ギアボックス検査に関する前回のブログシリーズでは、風力タービンオペレーターによる積極的保全が重要であることを強調しました。 ビデオスコープは目の延長として機能し、ギアボックスなどの複雑な部品の内部を見られることから、重要な役割を果たします。 しかし、単に見ることは始まりに過ぎません。理想的な特長を備えたビデオスコープは、風力タービンを長期的に稼働させるために、保守戦略に欠かせないツールになります。
1. 早期に小さな欠陥やピッチングを見つけられる高画質
IPLEX™ G Liteビデオスコープは高解像度画像とインテリジェントな照明を備えているため、ギラつきを抑えた鮮明な画像がコンスタントに得られます。 また、当社のWiDER™画像処理は反射して見にくい暗い箇所を強調します。 これによって、ギアの亀裂や欠けをチェックしたり、軸受のスクラッチング、ピッチング、圧痕、その他の欠陥を検査したりできるようになります。
高速ステージ軸受 | 損傷のある遊星ギア | ギアの歯 |
ギアボックスを検査するタイミング:ビデオスコープを使用した新しいギアボックスの検査では、基準を定めて、その元の状態を記録することをお勧めします。 稼働後1年経ってからもう一度検査すれば、劣化を正しくモニタリングできます。 新しいギアボックスはギアの歯やころ軸受にまったく傷がない状態ですが、すべての可動部品は稼働中に徐々に劣化します。 風の弱い季節に通常の定期検査を行うことも、保全計画に役立ちます。
後ほど(下の「5」を参照)、ビデオスコープを使用してギアボックスの状態モニタリング記録を長期保存する際に役立つ、いくつかの便利なソフトウェア機能を紹介します。
2. さまざまなサイズの部品やスペースに適した楽に交換可能な各種径の異なるスコープ
ギアの歯はギアボックス部品の中では比較的大きいため、状態がよく見えるように、明るい照明の付いた6 mm径または8 mm径のスコープを使用する必要があります。 初期のマイクロピッチングなどの小さな欠陥を検出するには、5 mm以下の短焦点観察が非常に重要になります。
その一方で、一部のギアボックスではころと溝の間の隙間が狭いため、ころ軸受の検査に4 mm径のスコープが必要です。 この狭いスペースで軸受のころと溝の表面を詳細に観察するには、表面から3 mmの距離で倍率15倍以上の短焦点光学性能が必要です。
IPLEX G Lite風力タービン検査キットには、高性能イメージング機能を提供する4 mm径と6 mm径のスコープが付属しており、ギアの歯と軸受の検査で高画質の詳細画像を取得するのに役立ちます。
3. オイルクリアリングスコープ先端部のアダプターと反応のよい先端湾曲部で、ギアボックス内の狭い油性環境をナビゲート
ギアボックス内はギアオイルが至るところにあり、ビデオスコープレンズに付着すると画像が不鮮明になります。 検査員が行うギアボックス検査の半分が、スコープレンズのクリーニングと再配置に費やされる場合があります。 オリンパスは、毛細管作用によりレンズから余分なギアオイルを取り除く光学アダプターを開発しました。 そのクリアな画像を実際にご覧ください。
オイルクリアリングアダプターなしの場合(左)とオイルクリアリングアダプターありの場合(右)のギアボックス軸受検査
ギアボックス挿入先端部:ガイドチューブやその他のアクセサリーを使用すると、この複雑な挿入作業が簡単になります。
- しなやかで丈夫なFlex-and-Stayガイドチューブは、オイルだらけのギアボックス部品との接触を避けながら、遊星キャリア、低速(LS)、中速シャフト(IMS)、高速(HS)の各軸受に到達できます。
- また、TrueFeel™湾曲部などの反応性の高いスコープ先端操作を支えて、ターゲットにすばやく効率的に近づき、リモートコントロールを使ってレンズを正確に向けることができます。
- ギアボックス内の設計を把握している場合は、繰り返し行う検査用にあらかじめ成形された銅製またはプラスチック製チューブを使用するのも便利です。
- 湾曲アームと磁気ベースの付いた汎用三脚をすぐそばに取り付ければ、挿入管とコントローラーの操作中にガイドチューブを固定できます。
- ワイヤーの一端をガイドチューブに装着し、もう一方の端をギアボックスの外側に掛けておくことをお勧めします。こうすれば、誤ってチューブを落とした場合でも、足場からナセルの下部に落ちません。
IPLEX G Lite風力発電タービン検査キットには、効率的で正確なギアボックス検査に必要なすべてのものが含まれています。オイルクリアリング先端部、丈夫なスリーブセット、しなやかで丈夫なガイドチューブがあります。
4. タワー上の検査需要に耐えられる丈夫さと超小型設計
