MXU 5.10ソフトウェアのリリースにより、OmniScan™ X3 64探傷器には新しい高度な超音波探傷法、位相コヒーレンスイメージング(PCI)が組み込まれます。 OmniScan X3 64ユニットを更新することですぐにPCIを利用でき、かつてない鮮明さと感度で小さい欠陥をとらえる、ライブトータルフォーカシングメソッド(TFM)画像を取得可能です。
PCIの仕組みと他の超音波探傷法との違い
PCIは振幅フリーの手法です。 信号処理は、TFM画像の生成に使用される基本A-スキャンの位相情報のみに基づいて行われます。
仕組みは以下のとおりです。
- まず、取得したA-スキャンが標準化されます。
- 次に、各A-スキャンの位相分布が、TFMゾーン内の各位置と比較されます。
- 特定の位置について、A-スキャン間のコヒーレンス度が高いほど、その位置の信号応答が強くなります(最大100%)。
- 欠陥からの反射と回折がコヒーレント応答となり、高周波数のバックグラウンドノイズから取得された信号のインコヒーレント応答と比較されます。 これによって、特にノイズの多い材料や減衰材料での小さい欠陥の識別が、非常に簡単になります。
当社試験において、PCIは溶接部検査などの一般的な使用例での結果が向上したほか、多くの難しい用途でも優れた結果を示すことが証明されました。 以下に、この新しい検査方法を非常に強化する5つの特長について説明します。
1. 信号位相情報を使用したライブ2D画像
超音波探傷(UT)ユーザーは、信号位相情報を活用して、伝播時間回折法(TOFD)などの手法で欠陥の識別やサイジングを行うことに慣れているかもしれません。 このような手法が効果的なのは、フェーズドアレイ(PA)手法では応答が貧弱な、非常に小さな欠陥や一方向への欠陥を識別する場合です。
つまり、TOFDには次の2つの短所があります。
- 複数のインデックス位置をスキャンしないと、インデックス軸で欠陥を見つけられない。
- 位相変化を視覚的に識別して欠陥をサイジングするために、振幅は依然として必要である。
PCIは、方向性が不十分であったり非常に小さかったりする欠陥(高温水素侵食(HTHA)など)の識別に優れた手法で、TOFDに関連する問題が回避されます。 TFMでは容積データが取得されるため、欠陥はあらゆる方向に配置およびサイジングされる可能性があります。 また、PCIモードを使用した最終画像は、振幅にはまったく依存していません。
複数のインデックスポイントでスキャンする必要がなくなるので、分析が楽になります。 また、OmniScan X3 64探傷器のPCIではライブ画像が生成されるため、収集後の処理用に完全な生データは必要ありません。
2. 信号が飽和することがない
振幅ベースの手法の課題の1つが、信号飽和です。 設定時に校正とゲイン調整を行っても、特定の反射源によって信号が飽和する可能性があります。 これは、校正ブロックの横穴(SDH)やその他の既知の反射源と比較した、反射源のサイズ、種類、または方向によるものです。
PCIは各基本A-スキャンの位相における統計的分散のコヒーレンスに基づいているため、すべてのA-スキャン間のコヒーレンス度が100%を超えることはありません。 基本A-スキャンの信号が飽和した場合でも、位相情報のみが考慮され、アクセス可能なことから、最終的なPCIデータに影響はありません。
スキャンの品質は構成の影響をあまり受けないため、検査の準備が速く簡単になります。 波形セットを選択し、電圧を160 Vpp(ピークピーク電圧)に設定すれば、すべての準備が整います。
3. 既知の反射源に対してゲインを事前調整する必要がない
PCIは完全に振幅フリーの手法です。 つまり、校正ブロックの既知の反射源を使用してゲインを調整する設定ステップが不要になります。 OmniScan X3 64の設定パラメーターで「位相コヒーレンス」モードを選択すると、ゲイン調整が使用不可になっているのがわかります。これは、最終的なPCIデータに振幅が考慮されないためです。
ゲイン調整が必要ないので、高品質画像を生成する設定の作成にかかる時間と労力が大きく削減されます。 見つかった反射源の種類に応じてスキャン間でゲインを再調整する必要もなくなり、データが有効であることを確認するためにTFMスキャンを繰り返すこともありません。
PCI設定のサイジング精度は検証しますが、ノッチサンプルを使用して行います。 ノッチからの端部回折応答のピークを使用すると、欠陥の高さをカーソルで測定できます。
4. より一貫性のある結果とサイジングしやすさ
検査員による構成において、PCI設定は少ないパラメーターで速く簡単に作成できるので、検査間や検査員間の一貫性が高くなります。 スキャン中に信号が飽和することがなく、ゲインが信号に影響を与えることもないため、分析中に結果を変える可能性がある操作は少ないです。
欠陥をサイジングするには、端部回折からホットスポットを見つけて、ホットスポットの最大部にカーソルを置くだけです。 この測定値から欠陥のサイズがわかるので、サイジングのたびに事前調整する必要がありません。 処理は楽で迅速になります。
同じプローブを使用する場合、欠陥サイズは各スキャンで同じになります。
5. 同一対象ゾーンに必要なグループが少ない
スキャンプランのAcoustic Influence Map(AIM)ツールはPCIでも使用します。 従来のTFMに対するPCIの利点は、AIMで表示される信号振幅の変動が無関係な点です。 AIMで試験体内の信号分布が表示される場合、返される振幅が小さくても、PCIの結果は良好です。
これは振幅フリーの性質を持つPCIの副次的効果です。 位相の評価前に信号が標準化されるため、振幅が弱くてもコヒーレンスは評価できます。 さらに重要なことに、TFMゾーン内の欠陥の位置が信号コヒーレンスに与える影響は、振幅よりも小さくなります。
従来のTFMやフェーズドアレイを使用する場合、端部回折がバックグラウンドノイズに紛れてしまうことがよくあります。 それに対してPCIでは、端部回折が強調表示され、従来のTFMやPAでは不確かな場合でもはっきりと見えます。
こうしたすべての要因から、同一対象ゾーンに必要なグループは少なくて済みます。
PCIは振幅ベースの手法ではないため、構成や設定パラメーターを選択する際の方法を変える必要があります。 使い慣れた他のUT手法とは異なります。 推奨されるベストプラクティスに関して役立つ、当社の位相コヒーレンスイメージング(PCI)入門ガイド(ウェブサイトへのテキストリンクを追加予定)をご覧になるか、お近くのEvident販売代理店にデモンストレーションのスケジュールをお問い合わせください。
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