3回にわたるECNDT 2018まとめシリーズの第2回となる今回は、ECNDTで当社のNDT担当者が行ったプレゼンテーションについてです。 ではプレゼンテーションを見てみましょう。
溶接部検査におけるフェーズドアレイスキャンプラン作成とモデリング
プレゼンター: Thierry Couturier
要旨
溶接部検査において、フェーズドアレイ超音波テクノロジーは、検出能力、診断のしやすさ、および柔軟性に優れています。 このテクノロジーは手動技法として使用することも、放射線検査の代わりに自動システム内で使用することもできます。 フェーズドアレイテクノロジーの使用を規定する各種規格が公開されており、結果として幅広いテクノロジーが採用されました。 すべての規格で、ユーザーがスキャンプランを作成し、関連パラメーターについて記述することが要求されていますが、どの規格にもスキャンプランの作成方法についての説明はありません。
このプレゼンでは、例に基づくスキャンプランの作成方法を提案します。 さまざまな規格が示されていますが(EN13588、API 1104、ASME CC2235)、例でまず考慮するのは、溶接部で他の変数を検討する前に検出する必要がある以下を含む典型的な指示です。
このプレゼンの技術内容は、レベル2およびレベル3の専門家が、フェーズドアレイテクノロジーの仕組みと、優れたスキャンプランを作成するために必須の変数を組み合わせる方法についてよりよく理解するのに役立ちます。 | 図1: フェーズドアレイテクノロジーを使用した溶接部検査のスキャンプラン例 |
稼働中の腐食マッピング—化学産業の課題
プレゼンター: Florin Turcu、Timon Jedamski(Evonik Technology and Infrastructure)、Dirk Treppmann(Evonik Technology and Infrastructure)
要旨
一般的な化学プラントは、減肉や腐食に関する資産状態のモニタリングの難しさの代表例です。 高い処理温度、相分離、流動力学、金属組織特性のばらつきなど、化学プラントで見られる条件は、腐食の進行と動態を予測不能にしています。
通常、保守点検は限られた時間内に定期的に行われ、健全性の評価と修復の両方を行います。 保守点検のために通常の業務を中断すれば、プラントオペレーターに膨大な費用がかかる一方で、腐食プロセスの予測ができないことが減肉による圧力容器の内部崩壊や環境への製品流出などが起こる可能性があります。
このようなケースでは稼働中の検査によって、事故を回避したり、検査のためのダウンタイムを最短にしたりすることができます。 稼働中の検査に対する業界の要望には、個々の孔食の高い検出能力(POD)、深刻な減肉領域を検出するための高い感度と表面近傍分解能のほか、高温検査能力があります。 高い感度や表面近傍分解能などの要望は、通常、厚さ計によるスポット試験で解決でき、高いPODは超音波フェーズドアレイテクノロジーを使用して実現できます。
このプレゼンでは、一般的な腐食マッピングの課題について説明するとともに、フェーズドアレイを使用した高温検査時に発生する問題を取り上げ、最適なプローブとウエッジ、カップリング、および検査技法について述べます。
最新の超音波フェーズドアレイテクノロジーによる複合材料風力タービンブレードの検査の改善
プレゼンター: André Lamarre
要旨
稼働中の風力タービンブレードは高い応力に晒されています。 したがって、ブレードの完全性を確保するため、製造時にブレードの構造ビームとシェルの間の接合が確認されている必要があります。 また、ブレードは層間剥離や凹凸のような欠陥をなくす必要があります。 ファイバーグラスや炭素強化プラスチック(CRP)など、風力ブレードに使われている材料は特有の課題を超音波検査に突きつけており、業界ではシンプルかつ信頼性の高いソリューションが追究されてきています。 オリンパスでは、ブレードのさまざまな領域にある欠陥を容易に検出し、計測するツールを各種用意しています。 このようなツールには、低周波リニアフェーズドアレイプローブと、プローブホルダーが付属したすぐに使用可能な超音波フェーズドアレイ装置や、便利な使いやすいパッケージにまとめられたソフトウェアがあります。 フェーズドアレイの特長としては、検査の高速化、高解像度、および検査領域全体を面で検査できることが挙げられます。 このプレゼンでは、最新の超音波フェーズドアレイテクノロジーによって、風力タービンブレード複合材料の完全性が製造時にどのように高められているかについて説明します。
複雑な形状の検査のためのコヒーレントアダプティブフォーカシングテクノロジー
プレゼンター: Etienne Grondin
要旨
過去数年間で航空業界は通常を上回る成長を見せていますが、その一部の理由としては、原油価格の低下、主要な航空会社による何百万ドルものコスト削減が挙げられます。 この成長の結果、新しい航空機の生産率が増加し、新たな航空機プログラムが立ち上げられています。 そのため、航空部品製造メーカーは、生産率の増加、製造する部品に求められる高い欠陥検出能力(POD)、熟練作業員の欠如、複雑さを増す部品の形状といった新たな課題に直面しています。 このような状況の中、進化を遂げた超音波フェーズドアレイ(PA)装置によって、先進のデータ収集が可能になりました。 こうしたデータ収集方法を採用することで、メーカーは直面している検査の課題に対処しやすくなっています。 また電子部品の進化によって、アダプティブフォーカシングなどの先進のデータ収集方策を実施できるようになりました。 アダプティブフォーカシングは、さまざまな曲率半径や開口部角度、およびねじれた構成部品の検査を容易にするほか、革新的な信号処理アルゴリズムを使用することによってプローブの位置のずれを補正します。 このプレゼンでは、NDTインテグレーターと複合材料メーカーがシステム性能、生産高、品質管理に関して直面している課題への対処を目的とし、Adaptive Focusing Technologyの概要をご紹介します。
関連コンテンツ
ビデオ: コンパウンドS-スキャンによるフェーズドアレイスキャン設定の進歩(英語)