このアプリケーションノートでは、あらゆるタイプのゴム製タイヤのスチール製およびファイバー製プライコードやベルトの深さや総肉厚を測定する方法について取り上げます。 ゴム製タイヤ製造の品質管理品質管理上の目的で、ゴム製タイヤメーカーは自動車、トラック、およびオフロード用車両のタイヤの壁内に埋め込んだスチールコードまたはファイバーコードの位置を知る必要があります。大型トラックおよび建設用機器に使用される大型で高価なタイヤの場合は、このことは特に重要で、不適切なコードの位置は重大な故障の原因となり得ます。場合によっては、メーカーは壁の総厚測定を望むこともあります。ゴムは高周波音波を大きく減衰させる性質があることと、多くのタイヤは内部構造によって生成されるエコーのパターンが複雑であることから、これらの測定には特別な配慮を払う必要があります。 ゴム製タイヤの厚さ測定用の機器ゴム製タイヤの測定には、測定するタイヤの厚さによって2種類の一般的なアプローチが存在します。各用途に、以下の機器をお勧めします。 1. 自動車と軽トラックのタイヤ向けの超音波厚さ計1つ目の方法では、超音波厚さ計(39DL PLUS™または45MG厚さ計(一振動子ソフトウェア付き)など)にM1036(2.25 MHz)探触子を組み合わせて使用します。 自動車と軽トラックのタイヤに主に使用される上記の厚さ計と低周波探触子は、一般的にはプライコードの深さ測定に使用されます。測定範囲は約3 mm(0.125インチ)~25 mm(1インチ)で、校正精度は約±0.25 mm(0.01インチ)です。波形表示機能は、39DL PLUS厚さ計には標準装備されており、45MG厚さ計ではオプションにて対応可能です。ゴム厚さの最小値を示す最初のプライコードのエコーを確認するために有効です。 2. 大型タイヤ向けの超音波探傷器2つ目の方法では、超音波厚さ計(矩形波パルサー付きのEPOCH™シリーズ探傷器など)を使用します。EPOCH 6LTまたはEPOCH 650探傷器と、選択された低周波探触子を併用すると良いでうまくいきます。これらの選択可能なバンドパスフィルター機能付きの矩形波探傷器は、厚さ計よりも透過性が良く、トラックやオフロード用車両などの大型タイヤの測定に推奨されます。200 mm(8インチ)以上のゴムの厚さは、通常は500 kHzの探触子で測定でき、ピッチキャッチモードを使用する場合もあります。一般的な測定精度は、乗用車用タイヤの± 0.25 mm(0.01インチ)から、大型トラックとオフロード車両用タイヤの ± 1 mm(0.04インチ)までの範囲です。 ゴム製タイヤの厚さ測定手順様々なタイプのタイヤで音の減衰と内部構造は大きく異なるため、各々の用途を個別に評価することが重要です。ゴムの測定では、常に2.25 MHz以下の低周波探触子が必要となります。場合によっては、エポキシ摩耗面を有する探触子を使用して、探触子とゴムの間の音響カップリングを向上させると有利です。タイヤの測定に一般的に推奨される探触子は、M1036(2.25 MHz、直径12.5 mm(0.5インチ)、高透過性)およびV601-RB(500 kHz、, 直径25 mm(1インチ))です。 極めて厚いタイヤ(100 mmまたは4インチを超えるゴム)の用途では、V601-RB探触子を探傷器のピッチキャッチモードで使用するとうまくいきます。送信機と受信機の機能を分離させることで、発信パルス回復の増幅に伴うノイズの問題なく、極めて高いゲインを使用できます。通常、すべてのゴム製タイヤ測定にゲルタイプのカプラントをお勧めします。十分に湿らせるためにカプラントを表面にすり込みます。他のあらゆる超音波厚さ測定と同様に、未知のゴムの音速を、既知の厚さのサンプルを使用して校正することが必要です。ゴム内の音速は温度で急速に変化します。したがって高精度の測定のためには、実際の測定条件に密接に対応する温度で音速を測定してください。 プライコードの深さに対するタイヤの総肉厚の超音波測定の成功は、プライコードの構造に依存しています。タイヤのタイプによっては、プライコード層が多数あったりプライコード間が極めて近接していたりして、全体の厚さを測定できる十分な音響エネルギーが壁内部に到達しません。一方、個々のプライコードの間が大きく離れていて、一部の音響エネルギーが壁の内部まで到達し、全体の厚さの測定が可能になるタイヤもあります。これはケースバイケースで評価する必要があります。内壁エコーが見られる場合は、装置を第2の保存したセットアップに切り替えて測定することができます。 図1は、トレッド厚さが約12.5 mm(0.5インチ)の自動車タイヤを外側トレッドから測定した、鋼鉄製プライコードのエコーを示しています。測定には、39DL PLUS厚さ計とM1036探触子(2.25 MHz)を使用しました。この場合、エコーは最初の正のピークを測定しています。 図1 図2は、EPOCH 650探傷器と2つの500 kHz V601-RB探触子を透過モードで使用して行った、厚さ約171.5 mm(6.75インチ)の建設用大型車両タイヤの総厚さの測定を示しています。測定ゲートは、画面の右側付近にあるピークが示すゴムの厚さをとらえるように配置されています。 図2 |