このアプリケーションノートでは、多層プラスチック製食品・飲料容器の個々の層と全層の厚さを測定する方法について説明します。
プラスチック製食品・飲料容器の層
パッケージに入っている食品や炭酸飲料ボトルの容器の多くは、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンなどの構造用プラスチックの2層間に、ガスバリア層が含まれています。
薄いバリア層は、通常、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエステル、アクリル共重合体、または類似の材料でできており、パッケージ内外のガスの減少を防止し、鮮度を保ち賞味期限を延ばすように設計されています。例として、冷凍食品パッケージへの酸素侵入防止、ビール瓶内の炭酸ガスの保持等が挙げられます。
多層プラスチック製食品・飲料容器の測定に使用する超音波機器
多層材測定ソフトウェアオプション付きの39DL PLUS超音波厚さ計は、各層の厚さが0.102 mm(0.004インチ)より厚い場合に使用できます。薄い層の場合は、通常、125 MHzまでの周波数を駆動可能な72DL PLUS超音波厚さ計など、高周波装置を使用して測定する必要があります。
測定可能な最低厚さは、常に具体的な材料の音響特性に依存しますが、薄肉容器内の0.025 mm(0.001インチ)までのバリア層は、多くの場合この種のシステムで測定できます。この種の試験には、通常、50 MHz~125 MHzの範囲の高周波遅延材付き探触子が推奨されます。
多層プラスチック製容器を測定する標準的な手順
下の波形は、50 MHzで測定した3層プラスチック製容器の測定例です。容器は、0.147 mm(0.0058インチ)の外層、0.064 mm(0.0025インチ)のバリア層、0.297 mm(0.0117インチ)の内層から構成されています。本試験は、50 MHz V2015-BB-RM探触子と72DL PLUS厚さ計を使用して実施しました。
72DL PLUS超音波厚さ計を使用して実施した3層プラスチック製容器の50 MHz測定
所与の用途で測定可能な最低厚さは、対象となっているプラスチックが伝達する最高周波数で決定されます。プラスチックの中には、高周波音波を強く減衰させるものがあります。この場合、厚い構造のプラスチック内に組み込まれた極めて薄いバリア層が、ローパスフィルター効果のため測定できないことがあります。所与の製品に対して測定可能な厚さ範囲は、通常代表サンプルを使用した実験で決定されます。
2つの材料の境界における反射率は、2つの材料の相対音響インピーダンスによって決まります。所与の種類の未使用および粉砕再生プラスチックは、基本的に同じ音響インピーダンスを持つため、粉砕再生層を別に測定することはできません。バリア層に隣接する接着剤層は、超音波法で測定するには一般に薄すぎるか、インピーダンスが近すぎるため、測定できません。
どの超音波厚さ測定でも同じことですが、正確であるには正しい音速校正が必要です。音速校正は、測定対象となる各材料について、厚さがわかっているサンプルで実施する必要があります。