斑岩銅鉱床は、銅など価値ある金属や鉱物の重要な資源です。 鉱床は埋蔵量が多く、低グレードで埋蔵深度が浅いことから、大規模な機械露天掘り法を用いるのが一般的です。
斑岩銅鉱床を効率的に発見する方法として、ポータブルX線分析があります。 このブログでは、エンジニアが価値のある資源を採掘し、隠れた銅鉱石を取り出すために必要な手掛かりを、ポータブルX線分析ツールで入手する方法について掘り下げます。
斑岩銅鉱床とは
斑岩銅鉱床は熱水鉱床の一種です。 斑岩銅鉱床には、以下の特徴があります。
- 鉱化は中性から酸性の斑岩体と時間的および空間的に関連。
- 形成は本質的に火山貫入活動にやや関連。
- 一定の変化および鉱化帯が特徴的。
- 鉱石は散在する鉱脈に埋蔵。
斑岩銅鉱石形成と同時代および後の時代の産物であることから、粘土鉱物は銅鉱床の発見、探鉱、採掘において重要な手掛かりになります。
粘土鉱物を検査するためのポータブルX線分析方法
現場のエンジニアは、粘土鉱物からリアルタイムの地質情報を得るために、さまざまなポータブルX線分析ツールを使用できます。 例えば、ハンドヘルド蛍光X線分析計(XRF)では化学元素を特定でき、ポータブルX線回折装置(XRD)では鉱物学的情報を得ることができます。 現場のデータは、地質学者がその場で迅速かつ正確に意思決定する助けになります。 次の例について考察します。
例:斑岩銅鉱床の粘土鉱物の分析
オリンパスは最近、採掘企業のエンジニアとともに、ミャンマーの斑岩銅鉱床から採取した粘土鉱物の分析を行いました。 エンジニアたちは鉱床から3種類の鉱物試料を採取し、それぞれ高粘土、中粘土、低粘土と名前を付けました(図1)。
図1:斑岩銅鉱床から採取した3種類の粘土試料。
粘土鉱物を分析用に準備するため、エンジニアたちは試料を2 mm以下に砕き、それぞれ100 gずつに減らしました(図2)。
図2:砕いた後の粘土試料。
次に、砕いた粘土試料を、オリンパスのハンドヘルドXRF分析計とポータブルXRD装置で分析して、化学元素の特定と鉱物学的情報の取得をそれぞれ行いました。
ハンドヘルドXRFによる粘土鉱物の検査
XRF検査は、銀(Ag)のターゲット材を用いたX線管が装備された、Vanta™ Cシリーズ分析計(VCAモデル)を使用して実施されました。 過酷な現場環境で作動するように設計された堅牢な分析計は、IP55に準拠し、米国防総省規格(MIL-STD-810G)が要求する落下試験に合格しています。 内蔵のシリコンドリフトディテクター(SDD)とオリンパス独自のAxon Technology™が結びついて、超高速検出と低い検出限界(LOD)を実現します。
図3:2人のエンジニアが現場でVantaハンドヘルドXRF分析計を使用しています。
Vanta分析計を使用するもう一つの利点は、試料に特別な処理をせずすぐに分析できることです。 実際、試料の元素組成に関する定性的および定量的情報は、20秒以内に取得できます。
これに対して、現場のラボで同様の分析結果を得るには、数時間から数日かかるのが普通です。 Vanta分析計を使用すれば、ラボレベルの正確な分析データをすぐに手に入れることができます。
試料 | Al | Si | P | S | Cl | Ca | Fe | Cu | Pb |
% | % | ppm | % | ppm | ppm | % | ppm | ppm | |
低粘土 | 1.19 | 3.66 | 311 | 3.72 | 1087 | 3378 | 3.70 | 3.70 | 210 |
中粘土 | 0.83 | 3.94 | 341 | 0.90 | 2921 | 3771 | 2.34 | 1332 | 102 |
高粘土 | 0.98 | 3.95 | 422 | 0.90 | 4324 | 4062 | 1.42 | 821 | 48 |
表1:VantaハンドヘルドXRF分析計によって生成された元素分析データ。 表は、試料の含有元素と各元素の量を示しています。 元素には、アルミニウム(AI)、シリコン(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、銅(Cu)、鉛(Pb)が含まれます。
ポータブルXRD分析による粘土鉱物の検査
XRD検査は、コバルト(Co)のターゲット材を用いたX線管が装備された、TERRA™ IIポータブルXRD装置を使用して実施されました。 この回折装置のXRD検査機能は、オリンパスと米航空宇宙局(NASA)双方の独自技術を組み合わせています。
TERRA II回折装置は、ユニークな試料充填システムを特徴としています。 必要な試料は100メッシュ径(<150 μm)のふるいで粉末状にした15 mgだけであり、構造(鉱物学的/結晶学的)情報とおおよその元素(科学的)情報の両方を10分未満で取得できます。
XPowderソフトウェアがインストールされているTERRA II回折装置では、データの収集と処理をすばやく簡単に行えます。 Vanta分析計とTERRA II回折装置のどちらも、大量の試料や特別な処理を必要としません。 発破孔の試料も検査可能です。
試料ID | 石英 | カオリナイト | パイロフィライト | イライト | ミョウバン石 | 黄鉄鉱 | 合計 |
低粘土 | 62.9 | - | - | - | 30.3 | 6.8 | 100 |
中粘土 | 49.6 | 8.3 | 9.7 | 18.8 | 10.3 | 3.2 | 100 |
高粘土 | 45.5 | 18.7 | - | 29.8 | 6.0 | - | 100 |
表2:TERRA II回折装置によって生成されたXRD分析データ。 表は、粘土試料の含有鉱物と各鉱物の量を示しています。
図5:TERRA IIポータブルXRD装置によって取得された回折パターンの比較
オリンパスのハンドヘルドXRF分析計とXRD装置を使用して、斑岩銅鉱床から採取した3種類の試料(低粘土、中粘土、高粘土)を分析した結果、次のことがわかりました。
- 3種類の試料に含まれる粘土鉱物(主にイライトとモンモリロナイト)の量は、低粘土から高粘土になるにつれ増加
- 石英、ミョウバン石、黄鉄鉱の量は、低粘土から高粘土に向かって減少
このデータは、主に現場で取得された鉱物学的特性と一致しました。
特殊な変化により形成されたパイロフィライトの発見は、斑岩銅鉱石の探鉱および採掘にとっても重要です。 XRF分析計による元素データ(Ca、Feなど)と XRD装置による鉱物組成データは相互に裏付け合い、この試料バッチに対する正確な分析結果を確実なものにしています。
携帯型のXRFおよびXRD装置を地球科学分野で使用可能な方法の一例です。 地球化学、鉱物学、および鉱業などの用途については、当社カタログOnline Geology Resources for Portable XRF and XRDをご覧ください。