このアプリケーションノートは、自動車の多層プラスチック燃料タンクの各層およびタンク全体の厚さを測定する方法を説明します。
自動車燃料タンクの製造の背景
現代の自動車用燃料タンクの多くは多層プラスチック構造で作られており、通常は、高密度ポリエチレン(HDPE)の2つの構造層とそれらに挟まれたエチレンビニルアルコール(EVOH)製の薄いガスバリア層でできています。バリア層を設ける目的は、ガソリン蒸気がポリエチレン壁を通じてゆっくり漏れるのを防ぐことです。 HDPE構造層は一般に厚さ範囲が2.5~5 mm(0.1~0.2インチ)で、EVOHバリア層は一般に厚さ範囲が0.1~0.3mm(0.004~0.012インチ)です。タンクメーカーは、厚さとバリア層の深さの両方を測定する必要があります。
燃料タンクの厚さ測定に使用する機器
39DL PLUS超音波厚さ計とオプションの多層材測定ソフトウェアが、この用途の各層およびタンク部分全体の厚さの同時測定にお勧めです。 このソフトウェアと39DL PLUS厚さ計で、測定対象の各層に対して別々にプログラムされたセットアップ(音速、ゲイン、およびブランキングの設定など)を使用して、パフォーマンスを最適化することができます。この試験では、厚さ計はM2017-RM(20MHz)遅延材付き探触子と組み合わせてよく使用されます。厚さ計のセットアップについてサポートが必要な場合は、Evidentにお問い合わせください。
自動車燃料タンクの厚さの一般的な測定手順
下の波形は、一般的な自動車燃料タンクの構造層およびバリア層{を適切なセットアップにより測定した結果を示しています。バリア層が約0.25 mm(0.010インチ)より薄い場合は、バリア層の読み取りに厚さ計の周波数ベースのバリア測定モードを使用しました 。
バリアの深さは従来のセットアップバリアの深さは従来のモード2セットアップで測定し、内側のポリエチレン層の厚さもモード2で測定しました。およそ0.25 mm(0.010インチ)を超える厚さのバリア層もモード2で測定できます。外側のポリエチレン壁でのローパスフィルタリング効果が原因で、通常、測定可能なバリア厚の最小値は約0.100 mm(0.004インチ)になります 。
2つの材料の境界における反射率は、2つの材料の相対音響インピーダンスによって決まります。
未使用材料と粉砕再生材料は、基本的に同じ音響インピーダンスを持つため、粉砕再生材料の層を別に測定することはできません。
また、バリア層に隣接する接着層は、通常、薄過ぎるかインピーダンスが一致し過ぎているため超音波技法では測定、解像できません。
外側のポリエチレン層
バリア層(周波数領域測定)
内側のポリエチレン層
どの超音波厚さ測定でも同じことですが、正確であるには正しい音速校正が必要です。 音速校正は、測定対象となる各材料について、厚さがわかっているサンプルで実施する必要があります。