米国オレゴン州ポートランドにあるRuckus Compositesは、自転車用カーボンファイバーの検査と修理を行う専門店です。 2008年の創立以来、Ruckusは13,000台を上回る自転車を検査し、修理台数は6,000台を超えます。 また、プロのレースチームや世界各国の自転車店と提携しています。
店のオーナーであるShawn Small氏は、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の機械工学学位を取得し、 炭素についての研究と業務を10年あまり行ってきました。
約4年前、Shawn氏はハイテクカーボンファイバーの検査、調査、品質管理用にオリンパス超音波厚さ計45MGを購入しました。 彼の業務について話を伺いました。
超音波厚さ計によるハイテク自転車の検査
Ruckus Compositesは、自転車テクノロジーに高い関心を持ち、ハイブリッド自転車科学、エンジニアリング、意匠、およびカーボンファイバー材料の研究ラボとしてサービスを提供しています。
業務は、超音波スキャンと損傷マッピングに45MG厚さ計を使用することから始まります。 非破壊検査機器は、内部の層間剝離の検出に使用します。自転車のフレームを切断しなくても、複合材料層の内部構造を「見る」ことができます。
45MG厚さ計を使用して、カーボンファイバーフレームの損傷エリアをマッピング
カーボンファイバー製の自転車は複雑で、さまざまな品質のものがあります。 Ruckusでは、フレームの修理に航空宇宙グレードのカーボンファイバーを使用しています。 3Dプリンターを使用して独自のモールドを作り、チューブの修理用に織布または一方向のカーボンファイバー織物を付加的に製造しています(ドロップアウト、ボトムブラケットシェル、シートステイなど)。
独自の材料を使用することで、Ruckusでは戦略的に元の製品より約10%強度を高めることができます。 カーボンの修理が終わると、安全性と品質管理のためにもう一度オリンパス45MG厚さ計を使用してフレームを検査します。
オフシーズン期間にRuckusがよく手掛けるのは、材料の社内検査です。これは、自社製のフレームチューブを転がして破損させ、修理するのを繰り返し行うものです。
Ruckusでは処理したすべての自転車の記録作成も行っています。 このデータを使用して独自の統計モデリングを実行することも可能です。
「特定の自転車、モデル、年度についてレポートを作成し、何が破損しているかを調べることができます」とShawn氏はFOX 12 Oregonとの検査プロセスに関するインタビューで語りました。
オリンパス45MG厚さ計までの道のり
カーボンファイバー内の亀裂は塗装の下に隠れていることが多いため、カーボン複合材の自転車フレームで損傷の兆候を見つけるのは難しい場合があります。 Ruckusがオリンパス45MG厚さ計を超音波スキャンプロセスに取り入れる以前は、伝統的な手法や他の非破壊検査(NDT)手法で自転車フレームを検査していました。 検査には以下が含まれます。
目視検査:自転車フレーム上の塗装片など、小さなものが亀裂を示す場合があるため、目視検査は材料の表面や縁の剥離を検出するのに便利です。
タッピング検査:サウンディングとも称される手法で、材料をハンマーか硬いもので優しくたたいて、聞こえる音に基づいて剥離を見つけます。 積層複合材にクリアな響く音がする場合は、材料の結合が良好であることを示します。 反対に、鈍い音は剥離があることを示す可能性があります(欠陥が衝撃を鈍らせるため)。
ただし、目視検査も音もヒューマンエラーが起こりやすく、検査者の視覚や聴覚に左右されます。
浸透探傷検査:この手法では、色付きの浸透液または蛍光液を流して、表面の亀裂を明らかにします。 蛍光浸透液は、紫外線ブラックライトを使用して暗い環境で塗布する必要があります。 次に浸透液を取り除きます。 最後に、顕色剤を塗布します。
検査対象材料は、最初に入念にきれいにしておく必要があります。そうしないと、浸透液が欠陥に正しく浸透しません。 顕色剤を塗布する前に表面浸透液が完全に取り除かれていない場合、誤解を招く欠陥指示が現れます。
これらの手法ではカーボンファイバー自転車の検査に求められる精度が得られなかったため、Ruckus Compositesはオリンパスに新たなソリューションを求めました。
繊細さを求められる超音波の問題を45MG厚さ計で解決
オリンパス45MG厚さ計に切り替える前に、Ruckus Compositesはオリンパスエンジニアリングチームと数回の議論を行いました。 また、高性能の自転車部品サンプルを評価のためにオリンパスに送りました。 始めのうちは、有効な測定値を得るのに少し苦労しました。
「自転車には特有の繊細な超音波の問題があります。 材質と形状に、ユーザーには知られていない大きな違いがあります。 自転車の構造についての詳しい知識も必要です」とShawn氏は語ります。
Ruckusは地元のオリンパス販売代理店に掛け合い、45MG厚さ計の長期レンタルを手配したため、必要なテストと調査を実行できました。
