石炭は、燃焼するとエネルギーを放出する黒色の岩石です。 湿地の枯れた古代植物が元となる再生不能資源で、生成されるまでに数百万年かかります。
風力や太陽熱などの再生可能エネルギーが増加してもなお、石炭は世界中で主要なエネルギー源であり続けています。 石炭を燃焼させると、健康や環境への害を防ぐために管理や除去が必要な大気汚染物質、灰、重金属などが放出されます。
例えば、米国環境保護庁(EPA)は、石炭火力発電所の石炭燃焼により生まれる石炭燃焼残渣の安全な廃棄に関して国家規制を行っています。 石炭燃焼残渣は、石炭燃焼生成物、石炭燃焼廃棄物、石炭灰とも呼ばれます。
石炭燃焼残渣の例
石炭燃焼残渣の例としては、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ、排煙脱硫物質があります。 フライアッシュはその名が示すとおり、排煙とともに生じる微粉末物質です。 ボトムアッシュとボイラースラグは、炉底に形成される粗くて重い粒子物質です。
EPAはまた、コンクリート、グラウト、れんが、充填剤など各種の製品や材料について、責任ある石炭灰の再利用とリサイクルを支援しています。 石炭灰の再利用には、以下のような経済面、環境面、製品面の利点があります。
- 天然資源利用の削減
- 温室効果ガス排出量の低減
- 材料の強度、加工性、耐久性の向上
- 高コスト材料(セメント内の粘土、砂、砂利、石灰岩など)の置き換え
- 石炭灰販売による利益増加
- 廃棄の必要性の削減によるコスト節約
さまざまな研究で、石炭フライアッシュを中和剤として使用できることも示されています。 例えば、露天掘り炭鉱で酸性の褐炭堆積物を再利用するためにフライアッシュを使用するアイデアがありました。 堆積物の安定性にとって酸性環境は有害であり、フライアッシュはその石灰含有量の高さから極めて基本的な対策となります。 結果として、中和と再利用に役立ちます。
フライアッシュやその他の石炭燃焼残渣を研究する際、研究者たちはしばしば顕微鏡と産業用画像解析ソフトウェアに頼ります。
ディープラーニング画像セグメンテーションによる石炭灰の解析
顕微鏡を使用した石炭灰解析は、水、セメント、土壌などの他の材料や媒体と接触して生じる化学反応における、フライアッシュの性質と反応の評価に役立ちます。 定量X線回折と組み合わせると、反応のほぼ全体像をつかむことができます。 例えば、低反応の灰はコンクリートの骨材として使用でき、高反応の灰は水硬性結合材として使用できます。
顕微鏡では以下のことが可能です:
- フライアッシュに含まれる反応ガラス相の割合と粒子サイズの判別
- 付加的な鉱物相の識別
- 環境設定における石炭灰の識別
ディープラーニング画像セグメンテーションなどの次世代画像解析ツールによって、石炭灰の解析は以前よりも容易で正確なものになりました。
褐炭フライアッシュの画像解析を例に取ってみましょう(図1)。 この灰のサンプルは、ドイツのライプツィヒ南部にあるCentral German褐炭採掘地域の元Mumsdorf発電所から採取されたものです。 褐炭は人の健康に最も害のある石炭とされています。 世界各国が再生可能エネルギーに切り替える中で、褐炭の炭鉱は閉鎖されつつあります。
サンプルでは、褐炭を燃焼用にひき砕いてから燃焼室に吹き込みました。 多数の異なる灰の微粒子が作られる方法です。 燃焼室から排煙への流速は非常に速く、フライアッシュの微粒子は浮遊したままになります。 褐炭には鉱物も含まれていますが、燃焼プロセスで完全に融解します。 反応度の高いガラス相(画像内の透明な球体)は、こうして融解した液滴から形成されたものです。
褐炭フライアッシュのサンプルには、以下の鉱物相も含まれています。
- マグネタイト:黒色の不透明な球体
- 石英:鉱物片として存在
- 石灰:かなり拡散されているものが多い
褐炭フライアッシュを評価するため、OLYMPUS Stream™画像解析ソフトウェアのTruAI™ディープラーニング技術を使用して、反応ガラス相(透明な球体)とその他の相を識別します。 手動でラベル付けした画像を使ってニューラルネットワークに学習させるだけで、カウントと計測ソリューションが自動解析を行い、融解した液滴と鉱物を明確に区別します。
図1: 輝度や色に頼る従来のしきい値法による画像セグメンテーションとは異なり、TruAI技術によるディープラーニング画像セグメンテーションでは、融解した液滴とその他の鉱物を正しく区別し、検出できます。
ディープラーニング画像セグメンテーションには多くの用途があります。 例えば、上の画像のガラス相は、カプセルまたはイオン交換体(合成樹脂ビーズ)として、または(香料や活性成分などの)運搬材料としてバブルや球体を使用する、多くの化学製品を表すこともできます。
ディープラーニング画像セグメンテーションの詳細やその他の例については、当社のディープラーニング資料をご覧ください。
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