分析計内のX線検出器には、X線が検出器に入射、到達できるようにするための小型の測定ウィンドウが付いています。これがないと分析計は機能しません。この測定ウィンドウの材質は重要であり、装置の有効性を左右します。軽元素(マグネシウム、アルミニウム、シリコンなど)が発するX線は弱いため、測定ウィンドウが薄く軽いほど、X線が透過しやすくなります。 X線の透過量が多いほど、蛍光X線分析計の感度がよくなります。
長い間、測定ウィンドウはベリリウム箔で作られていました。ベリリウムは非常に軽量ですが、加工が難しい上、もくろくて壊れやすく、毒性もあります。比較的軽度の衝撃でも測定ウィンドウが損傷する恐れがあり、破損すると取り換える必要があります。ほとんどのベリリウム製測定ウィンドウは8ミクロン以上の厚みがあります。
Vanta™ VMRモデルにはグラフェン製測定ウィンドウが装着されるようになりました。厚さはわずか0.9ミクロンなので、従来のベリリウム製測定ウィンドウよりも軽元素の検出能力が向上しています。
グラフェンの特長
グラフェンは炭素でできており、極薄の測定ウィンドウにも関わらず高い強度があります。グラフェン製測定ウィンドウによってX線の透過量が増加するため、主要な軽合金元素、すなわちマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、さらにはリン(P)と硫黄(S)などに対する感度が高くなっています。また、ベリリウムと違ってグラフェンに毒性はありません。
グラフェンが持つ特性によって、ハンドヘルド蛍光X線分析計VantaのVMRモデルでは以下を実現します。
- アルミニウム合金内のマグネシウム(Mg)検出速度の向上 (3秒のビーム2で0.53%のMg)
- ニッケル合金内のアルミニウム(Al)の検出限界の拡大
- 低合金鋼に含まれる1000 ppm未満のシリコン(Si)を素早く高精度で測定
- 低合金鋼に含まれる0.035%未満のリン(P)と硫黄(S)の測定
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ビデオ: Vanta分析計の革新性とグラフェン製測定ウィンドウ