光学顕微鏡の平面分解能は使用する光の波長に大きく依存する。短波長のレーザー光を使うレーザー顕微鏡は、可視光(平均波長:約550nm)を使う従来の顕微鏡に比べて水平方向の分解能に優れており、LEXT
OLS5000では、405nmの短波長半導体レーザー採用により優れた平面分解能を得ることができる。
図6: LEXT OLS5000のレーザー光源
コンフォーカル光学系では高分解能を実現するためには、光源波長を短くするだけでなく光学系の収差の影響を小さくすることが重要である。その光学系の中でも最も重要なのは対物レンズである。OLS5000では、可視光の中でも波長の短い青紫色のレーザー光(λ=405nm)で理想的な性能を発揮する、オリンパスが開発した405nm専用の対物レンズを採用した。
図7に示す2つのグラフは、専用対物レンズと通常の光学顕微鏡で使用される同一NAの対物レンズよる測定結果を比較したものである。サンプルは、公称周期10mm、振幅0.3mmの正弦波断面を持つサンプルである。通常の対物レンズの場合、光軸付近は公称値どおりの正しい測定結果となるが、視野の周辺部では実際よりも大きな振幅として測定されてしまう。これは光源波長405nmにおける光軸と視野周辺での収差性能の違いによるものであり、この現象はサンプルの傾斜角度が大きいほど顕著であった。一方、405nm専用の対物レンズを用いた場合、このような挙動は見られず、視野周辺でも正しい測定結果となった。このようにOLS5000は、サンプルの微細凹凸形状が作る局所的な傾斜といった、一般的な測定対象物に多く存在する形状に対して、全視野にわたって信頼性の高い測定を行うことが可能である。また視野の周辺部での正確な検出が可能となり、急峻な傾斜を持つサンプルに対する測定性能も向上した。
図7: 405nm専用対物レンズとレンズ性能比較 | ||
LEXT専用対物レンズ |
OLS5000では、オリンパス独自の2次元スキャナーを搭載。X方向には電磁誘導型のMEMSスキャナーを、Y方向には高精度ガルバノミラーを採用した。このスキャナーを対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置することで、コンパクトで理想的な光学配置となっている。この理想の光学配置により、高速で低歪率の正確なX-Yスキャンを実現した。高性能なコンフォーカル光学系、短波長レーザー、専用対物レンズとの組み合わせにより、0.12μmの平面分解能を達成した。また、OLS5000では最大4096x4096の超解像スキャンを可能にしている。
図8: 2次元スキャンシステム
優れた平面分解能
対物レンズをZ方向に移動させながら、反射光の強さの変化を検知することによって各Zステップの反射強度データが得られる。オリンパス独自のアルゴリズムを用いたPEAKサーチテクノロジーでは、得られた反射強度データからステップ間の反射強度を含む適切なIZカーブを計算し、Z方向の全範囲の中の最大輝度となる高さ位置を得ることができる。この算出を全ピクセル毎に行うことで視野全面の正確な3次元画像を得る。OLS5000はこのPEAKサーチによって、信頼性の高い3次元測定が可能となっている。
焦点を移動させながら複数枚の画像を取得
微分干渉観察は、レーザー顕微鏡の分解能をさらに超えた、ナノメートルレベルの微小凹凸を可視化する観察方法である。このレーザーDICにより、LEXTOLS5000では、低倍率のライブ観察でも電子顕微鏡の分解能に迫る画像を得ることができる。
図9:レーザー微分干渉(DIC) | ||
レーザー画像 (ポリマーフィルム) | レーザーDIC画像 (ポリマーフィルム) |
OLS5000は、コンフォーカル系統を2系統搭載したデュアルコンフォーカルシステムを採用。高感度ディテクター(検出器)との組み合わせで、極端に異なる反射率の部分を持つサンプルでも、クリアな画像と信頼性の高い高さ画像を得ることができる。また、特に反射光の戻りの少ない急峻な斜面の高さデータは、従来のレーザー顕微鏡では検出することが困難であったが、LEXTOLS5000では、高いN.A.を誇る専用対物レンズと405nmレーザーの搭載により、今まで測ることのできなかった急峻な角度のサンプルでも、確実に測定することが可能となった。
図10: デュアルコンフォーカルシステムと急斜面サンプル取得例 | |
ダイヤモンド電着工具 対物レンズ:MPLAPONXLEXT | 急峻な角度を持つサンプル(カミソリ) |
従来のレーザー顕微鏡 | LEXT OLS5000 |
サンプル:ルビー球 視野:126×126μm
φ153μmのルビー球を撮影。垂直な面近くまで画像化できていることがわかる。 |
レーザー光を使った測定であるためサンプルを傷つけることなく、観察、検査、測定が可能である。サンプルを小片にカットしたりする必要もなく、そのままの状態で顕微鏡のステージに置くだけで、大気環境の中で測定可能である。たとえば触針式では、探針がサンプル表面に直接触れるため、柔らかいサンプルの表面を削り取ったり、粘着性のあるサンプルが引っ張られたりして正確な値を得ることができない。しかし、レーザー顕微鏡は非接触のため、表面状態に影響されず、正確な粗さ測定が可能となる。
図11: 柔らかな表面のサンプルのデータ取得 | ||
接触式では、柔らかいサンプルを探針が削り取ってしまう | レーザー顕微鏡による観察画像
サンプル:粘着性テープ 256×256μm | |
一般的な触針式の新品(未摩耗状態)の探針の先端半径は2μmもしくは10μmである。これに対してレーザー顕微鏡のレーザースポットの半径は0.2μmと微小でもちろん摩耗もない。他の装置では入ることができない狭い凹部にも届き、微細な凹凸の表面まで測定することが可能となる。
図12:レーザー顕微鏡のレーザースポット | |
OLS5000 R:0.2μm |
測定機器としての性能は二つの異なった用語で表現される。それが「正確性」と「繰り返し性」である。「正確性」とは、真の値にどれだけ近づいているかを表し、「繰り返し性」とは、複数回の測定においてどれだけ変動が少ないかを表すものである。OLS4100はこの二つの性能を保証。LEXT OLS5000では、すべての部品が厳格なシステムの基で製造されている。対物レンズから本体までを自社工場で一貫製造し、厳格な検査基準を経て出荷され、納品時の校正と最終調整は、実際に使用される環境で専任の技術者が行っている。
図13: 二つの性能保証 | |
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