世界中いたるところ、汚染された土壌区域が多数あります。土壌は、自然界や人工の金属化合物、有機化合物および無機物によって汚染される可能性があります。
人口が増加するにつれて、汚染地を修復する必要性が高まります。しかし、土壌の修復には、費用効果の高い評価オプションがないことが障壁の1つとなっています。したがって研究者は、修復作業の高速化と簡略化に役立つ新しいテクノロジー(またはテクノロジーの組み合わせ)を探索中です。
テキサス工科大学(TTU)の植物土壌科学部のデービッド・C・ウェインドーフ教授と、インドのインド工科大学カラグプル校のソンスブラ・チャクラボルティ助教授は、費用効果が高い携帯型土壌分析ソリューションを開発しました。これは、可視近赤外拡散反射(Vis-NIR)およびX線蛍光(XRF)という2つのテクノロジーによるデータを組み合わせる技法です。
その予測モデルは、Vis-NIRからの拡散反射スペクトルを、XRFが示す元素成分に関連付けることができます。どのような仕組みか見てみましょう。
土壌分析におけるVis-NIRとXRFの関連付けの考察
ご存じない方のために紹介すると、Vis-NIRは土壌に対して可視の近赤外光を照射します(懐中電灯によく似ています)。その光の一部は接触プロ—ブに反射し、光ファイバーケーブルを通して、バックパック搭載の分光放射計に伝送します。そこで、反射光の波長が1 nmの間隔で350 nm~2,500 nmの範囲で正確に特定されます。
その一方で、蛍光X線分析計は補完スキャンで元素成分を収集します。次に機械学習アルゴリズム(例えばランダムフォレスト回帰、ブースト回帰木)を使用し、データセットを組み合わせ、対照の分析物を予測します。
基本的に、Vis-NIRスペクトルは基本のモデリングデータとして使用されるのに対して、XRF元素成分は補助の入力データとしてモデルに追加されます。このような方法でデータモデリングを組み合わせると、どちらか一方のセンサーのみを使う場合より正確であることが繰り返し示されています。
この2つのテクノロジーには、補完的な検出機能が備わっています。Vis-NIRは、水分と有機炭素化合物に対して非常に高感度です。その一方で、XRFは、環境/農耕に関与する多様な元素(例えば植物の必須要素、重金属)を堅実に検出します。
これらの方法は、鉱石採掘や埋め立て地、石油流出や荒れ地に至るまで、世界中の多彩な環境において用いられてきました。
受賞した発見
この先駆的な発見が人目に付かないわけはありません。2018年にウェインドーフおよびチャクラボルティの両博士は、XRFを併用するVis-NIRを使った土壌サンプルの特性の同定に関する特許を取得しました。両博士には、関連したテクノロジー/革新技術について、現在審査中の他の特許もいくつかあります。
両博士の業績は、多数の学術資料に掲載され、アメリカ陸軍工兵司令部およびNASAとの提携が実現しています。その目覚ましい業績を2つ以下に示します。
ウェインドーフ博士の研究で活躍したXRF装置の詳細をご紹介します。弊社自慢のVanta™ハンドヘルド蛍光X線分析計にほかなりません。
TTUのこのビデオでは、研究者がVanta蛍光X線分析計およびVis-NIRスペクトロメーターを併用し周囲の環境をより深く理解できる方法について、ウェインドーフ博士が説明しています。
デービッド・ウェインドーフ博士提供のビデオ
ウェインドーフ博士(左)およびその博士課程の学生のオータム・アクリー(右)は、ルーマニアでVantaハンドヘルド蛍光X線分析計を使って土壌を分析しています。
XRFを使用した土壌および環境分析の詳細については、弊社のリソースである環境アセスメント用Vantaをご覧ください。