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洞见博客

水浸対物レンズの活用:顕微ラマン分光光度計による食品の評価

作者  -
開封したマーガリンのパック

ブログ「MIX観察によるスクリーニングでラマン分析の作業時間を短縮する」において、当社が提供するMIX観察の優位点を解説いただいた日本分光株式会社では、当社の水浸対物レンズも活用していただいています。今回は、同社で光分析装置を用いたソリューション提案を手掛ける平詠里加氏に、マーガリン製品の違いをラマン分光光度計で測定、および評価する際の対物レンズの活用について解説していただきます。
 

顕微ラマン分光光度計でできること

顕微ラマン分光光度計を用いれば、樹脂やフィルム、電池などの材料から食品、医薬品まで幅広い製品の評価が可能です。イメージング測定を行うことで、どの成分がどこに分布しているのか視覚的に把握できる、ケミカルイメージを作成できます。さらに、その結果をもとに粒径解析を行うことで、製品間の違いをより明確に示すことができます。

今回は、2種のマーガリン類(マーガリン類A、マーガリン類B)の違いを評価しました。マーガリン類は油中に水が分散した構造であり、油と水の分布を把握することは基礎研究や商品開発などに役立ちます。
 

顕微ラマン分光光度計における「水浸対物レンズ」の活用

2種のマーガリン類をそれぞれスライドガラス上に薄く延ばしてカバーガラスで覆い、サンプリングしました。カバーガラスで覆うことにより、試料を容易に顕微鏡レベルで平坦になるよう延展でき、加えて薄い試料の揮発防止が図れます。このようにカバーガラスはサンプリングに適している一方で、顕微観察やラマン測定においては不都合な面もあります。この課題を解決するのが「水浸対物レンズ」です。水浸対物レンズを用いることで、カバーガラス越しの観察や測定における分解能の向上はもちろんのこと、高感度なラマン測定が実現します。

そこで、日本分光のレーザラマン分光光度計 NRS-5500にエビデントの水浸対物レンズ LUMPLFLN60XWを搭載し、サンプリングした2種のマーガリン類をそれぞれイメージング測定しました。

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図2 日本分光のレーザラマン分光光度計 NRS-5500およびエビデントの水浸対物レンズ LUMPLFLN60XW(画像提供︓日本分光株式会社)

図2 日本分光のレーザラマン分光光度計 NRS-5500およびエビデントの水浸対物レンズ LUMPLFLN60XW(画像提供︓日本分光株式会社)
 

測定結果

図3 平均スペクトルの比較

図3 平均スペクトルの比較
 

図3に示した油脂のCH基と、水のOH基の分子振動に帰属されるバンドを利用してケミカルイメージを作成することで、油脂と水それぞれの分布を可視化しました (図4)。マーガリン類AとBの違いは観察画像からも予測できますが、ケミカルイメージを作成することで、どの成分がどこに分布しているのかを可視化できます。マーガリン類AとBはいずれも油の中に水が分散した構造ですが、水粒子のサイズに大きな差があることがわかりました。

そこで水粒子のサイズ分布を可視化するため、日本分光の粒径解析ソフト JASCO Particle Analysis を用いてヒストグラムを作成しました (図4)。JASCO Particle Analysisは日本分光の顕微ラマン分光光度計に追加できる解析機能で、ケミカルイメージの更なる解析に威力を発揮します。水粒子のサイズに対してヒストグラムを作成した結果、水粒子の個数はいずれも150個前後でしたが、マーガリン類Bの方が大きな水粒子を多数含み、水の含有率が高くなっていることがわかりました。そのため、マーガリン類Aに比べるとマーガリン類Bの方が油脂含有率の少ない、ローカロリーな製品であると推定されます。

図4 解析結果

図4 解析結果
 

対物レンズで広がる顕微ラマン測定の可能性

エビデントの水浸対物レンズ LUMPLFLN60XWを使用することにより、特殊なサンプリングを要するマーガリン類のラマン測定を効率良く実施できました。他にも、例えばガラス内部の気泡をラマン測定する場合に検出され得る大気由来の窒素や酸素、二酸化炭素の検出の抑制に、水浸対物レンズが有効です(特許第7397468号)。顕微ラマン分光光度計と水浸対物レンズを組み合わせることで、ラマン分析の適用範囲が拡大することを実感しています。

マーガリン類やガラス内部の気泡以外にも、生クリームやドレッシングなどの食品、日焼け止めやハンドクリームなどの化粧品、塗料や接着剤などの工業材料といった、幅広い分野の研究開発への活用が期待されます。

「エビデントさんには水浸対物レンズ以外にも、長作動対物レンズや近赤外対物レンズ、暗視野対物レンズなど多彩な対物レンズがあり、幅広いラマン分析のアプリケーション提案に繋がっています。対物レンズに関する要望も親身になって聞いてくださり、今後も協業によるビジネス発展を目指していきたいと考えております。」
 

装置設計に組み込む高品質な光学コンポーネントについてもっとお知りになりたい方は、https://www.olympus-lifescience.com/oem-components/をご覧ください。
 

日本分光社についてのより詳しい情報については、www.jasco.co.jp/jpn/product/Raman/index.htmlをご覧ください。

マーケティングスペシャリスト、OEM

2021年よりOEMコンポーネント製品のマーケティング業務に従事

五月 30, 2024
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