水冷プレートは、内面を流れる液体の摩擦によって熱を放散する熱交換器です。 通常、空冷では冷却が不十分な極めて高い熱を生成する超高出力の構成部品に使用します。 例えば、発電産業では静止型無効電力発生装置(SVG)に使用しているほか、自動車産業では電気自動車のバッテリーに、IT産業では大型サーバーの収納部に使用しています。
水冷プレートの効果は、液体の熱伝導エリアと摩擦力に左右されます。 空冷とは異なり、水冷には液体が循環するための水路が必要です。 この水路は、液体が漏れて電気機器のショートを引き起こさように、完全に密封する必要があります。
軽合金の融接と摩擦攪拌接合の比較
通常、水冷プレートはアルミニウム合金を使用して製造されます。 アルミニウム合金は溶接性に乏しいため、従来の融接で水冷プレートを密封すると、溶接部に熱亀裂、ポロシティ、スラグなどの欠陥が発生しやすくなります。 溶接工には、高品質な溶接を行うための優れた融接スキルおよび技量が求められます。 融接作業に伴う高温と有毒ガスは、溶接工の健康を害する恐れがあります。 回転具の摩擦熱で2つの境界面を溶接する摩擦攪拌接合(FSW)は、こうした問題に効果的な解決策です。
融接と比較したFSWの主な特長は、以下のとおりです。
- 溶接ひずみが小さい
- 溶接された金属の機械的特性が優れている
- 溶加材の必要がない
- 作業環境が清潔で安全
- 作業が容易
- 酸化スケールが自動的に除去される
- 自動ロボット溶接にツールを簡単に組み込める
- 亀裂しやすい軽合金に効果が高い
摩擦攪拌接合の弱点とフェーズドアレイソリューション
たくさんの特長があるFSWですが、弱点もいくつかあります。 FSWを水冷プレートに使用すると、カバープレートとベースプレートの継ぎ目に機械的欠陥が発生する場合があります。 通常、回転具の摩擦点付近で発生し、ポロシティと呼ばれる小さな空洞として現れます。 ほぼ一続きの形状になる傾向がありますが、簡単には検出できません。
水冷プレートの摩擦攪拌接合部のスキャンに使用されるオリンパスPAプローブ10L64-FSWと給水ウェッジSFSW-N45S-WHC(左)、校正ブロックと赤色の線で示された対象部分(右)
超音波フェーズドアレイ検査(PAUT)法では、FSWの小さな欠陥を検出できます。 ここに示すソリューションは、OmniScan™ MX2探傷器と、摩擦攪拌接合検査用に最適化されたオリンパス製プローブおよびウェッジです。 OmniScan SXフェーズドアレイ探傷器でも、同じプローブおよびウェッジとともに使用して同様の結果を得ることができます。
1素子ステップで同時に8素子、合計64素子のパルスを発信し、45度の横波を生成するリニアスキャン用に構成された、OmniScan™ MX2探傷器とPAプローブ
結果の解明:フェーズドアレイイメージングデータの分析
以下は、OmniPC™ソフトウェアを使った検査分析のスクリーンショットで、校正ブロックのスキャン結果を示しています。 表面付近のポロシティだけでなく、縦方向の接合部の融合不良も明らかで、正しく溶接されていません。
校正ブロックの反対側からの検査では、欠陥が見られない、きれいに溶接された融合面と、尖った角の形状が示されています。
実際の水冷プレート試験体に対する検査結果を以下に示します。 摩擦攪拌接合部の両側に欠陥があり、試験体の長さ全体にわたっています。
FSWの融合不良とポロシティをわかりやすくイメージング
摩擦攪拌接合専用のプローブおよびウェッジと組み合わせて、超音波フェーズドアレイ技法を使用すれば、水冷プレートの接合面にある目に見えるポロシティと見えない融合不良をはっきりと検出できます。 OmniScan MX2(またはOmniScan SX)探傷器で得られるスキャン画像とさまざまなデータ表示は、わかりやすく、試験体の実際の状態を反映しています。
OmniScan MX2(左)およびOmniScan SX(右)フェーズドアレイ探傷器