類された粒子がライブ表示されるので、再処理に関する判断がすぐにできます。これによって検査の問題にできる限り早く対処でき、貴重な時間の節約になります。
OLYMPUS CIX100システムでは、再現性のある結果とガイド付きの粒子レビューが提供されるほか、検査データを修正するための、高度で使いやすいツールが用意されています。検出されたすべての汚染のサムネイル画像は、簡易的な粒子レビューと修正のために、寸法測定値にリンクされています。関連するすべての検査データが、国際規格に準拠して明確に表示されるので、最大限の時間の節約と柔軟性が得られます。
OLYMPUS CIX100工業用清浄度システムのユーザーインタフェース画像提供:Europafilter Norge。
そのほかの利点としては、直感的なソフトウェアインターフェースと分解能が挙げられます。顕微鏡についてISO 4406で要求される15 µm~5 µmの粒子を簡単に見ることができます。特筆すべき、正確なカウント機能とライブ解析機能があります。推定ではなく、サンプル上のすべてのフレームがカウントされます。例として以下の画像をご覧ください。
推定の例
サンプルからの推定は、正確でない粒子カウントになる可能性があります。例えば、サンプル上の3フレームのみをスキャンして、フレーム内の汚染物質をカウントするとします。この結果にサンプルの面積を乗じます。粒子はサンプル上を覆っていないため、この方法では誤った結果になります。粒子カウントは多すぎるか少なすぎる結果になる可能性があります。
OLYMPUS CIX100システムを使用すると、詳細な粒子画像を取得することもできます。1度のスキャンで反射・非反射粒子が取得されるので高速に処理できます。最後に、このシステムには統合データベースと編集可能なレポートが内蔵されています。経験の浅いオペレーターでも、企業や業界の規格に準拠するレポートをすばやく作成できます。時間を節約して労力を軽減しながら、結果と問題に迅速に対処できます。
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