ASM Internationalは、科学、エンジニアリング、および技術的知識をメンバーと材質科学界に提供する非営利の専門的な協会です。 教育・実験ラボでは、製造における品質保証を向上する可能性がある革新的な検査ソリューションを定期的に扱っています。
取り組んでいる新しい応用の1つがレーザー式粉末床溶融結合(L-PBF)であり、レーザーを使用して粉末材料を溶接し、3Dオブジェクトを形成する付加製造プロセスです。 3Dプリントの金属部品版といえます。 ASM Internationalが研究している課題の1つは、3Dプリント部品の品質を評価する方法です。
レーザー式粉末床溶融結合の仕組み
このプロセスは台上の金属粉末床から始まります。 非常に細いレーザーが選択的に粉末材料を熱すると、材料が溶融します。 何千(部品のサイズによってはそれ以上)もの小さな溶接部を複数の層に作り上げ、不要な粉末材料を除去することで、効果的に3D金属オブジェクトを作ることができます。
プロセス全体はコンピューターで制御しますが、作成する各部分を正しく設定するために約200個のパラメーターが必要です。 これらを正しく設定しないと、製造プロセス中に問題が生じ、部品の品質が低下します。 例えば、システムを正しく設定しないと、ボイドやポロシティが発生する可能性があります。 これらによって完成部品の強度が弱まり、早い段階で破損することになります。
L-PBFで製造した部品の品質評価に利用できる技術はいくつかあります。 最も一般的なものの1つはコンピューター断層撮影(CT)です。 CTでは、X線を使用して部品の一連の2D断面スライスをキャプチャします。 スライスを3Dレンダリングに再構築することで、ユーザーは部品内外の特徴を見ることができます。 この方法は効果的ではありますが、これだけに頼るのでは時間がかかってしまいす。 付加製造ではスピードと効率が重要です。
共焦点レーザー走査型顕微鏡を使用した実験
ASMのラボには、オリンパスLEXT™ OLS5000共焦点レーザー走査型顕微鏡があります。 OLS5000顕微鏡は、サブミクロンレベルでサンプルの形状や表面の粗さを測定する目的で、多くの検査に活用されています。 特長としては、スピード、使いやすさ、長い作動距離、精密なイメージングなどがあります。
ASM Internationalの上級冶金技術者兼ラボマネージャーを務めるJohn Peppler氏は、OLS5000顕微鏡を使用してL-PBFプロセスを高速化しました。 具体的には、OLS5000顕微鏡で溶接部形状を観察し、CTスキャンの画像と比較しました。
プリント部品の欠陥評価
プリント部品の最上層には、積み重なった溶接部が現れます。 溶接部の形状と、溶接部間のスペースには、潜在的な欠陥の検出や評価の対象箇所が数多くあります。こうした形状の解析はOLS5000顕微鏡の強みです。
CTスキャンを使用し、部品全体の評価を設定し完了するまで約3時間かかります。 OLS5000顕微鏡では、3 mm × 3 mm範囲の表面粗さを確かめるのにかかる時間は、約1時間です。 さらに、Peppler氏はOLS5000顕微鏡を使用して、部品の単純な線形断面測定値をキャプチャしました。それぞれのスキャンにかかった時間は、数分のみです。
長作動距離50X対物レンズを使用してキャプチャされた3 mm × 3 mmのカラースキャン画像 | 左の画像と同じ領域の高さマップ |
OLS5000のデータでは、部品の完全な内部組成は示されませんが、部品表面にある山部分と谷部分の評価に有効です。 この顕微鏡を使用すると、ユーザーは部品表面より下にある部分の深さを測定することで「谷」部分を定義し、それらの測定値を表示できます。 レーザー顕微鏡によるマッピングを調べると部品の品質向上に役立ち、L-BPFシステムを確実に正しく作動できます。 例えば最上層の溶接部間に、あってはならない大きなボイドが見られる場合、部品内にも同様の間隙があってもおかしくないと考えられるため、部品の完全性をCTスキャンで検証する必要があります。
L-PBFシステムの微調整
OLS5000顕微鏡が高速で実行できる線形の粗度測定機能は、システムの設定時に正しく調整する役に立ちます。 各L-PBF機器には、最良の部品を作るため正確に設定すべき一連のパラメーターがあります。 設定には試行錯誤が伴うため、プロセスの高速化に寄与する迅速な検査ソリューションは重要です。
測定が必要な重要な要素は、部品に存在するすべての谷部の数、位置、および深さです。 顕微鏡の高解像度と非接触レーザー式測定方法により、溶接部間にある狭い谷部であっても深さが正確に測定されます。 Peppler氏は、線形スキャンマップを作成することで、メーカーによるLBPF製造マシンの微調整に役立つツールを作成し、形状のみならず内部の健全性にも寄与できることを望んでいます。 OLS5000顕微鏡はCTスキャンにとって代わることはできませんが、設定と品質保証のプロセスを効率化することから、プロセスの重要な要素になることができます。
結論
レーザー式粉末床溶融結合や類似の付加製造法は、人気が急上昇しています。 鍛造やフライス加工を行わずに、複雑な形状の3D金属部品をプリントする能力は、多くのメーカーにとって魅力的です。 しかし、最先端の製造法が開発されるにつれて、先進の検査技法によるサポートが必要になっています。 オリンパスとASM Internationalは協力体制を組むことで、新たな課題に対するソリューション開発に力を合わせている熟練の教育学者や研究者と、先進機器とを結び付けることを目指しています。
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