ビデオスコープの使用により、ユーザーはアクセスが困難な場所を目視検査し、機種によっては発見した欠陥のサイズを検査員が計測することもできるようになります。最近の技術の進歩により、離れた位置から計測した場合であっても、計測値の精度が向上しています。
超広角ステレオ
ステレオ計測は、私たちの奥行知覚認識と同じように機能します。私たちの脳は、常に視差(ある画像と別の画像での見え方の変化)に基づいて距離を計算しています。下に示す画像を見ているとき、我々の脳は、たとえ一方の目で見たときと、他方の目で見たときでは対象物が移動しているように見えたとしても、実際は動いていないことを理解しています。この見え方の違いは、距離に反比例します。何かが近くにあればあるほど、両眼それぞれの見え方の違いは劇的に大きくなります。これは、私たちが対象物にどれだけ近いかを、ある画像ともうひとつの画像における対象物の見え方の差の大きさに基づいて直接測定できるということを意味します。
左眼の視差(左)と右目の視差(右)。画像は横方向の違いを示す。
出典:https://slideplayer.com/slide/7323922/ |
ビデオスコープでは、同じ原理を用いて計測を行います。ビデオスコープは脳と両眼の代わりに、撮像ユニットと、プロセッサーおよびスコープ先端の光学アダプターに搭載されたレンズが用いられます。光学アダプターには、一定の距離を保った2つのレンズが搭載されており、視差を利用して対象物の距離を測定します。
ビデオスコープの光学アダプターにおける視差 |
超広角ステレオ
IPLEX® NX ビデオスコープは、より深い観察深度(DOF)と広い視野角(FOV)で、欠陥をより遠くから計測できる、超広角ステレオ計測機能を備えています。旧機種の計測範囲は0.2インチ~1.2インチでしたが、超広角ステレオは0.15インチ~2.3インチまで計測することができます。これらの機能強化の結果、従来と比べて約4倍の範囲の計測が可能になりました。大きな欠陥を計測できる能力も有用ですが、超広角ステレオはもうひとつの重要な利点、すなわちスピードをもたらします。信頼性の高い計測結果を得るためには、ビデオスコープの位置設定に数分間かかります。IPLEX NXビデオスコープは、従来比でほぼ2倍の距離から欠陥を計測できるため、検査員は短時間で計測を行うことができます。
計測結果の正確性に関する課題を解決する
ステレオ計測は、ユーザーによって計測画面上で選択されるピクセルと、ビデオスコープによってもうひとつつの計測画面上で選択されるピクセルの、2つの選択に基づいています。例えば、私があなたから60センチ離れてひもの切れ端を持っているとすると、あなたが測定できるひもの長さの精度は1.3~0.7センチとなります。私があなたから15メートル離れてひもの切れ端を持っていた場合には、あなたが測定できるひもの長さの精度は2.5~5センチまで低下してしまいます。これと同じ基本的な課題が、あらゆる目視計測システムに内在しています。この距離に関する固有の課題を解決するには、2つの方法があります。第1の方法は、1対1マッチングを用いる方法です。当社は高品質レンズを製造していると自負していますが、完璧なレンズを作ることは決してできないでしょう。どうしてもステレオ光学アダプターごとにバラツキが生じてしまいます。使用するビデオスコープに合わせてステレオ光学アダプターを校正することが重要なのは、このためです。校正を行い、バラツキを検出して計測アルゴリズムに組み込むことによって、計測精度が向上します。距離の問題を解決する第2の方法は、正確なマッチングポイントを選択できるようにスコープの能力を改善することです。現在、ビデオスコープ技術は非常に高度であるため、ポイントマッチングの精度はもはやピクセルサイズによる制限を受けることはありません。画素サイズは非常に小さくなってきているため、エアリー円盤や回折像などの量子力学的効果は、むしろステレオ計測画像の中で正しいポイントを認識して選択する能力との関連性が強まっています。スコープの画素が小さいのにCCD上の画像が鮮明でないとすれば、注目したポイントが複数のピクセルにまたがっている可能性があります。画素サイズが驚くほど小型化された今、私たちは、ビデオスコープの計測精度に対するレンズシステムの重要性がさらに増した、ポスト画素数時代にいるといえます。
結論
超広角ステレオ計測と傑出した解像度が実現した今、ビデオスコープを使って、より遠くから、より正確に計測することが可能になりました。このため、検査員は時間を節約することができ、コスト削減につながります。
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