Shawn氏は次のように説明しました。「私たちの研究と評価の大半は社内で行いました。 複合材料を使用した自転車に関する情報が得られないからです。 ありがたいことに、私たちは独自のあらゆる標準試験片(振幅、距離、ポロシティなど)を作り、 遭遇するあらゆる参照ニーズに対処できます」。
首尾よく評価を得た後、フレームの複合材料層の構造内にある損傷を非破壊式に検出するRuckus Compositesのプロセスに、オリンパス45MG厚さ計が取り入れられました。
Ruckus Compositesのオーナー兼チーフエンジニアであるShawn Small氏が、カーボンファイバーの自転車フレームに対して超音波検査を行い、45MG厚さ計でA-スキャン測定値を表示しています。 この測定値は、受信した超音波エネルギー量を時間の関数として表示します。
45MG厚さ計による自転車フレーム内部損傷の検出方法
あまり馴染みのない方のために説明しますと、超音波厚さ計45MGの仕組みは、超音波探触子によって生成された音響パルスが、材料の片側から伝搬するのにかかる時間を正確に測定するというものです。
複合材料の場合、音響エネルギーは複合材料内の繊維間にある個々の粒界から散乱します。 厚さ計は材料内にある不規則な散乱パターンを検出し、オペレーターに信号を送り返します。
超音波厚さ計の仕組みは、小さなプローブ(探触子)によって生成された音響パルスが、表面内側または反対面から試験体を通るのにかかる時間を測定するというものです。
技術の背後にある科学について詳しくは、当社の超音波厚さ測定チュートリアルまたは超音波探傷試験FAQをご覧ください。
構造と材料:カーボンファイバー自転車の長所と短所
カーボンファイバーのフレームまたは構成部品に検出されない亀裂があると、サイクリストに大きな破壊的損害をもたらす恐れがあります。 全身を預けている構造物が体の下で粉々に砕け散ってしまったら、体を支えるものが物理法則に従う結果、傷害を負う可能性があります。
なぜカーボンファイバー製の自転車に乗るのでしょうか。
カーボンファイバーはアルミニウム、スチール、さらにはチタンよりもはるかに軽いからです。 カーボンファイバー材は低密度なので、路面の振動を伝えずに吸収し、 乗り心地がよくなります。 複合材料は空気抵抗力を軽減するように成型することもできます。 抵抗力は速度の2乗に比例するため、この力を軽減すればサイクリストの運転速度に大きな違いが生まれます。
Ruckus Compositesは、サイクリストが自転車に対して行える最高の投資の1つはカーボンファイバーフレームであると考えます。理由は、無限に見える疲労寿命と修理可能性にあります。 高額な投資かもしれませんが、長期にわたって保有できるのです。
Shawn氏によると、1万ドルのカーボンファイバー自転車が20年間も長持ちした例があり、安全であるうちは何度でも構造的に再構築できるそうです。 一方、金属製の自転車フレームは、含まれる材料のために修理費用が高額になる可能性があります。
費用分析:自転車検査における超音波検査の価値
数千台もの自転車検査を経て、Ruckus Compositesは45MG厚さ計になおも価値を見出しています。
「私たちはオリンパス45MGを目一杯使っているので、元は取れました」とShawn氏は話します。 「45MGは日常的な業務サービスに欠かせないものになっています」
45MG厚さ計を使用してカーボンファイバーフレームを検査するShawn Small氏
肉眼では見えない構造的完全性を表示できることは最大のメリットであり、良質なサービスを支えています。
「自転車の目に見える損傷が非常に少ないことは衝撃です」とShawn氏は言います。 「私たちは45MGを使って複合材料の構造的完全性を評価しています。 これを使うと、複合材料に対して行った修理プロセスを正確にマッピングすることもできます」。
Shawn氏は続けます。「おかげで、良質なサービスを確実に提供できます。 例えば、比較のために自転車の損傷していないエリアをスキャンして、積層厚さを判断できます。 このデータを使用して、当社のレイアップ技術者が損傷エリアに適用する必要がある材料の量を伝えます。
Ruckus Compositesでは、フレームとフォーク全体の検査費用を250ドルと設定していますが、顧客が検査後にフレームの修理を決めれば100ドル差し引かれます。 平均的な修理費用は500ドルであり、塗装修復が含まれます。
Shawn氏はわかりやすい修理プロセスを次のように説明しました。
「45MGで損傷エリアをマッピングしたら、テーパー形状複合材の修理計画を設計します。 レイアップスケジュールに基づいて、損傷したすべてのカーボンファイバーを取り除き、新しいカーボンファイバーを付加します。 真空バッグ法とオーブン硬化で構造体を成型し、すべての塗装とグラフィックスを社内で復元します」とShawn氏は話しました。
Shawn氏は45MG厚さ計の携帯性と使いやすさも気に入っています。
「オリンパス45MGは単純な機器ですが、それが利点です。 必要なければ、余計なものや大きい装置を引きずって歩かなくてすみます」とShawn氏は話しました。
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