土壌の層に対してVanta™ポータブルXRF分析計(pXRF)を使用した最近の研究では、中央ロシアの後期旧石器時代と中世にさかのぼり、地形発達に及ぼした古代人の影響と、気候・環境条件について示されています。
プロジェクトについて詳しく知るため、この土壌分析研究に関する論文を執筆した研究者、タティアナ・ロマニス氏にお話を伺いました。 彼女に協力した研究者は、セルゲイ・セドフ氏、セルゲイ・レフ氏、マリーナ・レーベジェワ氏、キリル・コンドラチエフ氏、アンナ・ユーディナ氏、コンスタンティン・アブロシモフ氏、アレクサンドラ・ゴリエワ氏、ドミトリー・ボルコフ氏です。
タティアナ氏は、プロジェクトの目的、結果、Vanta pXRF分析計を選んだ理由、プロジェクトに使用したその他のオリンパス製品について語ってくれました。
研究者がVantaポータブルXRF分析計を使用して土壌を検査
この研究にVanta XRF分析計を選んだのはなぜですか。また、研究プロセスにどのように取り入れましたか。
遺物を保護しつつ、ラボの実験を行わずに探査隊の目的を遂げることができるのは、ポータブルXRF分析計だけでした。 私たちがVanta分析計を選んだ理由は、非破壊式、持ち運び可能、品質の高い分析結果という重要な利点があるからです。
このプロジェクトでは、ザライスク・クレムリンにある後期旧石器時代遺跡の古土壌を調査しました。遺跡での作業において、ラボ分析用試料の量が限られることが大きな課題です。
ザライスク遺跡は、多くの遺物を含む考古学的文化層内で展開されているため、分析が困難です。 例えば、考古学者セルゲイ・レフ氏によれば、小さな4平方メートルの区域内にある1つの文化層から、1,300点を超えるフリント遺物が出土しました。
このケースで、最初の目標は、土壌横断層の最も典型的な特徴を研究するための試料を選択することでした。 2つ目の目標は、化学元素の分布に基づいて、層内の明確な境界または拡散した境界を描くことでした。 そして3つ目の目標は、調査した土壌断面内に分布する化学元素の2つのグループを区別して、溶脱層から集積層の土壌プロセスの痕跡と、人間の活動による影響の痕跡に分けることでした。
pXRFデータは期待に沿うものでしたか。
私たちは、現場での土壌生成の非破壊調査に分光分析を使用しました。pXRFが素晴らしい結果を示したのは、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、リン(P)、カルシウム(Ca)、硫黄(S)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の濃度の測定です。 予想したとおり、これらの元素の濃度は、土壌生成プロセスまたは人為的影響によって変化していました。
研究者による土壌分析研究用のpXRF初期分析データ
研究で首尾よく進んだことや、苦労したことは何ですか。
元素濃度の測定に、思ったよりもだいぶ時間がかかりました。 こうした種類の研究では、予備日を考慮する必要があります。 ですが、サンプリング用の材料が不足している場合には価値がある作業です。
pXRFの分析結果に驚かれましたか。
いくつかの元素について、現場でのXRF分析がラボ分析に匹敵するとは思っていませんでした。 得られた結果はすべて予想を超えていました。
今後、pXRF分析を別のプロジェクトに使用する予定はありますか。
遺跡に埋もれている古生態研究用土壌に、Vanta分析計を体系的に使いたいです。 対象物を壊さずに、現地調査で詳細な情報を得られますから。
研究で直面した大きな課題は何ですか。
調査した考古学的土壌や文化層の不均質性の高さと、必要な分析法を現場に持ち込まなくてはならない、サンプリングの制限があることです。
pXRF以外に、課題の解決に用いた機器は何ですか。
DP26顕微鏡用デジタルカメラ付きのオリンパスBX51偏光顕微鏡を、土壌の微細構造の研究と可視化のために薄片分析する際に使用しています。
当社の顕微鏡イメージングシステムは、今後の研究にどのように活用できますか。
古代人による影響と環境の変化を顕微鏡スケールでとらえた記録をつくるため、土壌形成プロセスの微細な人為的小片や特徴を定量化する、形態学的画像分析に活用していきます。
土壌分析用のオリンパスpXRFおよび顕微鏡の詳細
この土壌分析研究で、当社のpXRFおよび顕微鏡が果たした役割について詳しくは、こちらの論文をご覧ください。