- 重要施設(例:プラントの配管)にて合金材料をすばやく高精度に識別・適合確認
- 厳しい環境下や高温度下でも最適な性能を発揮
- API(米国石油協会)のRP 578ガイドラインを満たすトレーサビリティーを検査現場へ提供
- 硫化腐食防止に役立つ低濃度シリコン(Si)の測定用途に優れた検出性能
合金の品種は機械的特性、耐腐食性、温度耐性、圧力耐性などにより規定されています。PMI(Positive Material Identification:材料確認)検査ををおこなうことにより材料取り違えミスを防ぐことができます。仮に材料取り違えが起こると、それはダウンタイム(休止時間)、修理、交換、ガスや液体の損失(漏出)、環境汚染や火災の危険、バッチ汚染などの原因となり、結果として甚大な損害につながります。
ハンドヘルド蛍光X線分析計(XRF)は非破壊かつ迅速な測定ツールで、合金成分をその場で測定し合金品種を素早く特定します。例えば、部品製造、合金材料の受入、パイプやバルブの設置、溶接、ボルト締め、ガスケット接合の際に、すばやく高精度に材料の成分を確認可能です。
保守メンテナンスでプラントが稼動休止している場合でも、残念ながら、稼働に重要な部品が材料適合しているかを確認するPMI検査の時間を充分に確保できるとは限りません。このため、高温下、高圧力下、振動環境下のプラント稼働中であっても、測定を実施できる費用対効果の高い測定ツールが必要となります。オリンパスの合金・PMI検査用ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAは、厳しい環境下でのPMI検査に適したツールです。
ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAは、以下のような環境でもパフォーマンスを発揮できるよう、耐久性に優れた設計となっています。
- 高温環境で測定可能
- 稼働中の高温構成材料を測定可能
- 過酷な環境で、ほぼ連続的に繰り返し測定可能
DELTA上部のアルミニウム部分はラジエーターやヒートシンクとして機能します。DELTA内部の熱を効果的に放熱し、最大480℃のサンプルを測定することができます。
DELTA内部のフェイルセーフ機構、モニター、温度補正モデルにより、分析性能が最適化されていますが、このうち一つでも過度に働くと、冷えるまで測定ができません。
DELTAは、高温状態のサンプル測定に特別な高温用ウィンドウを使用します。サンプルの温度が315℃を超える場合、熱伝達をさらに最小限にするために、装置の角度調整(斜めにして測定)またはDELTA HotHeel(ホットヒール)の使用を推奨しています。このような状況下では、デューティーサイクルを30秒ON、90秒OFFとして測定できます。
合金成分のシリコン(Si)のような軽元素をプラント稼働中に高温状態で測定する場合、特に難易度が高くなりますが、それはクロム(Cr)のようなSiより重い元素を測定するよりも、軽元素の測定には長い時間を必要とするためです。装置を斜めにする、またはDELTA Hot Heel(ホットヒール)を用いて軽元素を測定することは難易度が上がります。それは、サンプルから検出器までの大気中経路が長くなり、Siの信号減衰が大きくなるためです。
しかしDELTAシリーズは熱に強く、プラント稼働中の高温状態でも連続的にPMI検査を行うことができます。また、高感度のため軽元素の濃度も確実に判定できます。シリコン(Si)の測定には、高感度かつX-act Count(エグザクトカウント)テクノロジーを装備したDELTA ProfessionalまたはDELTA Premiumが対応可能です。
ハンドヘルド蛍光X線分析計による高温環境でのシリコン(Si)測定
シリコン(Si)は地殻の約27%を占めています。土壌に含まれ、あらゆる場所に存在しています。残念ながら、土壌、塵埃、岩くずからの汚染がある場合、XRFによるSi測定に悪影響を及ぼします。合金サンプルの表面やXRFの測定ウィンドウ上に少量のSiが付着すると、低炭素鋼サンプル中のSiを測定する際に、測定エラーを引き起こす可能性があります。
そうした汚染は、測定結果に誤解をもたらす原因ともなり、Siがない場合または報告された値よりかなり少ない場合にも、Siが多く存在するというような間違った結論をだす要因になりかねません。ハンドヘルド蛍光X線分析計によるシリコン測定では、以下の一般的な注意が必要です。
表面の準備
- サンプルは全て、表面を研磨または拭いて、ペイント、腐食物、金属薄片、基部の汚れを除去します。
- 酸化ジルコニウムの砥石車を推奨します。
汚染防止管理
- DELTAの測定ウィンドウに触れないでください。
- シリコン汚染された表面または試料に触れないでください。
- リファレンスサンプルを頻繁に測定して、汚染がないか分析計をチェックします。
- いったん測定ウィンドウが汚染されると、全測定値で高いバイアスが生じます。
最善の方法は、シリコンを含まないリファレンス標準物質(例:CP-Iron)や、濃度既知で少量のシリコンを含むサンプル(例:炭素鋼)を測定して、測定の間、シリコン汚染が存在しないことを明確にすることです。
最終的な推奨事項:
- リファレンスサンプルは、アルコールを含ませたコットンボールや清潔なシートで毎日きれいに拭いてください。
- リファレンスサンプルを小サイズの清潔なファスナー付きポリ袋に保管してください。
- 試料を清潔に保ってください(汚れた場所には置かず、使用後はポリ袋に戻してください)。
- チェックのための試料(例:CP鉄、炭素鋼)上で装置を傾けて測定するのはひとつの選択肢です。重要な点は、試料と測定ウィンドウが清潔な状態であって、安定した測定結果が得られることです。毎回同じ方法で測定を行い、ウィンドウと試料を清潔に保つことを確実に行ってください。
適切な測定結果を得るためには、適切な測定方法が必要です。また、過度に装置を傾けて測定しないでください(過度になるよりは足りないほうがベターです)。リファレンスサンプルは、正確な結果を得るためには極めて重要です。また、サンプルの表面を研磨してきれいにすることは、不可欠な手順です。