ハンドヘルドXRFを使用して合金試料を検査していると、グレードマッチングなしの判定が出る場合があります。 このXRFユーザーガイドでは、合金グレードマッチングなしの原因を確認して、修正方法を示し、合金試料に適したグレードマッチングを得る方法を紹介します。
ハンドヘルドXRF分析計で合金グレードマッチングなしを生じる原因
このガイドでは、例としてニッケル合金Monel K500試料をVanta™ハンドヘルドXRF分析計で検査しました。 この合金に対して、「no grade to compare(グレードマッチングなし)」というメッセージがユーザーインターフェースに表示されました。 原因をよく理解するため、XRF検査の化学分析結果から何がわかるか見てみましょう。
グレードマッチングなしの判定が示されたVanta XRFの分析結果
この試料にはニッケル(Ni)が75%と示されており、検査対象がニッケル合金であることがはっきりとわかります。 なぜマッチングが得られないのでしょうか。 マッチングなしの最もよくある原因は汚染です。 試料が塗装、めっき、コーティングされている場合です。 しかし、今回の試料に汚染の問題はなさそうです。
ニッケル合金Monel K500試料
まれに、合金グレードがVantaグレードライブラリー内に含まれていない場合にも、「グレードマッチングなし」のメッセージが現れる可能性があります。 これを確認するには、Vanta画面下部のグレードマッチングアイコン(下図で赤く囲まれています)を押します。
グレードマッチングアイコンが赤く囲まれているVanta XRF分析結果
ライブラリーセクションまで下にスクロールして(下図で赤く囲まれています)、ライブラリーを選択し、有効なライブラリーに含まれる合金のリストを開きます。
[Grade Match]メニューの[Libraries]セクション
[Grade Libraries]メニューの[Common]ライブラリーが選択されています
今回の試料であるMonel K500が、選択した[Common]ライブラリーに既に含まれていることがわかります。
Monel K500はVanta分析計の[Common]ライブラリーに含まれています
対象材料がわかっている場合は、試料が規格外となる原因を確認するために、そのグレードを試料の比較対象としてライブラリーに追加することをお勧めします。 ライブラリーへの試料の追加方法は、下のビデオチュートリアルをご覧ください。
XRFで正しい合金グレードマッチングを得る他のヒント
汚染の可能性を除外し、グレードライブラリーに試料が含まれていることを確認しましたが、正しい合金グレードマッチングを得るために、他に何ができるでしょうか。
[Grade Match]画面に戻りましょう。 上部に「Show match No <4(表示マッチング数値<4)」と表示されています。 マッチング数値は、試料の化学分析結果とグレード規格値に関する一致度の指標です。 値1は高い一致度を示すのに対して、値10はグレード規格値との一致度が低いことを示します。 必要に応じてこの値を編集することで、検査対象材料のばらつきを許容できます。
[Show match No <]が4に設定された[Grade Match]画面
マッチング数値を6に高めると、より多くのグレードマッチングが表示されます。 ニッケル合金試料をもう一度検査してみましょう。
[Show match No <]が6に設定された[Grade Match]画面
分析計は、この試料をMonel K500として正常に判定しました。
Monel K500と示されたVanta XRFの判定結果
試料名の下に、試料のマッチング数値が5.0と示されていることにも注目してください(上図で赤く囲まれています)。 最初の設定では、マッチング数値を<4に指定していたため、Vanta 分析計は比較するグレードマッチングがない、というメッセージを示しました。 マッチング数値を<6に高めると、合金を表示することができました。
化学分析結果を見てみると、ニッケル(Ni)と銅(Cu)の値が赤く囲まれているのがわかります。これらの値がMonel K500のグレードライブラリーに指定された範囲外にあることを示しています。 マッチング数値が高くなり、最初の検査でグレードマッチングがない、というメッセージが表示されたのは、これが原因です。材料は規格外なのです。
NiとCuがMonel K500の規格外であることを示すVanta XRFの分析結果
赤く囲まれていることで、合金が規格外と判定された原因の元素がすぐにわかり、対処するために必要な変更を行えます。 最初はグレードマッチングが表示されていたにもかかわらず、検査の終了時にグレードマッチングなしが表示される場合もあります。 測定精度が高くなるにつれて、規格外となったものに大きなマッチング数値を科すためで、マッチングなしが表示されることになります。
マッチングなしに関するトラブルシューティングガイドが、お役に立つことを願っています。 このプロセスについてのビデオもご覧ください。