電気自動車(EVやバッテリー式電気自動車ともいう)への切り換えは、現在急速に伸び続けています。電気自動車は、低排出ガス、優れた燃料節約、低い維持費用といった理由で人気ですが、電池の安全性については依然として懸念が示されています。
EVや多くの携帯用電子機器の電源に使用されるリチウムイオン電池は、製造不良や損傷によって過熱する場合があります。これが電池の引火や、爆発さえ引き起こす可能性があります。これらの危険を回避するため、リチウムイオン電池の安全性に関するさまざまな規格や検査工程が世界中で整備されています。
リチウムイオン電池の安全性確保に役立つ有効な検査ツールに、工業用顕微鏡があります。このブログでは、EV用リチウムイオン電池の検査を支える工業用顕微鏡の、さまざまなソリューションをご紹介します。
リチウムイオン電池の仕組み
簡単に言うと、リチウムイオン電池はリチウムイオンの移動によって電気が生じる充電式バッテリーです。リチウムイオン電池の主な構成要素は、正極、負極、電解液、セパレータの4つです。
- 正極(カソード)は正電極(金属酸化物が一般的)で、リチウムイオンの放出源です。これによって電池の容量と電圧が決まります。
- 負極(アノード)は負電極(黒鉛が一般的)で、正極から来たリチウムを蓄え、放出することによって電気が生じます。
- 電解液は導体として機能し、正極・負極間のリチウムイオンの移動を促進します。
- セパレータ(隔膜など)は正極・負極間の物理的接触を防ぐ薄い膜です。このバリアによって、リチウムイオンが極小穴を通過できる一方で、電子の流れは阻止されます(ショートを回避するために重要)。
リチウムイオン電池が放電するとき、リチウムイオンは負極から正極に移動します。この放電プロセスが、さまざまな機器の作動に必要な電気エネルギーを生みます。機器のプラグを接続すると、充電によってこの移動が反転し、リチウムイオンが正極から負極に移動します。
電池システムは、電池が安全に機能することにかかっています。電池のショートが、火災や爆発などの事故につながる可能性があります。また、製造工程で発生したコンタミネーションや損傷によって、電池の安全性と性能に影響が及ぶ場合もあります。このため、電池製造の全体を通して厳密な検査工程を設けることが重要です。
リチウムイオン電池の安全性と性能を支える検査工程
リチウムイオン電池の製造では、部品の清浄さの確保と欠陥がないことを確認するために、さまざまなチェックが必要です。それには以下の項目があります。
1. 電極板のバリの検査
まず、製造工程で電極のバリをモニタリングすることが重要です。 電極のバリが長すぎると、隔膜を貫通してショートの原因になります。このような危険を防ぐため、電極のバリを慎重にモニタリングし、測定する必要があります。さらに、隔膜の品質は電池の性能に大きく影響する可能性がありますので、隔膜の表面に傷などの欠陥がないかチェックすることも重要です。
工業用顕微鏡はこれらの検査に有効です。当社のDSX1000デジタルマイクロスコープを使用すると、以下のことが可能です。
- 複数の角度からバリを観察して状態をはっきり確認し、あらゆる欠陥の見落としを回避
- バリのサイズを測定
- 微分干渉観察(DIC)により、隔膜に付いた傷などの欠陥をチェック
DSX1000デジタルマイクロスコープを使用した電極板のバリの観察
2. 電池ケースと電極板の検査
電極のコーティングと切断が終了した段階で、電極層の厚さを顕微鏡で測定する必要があります。
DSX1000マイクロスコープには、精密測定のための3Dスキャンおよび測定機能が備わっています。これらの機能を使用すれば、電極板の断面の厚さ、各電極層の厚さ、表面の角度を測定できます。
電極板断面の3D測定
電池ケースと電極板においては、部品に金属コンタミネーションが混入するのを防ぐために工業用清浄度の確認が必要になります。金属繊維によって中間層に穴が開くと、電池がショートするおそれがあります。
OLYMPUS CIX100システムを使用すれば、リチウムイオン電池のケースと電極板の清浄度をリアルタイムで検査できます。個々のコンタミネーション粒子の分類とサイズ測定を行いながら、高速で画像を取得します。1回のスキャンで反射粒子(金属)と非反射粒子が検出されるので、金属繊維の有無を迅速に判断できます。
検査後にボタンをクリックすれば、規格に準拠したレポートが作成されます。 事前に校正されたシステム、機械的安定性、自動制御のおかげで、検査結果は正確で再現性があります。
OLYMPUS CIX100コンタミネーション解析システム
OLYMPUS CIX100システムを使用した繊維の清浄度検査例
リチウムイオン電池の安全性を支える顕微鏡やその他のツール
上記の事例では、リチウムイオン電池製造においてデジタルマイクロスコープと工業用清浄度検査システムが果たす重要な役割について説明しました。 レーザー走査型顕微鏡やハンドヘルドXRF分析計などの工業用ツールも、リチウムイオン電池製造時の検査と品質管理に役立ちます。
詳しくは、リチウムイオン電池製造向けソリューションに関する当社の資料をご覧ください。
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