IPLEX G Liteビデオスコープは、小型でバッテリー式です。質量は1.15 kg(2.5ポンド)しかありません。 この携帯性によって、風力タービンのナセル内部の狭いスペースで効率的に作業できます。 本体は防塵防水性能があり、1.2 m(4フィート)の耐落下性および耐振動性を備えています。 誤って落とすこともオイルだらけの箇所も問題ではありません。
ビデオスコープのケースは丈夫でスマートなつくりになっています。 ビデオスコープを風力発電タワーに携帯する場合も輸送する場合も、必要なすべてのアイテムをケースに収めることができ、一般の輸送会社を使って送れるほど強度がしっかりとしています。 風力タービンの作業用リフトに乗せたり、ナセル胴体部ハッチから引き上げたりするにも丁度いい小ささです。
5. 検査データを効果的に管理
風力タービンオペレーターにとってのビデオスコープの真の価値は、定期検査で明らかになる内容です。リモートシステムや状態監視システム(CMS)データの単なる補足手段にとどまりません。
リモート監視システムは最大30日前にギアボックスの故障を予測できますが、ギアボックスの修理は最大で5カ月以上も遅れることがあります。 ビデオスコープを使用して定期検査を実施し、部品の画像を撮って長期的に比較することで、時間と費用の節約になります。 撮影した画像は、特定個所の劣化や欠陥を早い段階で特定するのに役立ちます。 オペレーターはこのデータを使用して、保全活動や部品交換計画を指示できます。
ギアボックス検査のデータを整理するには、IPLEXビデオスコープに付属のPCソフトウェアであるInHelp™検査支援ソフトウェアの機能で、以下のようにプロセスを合理化できます。
画像取得時にギアボックス内の部品の位置を特定
ビデオスコープで撮影した複数の近接画像では、ギアの歯と軸受がどれも同じように見えがちです。 標準的な2 MWの風力タービンギアボックスの場合、検査対象として20個の軸受のほか、複数の歯を持つギアが9個あります。 検査中にメモを取る必要をなくすため、オリンパスは画期的なシステムを編み出しました。 InHelpソフトウェアを使用すれば、ギアと軸受の位置ごとに画像フォルダーをSDカード上に用意するだけで済みます。 標準的な風力ギアボックス用のフォルダーセットの例を以下に示します。
検査を進めながら、画像を撮るときにアクティブフォルダーを変更します。 画像はアクティブフォルダーに保存され、「フォルダー名_5桁の番号.jpg」という画像ファイル名が割り当てられます。 このようにして、検査を終えるときには画像がきちんと整理されています。 完成した検査画像データセットはハードドライブやサーバーにコピーできます。
レポートを作成する場合、すべての画像を開かなくても、それぞれの位置を簡単に識別できます。 画像ファイルをマネージャーや協力会社に送信する場合、劣化や欠陥の可能性がある箇所をファイル名で明確に示せます。
取得した画像に検査員による分析を追加
IPLEX G Liteビデオスコープの「ファイルマーク」機能を使用すると、コメントと評価情報を3ステップで画像ファイルに保存できます。
- 画像を正しい場所に保存するようにフォルダーの場所を確認または変更します。
- 確認しやすい5つのレベルマークを使用して、検査評価を追加します。
- メモとレポート作成目的のプリセット選択肢から選んだコメントを追加します。
レポート作成ツールでレポートに簡単に画像を挿入
オリンパスのInHelpソフトウェアは、検査レポートの作成を楽にします。 当初は画像と欠陥測定値をPCで表示するために設計されたInHelpソフトウェアですが、新たにIPLEXビデオスコープからの画像のワイヤレスダウンロード(ワイヤレスSDカードを使用)や検査レポート作成などの機能が追加されました。
「下層ファイル表示」機能を使用すると、複数のフォルダー内にあるすべてのサムネイル画像が表示され、検査時に付けたマーク(ファイルマーク機能を使用)に沿って画像がソートされます。 ビデオスコープレポートに画像を追加したければ、チェックマークを付けるだけです。 カスタマイズしたレポートテンプレートを使用すると、チェックマークを付けた画像を含むレポートを作成できます。
InHelp Viewerソフトウェアは、Olympus IMSウェブサイトから無料でダウンロードできます。 カスタマイズテンプレートの作成でお困りの際は、お気軽にご連絡ください。
次回のブログ:ビデオスコープを使用した風力タービンギアボックスの検査の基本について説明します。 風力発電所のオーナーやオペレーターの方向けに、ボアスコープのトレーニングプログラムの手引きも記載します。
ご期待ください。