近年、飛行ロボット(ドローン)と超音波厚さ計の統合によって、石油・ガスなどさまざまな産業における非破壊検査(NDT)プロセスが変わってきています。この分野の構造物や機器の検査では高所での作業が多く、作業員の安全性にとって重大なリスクとなります。
超音波厚さ計を装備したドローン(超音波探傷(UT)ドローン)は、人間が直接検査を行う必要をなくして安全な代替手法となります。ドローンは高架構造物にアクセスして検査できるので、落下、スリップ、その他の高所作業に関する事故のリスクが減ります。
ドローンは高所でのNDT作業中の安全性を大いに向上しました。
このブログでは、UTドローンの1種、係留式ドローンについて探っていきます。係留式ドローンは、地上の電源に物理的に接続されているタイプのドローンです。係留式ドローンが資産所有者や検査サービス供給業者(ISP)にもたらす利点について、詳しく見ていきましょう。
ドローンによる詳細な超音波厚さ測定の実施
カナダのブリティッシュコロンビア州バーナビーを拠点とするテクノロジー企業、Avestec Technologies Inc.は、各種産業の資産をリモートからNDT検査するインテリジェント飛行ロボットのリーダープロバイダーです。主に石油・ガス産業で陸上・海上ともに活動し、厚さ測定と腐食検査に重点を置いています。 |
同社のSKYRON UTは、Evidentの38DL PLUS™超音波厚さ計を備えた係留式ドローンで、ISPと資産所有者、どちらにとっても検査の安全性と正確性の向上に役立ちます。通常の石油・ガスインフラの検査では、作業員の安全を確保するために一時的に運転を停止します。この停止期間は企業にとってかなりの財務的損失になります。SKYRON UTを使用する場合、セットアップは短時間で済みます。検査は1日で完了でき、運転停止が必要になることはまれなので、停止期間を最小限にしつつ生産性は最大化します。
重さ約7 kg(15 lbs)、全長80 cm(31.5インチ)のSKYRON UTは、狭い空間や煙突など複雑な構造物や環境で詳細な検査を実施でき、過酷な気象条件にも対応可能です。SKYRON UTを使用するために、まず埃、破片、さびをクリーニングして表面を整えます。次に±90°回転するロボットアームと電磁ヒンジ機構で、垂直、水平、鋭角、曲面(エルボーやパイプなど)に取り付いて、接触ベースの検査を行います。これで測定のための安定したプラットフォームとなります。
SKYRON UTは狭い空間などの複雑な環境で稼働します。
リモートUTセンサー構成のおかげもあり、SKYRON UTは25グリッド、2 × 2インチウィンドウで表面スキャンを実行できます。データは低遅延でリアルタイムに収集され、結果が地上ステーションに送られると、自動レポート生成機能によって即座に分析可能です。このように検査結果にすぐアクセスできることで、意思決定が迅速になり、必要な保守・修理を遅延なく実施できます。
38DL PLUS厚さ計を装備したSKYRON係留式ドローンの使用には、明らかな利点があります。一定した電力供給により飛行時間に制限がありません。このことは、バッテリーを使った操作が実際的でないか非効率である多くのプロジェクトにとって極めて重要です。一定した電力供給は、より高い最大積載量も可能にするので、各種センサーパッケージ(先進的なNDT、PAUT、ガスセンサーなど)とロボット機能を一体化できます。
SKYRON UT係留式ドローンは多用途に対応し、さまざまなセンサーや機能との統合を容易にします。安全に操作でき、飛び去ることがありません(カナダの規制では、係留式ドローンは安全を重要視していることから、操作に特別な認可証は必要ありません)。また、重要インフラの正確な接触ベースの検査も確実に行えます。
SKYRON UTは構造物の近くで操作可能なので、精度の高い厚さ測定と腐食検査が行われます。ドローンは到達しにくい場所や安全でない環境へのアクセスと作業が可能なことから、狭い空間、煙突、広い温度範囲、見通し外検査での困難な用途に対する強みとなります。
係留式UTドローン用の信頼できる厚さ計の選択
では、Avestecが38DL PLUS厚さ計をドローンへの搭載用に選んだのはなぜでしょうか。業界での装置の信頼性は重要で、38DL PLUS厚さ計はNDT業界では広く採用され、認識されています。得られる測定結果は信頼性が高く正確です。使いやすく直感的で、ユーザーから高い評価を得ています。その上、小型・軽量でドローン検査に適しています。さらに有利な点は、Evidentが提供するカスタマーサービスとパートナーシップ提携です。
38DL PLUS厚さ計をドローンに搭載するにあたり、Avestecはカスタマイズ作業を行い、使用しない部品や機能を取り除きました。また、Avesoft™という専用の通信インターフェースも開発しました。このインターフェースは、38DL PLUS厚さ計の遠隔制御を可能にします。
UTドローンの操作:SKYRON UTの使用に必要なスキルとは
SKYRON UTの操作には検査員とパイロットの2人が必要です。トレーニングも必要で、Avestecではパイロット用のオンラインおよび対面のトレーニングを用意しています。一般に、SKYRON UTを使用する検査員はレベルIIです。必要なスキルはサービス企業や資産所有者が定めることもできます。SKYRONの操作はほとんどの資産所有者によって検証され、海上・陸上産業に関する多くの安全リスク管理アドバイザーから認定されています。
係留式UTドローンがコスト節約と資産管理の改善を推進
石油・ガス産業で超音波厚さ計搭載の係留式ドローンを使用すると、費用と時間が大いに節約され、資産管理が改善されます。運転を停止せずに検査が実施可能なので、停止期間に関する収益源が削減されます。さらに、ドローンが提供する正確な評価によって、先行的な保全や的を絞った修理が可能になり、費用のかかる故障や計画外の運転停止を避けられます。
潜在的な問題を初期段階に識別することで、資源のより効率的な割り振りや、検査結果の重大度に応じた保守作業の優先順位付けが可能です。こうした資産管理への先行的な方法は、運用コストの最適化、機器の信頼性の向上、業界規制の準拠に役立ちます。
厚さ計付きのSKYRON係留式ドローンは、費用と時間の両面で節約になります。
係留式UTドローン検査の重要なこと
超音波厚さ計を搭載した係留式ドローンが、高所での作業が重大なリスクとなる石油・ガス産業において特に有益であることがわかりました。この先進技術を用いることで、資産所有者とISPは安全上の危険の低減、検査効率の向上、資産管理の改善がかないます。UTドローンにより収集される正確なリアルタイムのデータのおかげで、情報に基づく意思決定、停止期間の低減、保守労力の最適化が可能になります。
石油・ガス産業が安全で効率的かつ費用効果の高い業務を優先し続けるのに伴って、係留式UTドローンは重要インフラの完全性と生産性を確保するため重要な役割を果たしています。