ピストン
アプリケーション:デジタルマイクロスコープによるピストンのバリ検査
ピストンはエンジンを構成するユニットのなかでも特に重要と部品と言えます。シリンダーブロックの燃焼室内において数百度にもなる高温下で1分間に数千回以上の上下運動を行い、自動車が駆動するために必要な根本の力を生み出しています。そのためピストンには、低熱膨張性、耐熱性、耐摩耗性などの品質が要求されます。
また、ピストンの加工においてはバリがないことが強く求められています。
前述のようにピストンは激しい上下運動をするため、他のユニットと摺動する部分にバリが存在していた場合、相手のユニットとのスムーズな摺動を妨げる危険があります。
バリによる重大な不具合のひとつに、ピストンリング溝に発生するバリがあります。ピストンにはシリンダーライナーと直接摺動するピストンリングを装着するための溝が刻まれており、一般的には3本の溝がありますが、万が一溝にバリが残っていると、バリの影響によりピストンリングがいびつな状態で装着され、その結果エンジン燃焼の不具合が発生する可能性があります。
ピストンリング溝
(本サンプルは説明用に用意したもので良品です。バリの発生はありません)
<ピストン断面イメージ図> |
ピストンリング溝にバリが無い場合 バリがなければピストンリングはピストンにピッタリ装着され、シリンダーライナー内でスムーズな上下運動が行われます。 | ピストンリング溝にバリがある場合 バリがあると、ピストンリングは溝から浮き出た状態で装着されてしまいます。それが原因で以下の不具合が発生する危険があります。
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ピストンのバリ、特にピストンリング溝に発生したバリは上に記載したように小さくても深刻な不具合の原因になるため顕微鏡的な検査が必要となります。はじめに低倍率観察でピストンにバリがあるかないかをチェックし、バリを見つけた場合は高倍率画像でバリの解析を行います。近年ではピストンを顕微鏡観察用に加工する必要のないデジタルマイクロスコープを使用した検査が多くなっています。しかし、ピストンリングは円筒形をしており、観察がしにくい上、ピストンリング溝は一般に数mmの深さがあるため、従来は検査者の観察スキルが求められる検査でした。
デジタルマイクロスコープDSX1000シリーズで解決できること
① 低倍率でも解像力の高い専用対物レンズをラインアップ
低倍率でもクリアな画像を提供できる専用対物レンズを採用しました。小さなバリも見逃すことはありません。
DSX1000専用対物レンズXLOBシリーズ
ピストンリング溝上面にピントを合わせた画像(42×) 溝のエッジの状態がクリアに観察できます | ピストンリング溝底面にピントを合わせた画像(42×) 溝底面にバリが無いことが良くわかります | 全焦点機能を使って溝の上下全面にピントを合わせた画像(42×) クーリングチャネルの穴のエッジがクリアに観察できます |
② さまざまな角度から観察できるフリーアングル観察システム
ヘッドを傾けても視野がずれない光学設計のため、ピストン外周に刻まれたピストンリング溝全周を簡単に観察することができます。
チルトヘッド
円筒形のピストンも簡単に斜め方向からの狙った位置のズレがない観察ができます
DSXのヘッドを70°傾けて撮影した画像(42×)
ピストンリングの溝のエッジがクリアに観察できます
③ スムーズな対物レンズの交換
バリを見つけた後はより詳細にバリの状態観察や解析を行います。従来のデジタルマイクロスコープはレンズが1本だけ付いているタイプが多く、ズームで倍率を上げていました。しかし、ズームでの倍率拡大は画像の倍率は大きくなりますが、画質が向上するわけではありません。したがって、高画質の高倍率画像を取得するには高い解像力の高倍率対物レンズに交換する必要があります。DSX1000は最大2本の対物レンズをヘッドに同時装着することができ、対物レンズをスライドさせるだけの簡単操作で、瞬時に倍率の切り替えが可能です。
また、新規の対物レンズを取り付けるときも、対物レンズの取り付けたアタッチメントをヘッドに挿入するだけで、ワンタッチで交換できます。レンズアタッチメントにはマグネットセンサーが内蔵されているため、倍率や視野情報も自動的に連動します。
高倍率でのピストンリング溝エッジ画像(500×) エッジがまっすぐな状態がはっきりわかります | 高倍率でのピストンリング底面画像(500×) 底面の加工状態が詳細に観察できます |