超音波厚さ計と探傷器の違いは何でしょうか。 この問いは、2つの機器がいくつかの点で似ているため、用途に合った非破壊検査(NDT)ツールを決定する際によく尋ねられます。
このブログでは、二者の重要な類似点、相違点、特長について検証し、作業に最適な装置を選択できるようにします。
超音波厚さ計と探傷器の類似点
超音波厚さ計と探傷器は、基本的に同じ概念に基づいています。 どちらも音波を生成する探触子を使用して、音波が探触子から出て材料内を通過し、反射源に当たって探触子に戻るまでの時間を測定します。
探触子から発せられた音波が試験体内を通過し、内面または半対面で反射して戻ります。
どちらも次の基本方程式を用います。
距離 =
速度 × 時間
2
方程式が2で割られているのは、反射源までの片道時間のみが必要だからです。
高周波数音波の反射および透過(超音波と呼ばれます)は長年、構造物用金属、パイプ、タンク、ボイラー管、鉄道の線路や車軸、航空宇宙用複合材料など、多様な産業用途での検査や、溶接部の完全性評価にとって重要な技法であり続けています。
産業用超音波探傷器は、以下の理由で人気を保っています。
- 迅速で費用対効果と信頼性が高い
- 通常、カプラントで湿らす以外に試験体を準備する必要がない
- 使用に際して特別な安全上の問題や規制許可の必要性がない
ある用途に対する超音波厚さ計または探傷器の選択は、測定の主な目的に大きく左右されます。 これらの機器の主な違いについて見ていく前に、これまでの使用について簡単に振り返ってみましょう。
超音波機器の歴史
超音波検査機器は60年以上にわたり、さまざまな産業用途で使用されています。 初期の超音波機器は1940年代にリリースされ、大部分は主に探傷に特化したものでした。
最初のデジタル厚さ計(「D Meter」とも呼ばれる)は1960年代にリリースされました。 しかし、1980年代までは、探傷器で厚さを測定する方が好まれていました。その頃、デジタル厚さ計に内蔵波形(A-スキャンなど)を表示する機能が搭載されました。 厚さ計上に波形が視覚的に表示されることで、ユーザーは対応するデジタル測定値をリアルタイムで確認できるため、結果に確信を持てるようになりました。
A-スキャン波形を表示するオリンパス38DL PLUS™超音波厚さ計
現在、こうした小型で高性能な機器には波形表示が標準装備されるか、ソフトウェアオプションとして提供されています。 厚さ計と探傷器に現在装備されている機能の詳細と特長について説明していきます。
超音波厚さ計とは何か
超音波厚さ測定を行う検査員
超音波厚さ計は、試験体の片側から材料の厚さを正確に測定し、表面の腐食や浸食を検出します。 ほとんどの一般的な工業用材料(金属、プラスチック、複合材料、グラスファイバー、セラミック、ガラス)を測定可能です。
超音波厚さ計が製造時の品質管理のために厚さを測定できる対象製品は多岐にわたり、医療業界で使用されるプラスチックチューブや部品などがあります。 航空機のタービンブレードの摩耗や、パイプやタンクの稼働中の腐食など、重要な部品やインフラの構造的完全性の検査にも使用されます。 超音波厚さ計の仕組みと使用方法の詳細については、当社の超音波厚さ測定チュートリアルをご覧ください。
超音波厚さ計の特長
オリンパス超音波厚さ計の主な特長は以下のとおりです。
- 一貫性があり正確なToF(Time-of-Flight:伝搬時間)測定。 垂直探傷では、材料の背面までのToFを測定します。これは材料全体の厚さに相当します。
- 小型で低価格
- 校正と操作が容易
- 特殊機能や固有の用途に対応するソフトウェア(ボイラー管、高温、塗装またはコーティングされた材料の測定を含む)
- 測定の特長としては以下があります。
- 自動ゼロ点校正:より精密なゼロオフセット測定が可能。これによってToF測定の精度が向上します。
- V-パス補正:二振動子型探触子を使用した腐食測定における角度のあるビーム路程を補正して、広い厚さ範囲に対して高度な精度と再現性をもたらします。 一般的な探傷器のほとんどは、この角度のあるビーム路程の補正を行いません。
- 自動プローブ認識:二振動子型探触子D79Xシリーズは自動認識ピン内蔵で、厚さ計が探触子を認識できるようになっています。最適な設定とレシーバーゲインが呼び出されるのでユーザー操作が簡単で、事前に呼び出した探触子のV-パス補正も適用されます。
- 検出アルゴリズムとデジタル信号処理(DSP):ゲインまたは信号振幅が変動しても校正された精度が維持されます。
超音波探傷器とは
工場出荷時設定で超音波探傷を行う検査員
超音波探傷器は、さまざまな材料や溶接された継手の亀裂、ボイド、ポロシティ、剥離などの不連続部を検出し、サイジングするように設計されています。 探傷は、あらゆる標準的な工業用材料に対して実施できます。 ほとんどの検査は鉄鋼などの構造物用金属に関するものですが、探傷器はプラスチック、複合材料、グラスファイバー、セラミックに対しても使用できます。
探傷器は材料の厚さをかなり正確に測定する能力もありますが、精密な厚さの測定用には設計されていません。 詳細は、超音波探傷チュートリアルをご覧ください。
超音波探傷器の特長
オリンパス超音波探傷器の主な特長は以下のとおりです。
- 多用途に対応:
- 垂直探傷では欠陥またはボイドまでを測定して、材料の表面から欠陥までの距離を割り出します。
- 溶接部の完全性を確認するための斜角検査
- スキャン用途に最適(厚さ計の更新速度が25~30 Hzであるのに対して、高速の60 Hzの更新速度)
- 欠陥サイジング用の特殊なソフトウェアを内蔵:
- 距離振幅補正(DAC)
- 時間補正ゲイン(TVG)
- 距離ゲインサイジング(DGS)
探傷器または厚さ計を選択する際の推奨事項
最適な機器の決定は、用途と測定対象が要となります。 再現性のある精度と腐食厚さ測定値のみを必要とする用途の場合は、厚さ計が推奨されます。 欠陥やボイドの検出、溶接部の確認、および厚さの測定を行う必要がある場合は、探傷器を選択するとよいでしょう。
オリンパスでは、お客様の用途と材料測定ニーズに合わせるために、非破壊式のデジタルおよびポータブル超音波探傷器と厚さ計を多彩なラインアップで用意しています。
当社の超音波厚さ計は以下のとおりです。
- 27MG厚さ計:腐食厚さ測定用の最も手頃な価格の小型設計
- 45MG厚さ計:精密厚さ測定機能(一振動子型ソフトウェアオプションを使用)とオンボードレポート作成用の英数字データロガー(オプション)が内蔵された、腐食厚さ測定用の上位機器
- 38DL PLUS™厚さ計:精密厚さ測定用の上位機器。 多層ソフトウェアオプションにより、最大4つの個別層を同時に表示できます。 この機器を38-Link™アダプターとペアリングすると、ワイヤレスデータ転送とOlympus Scientific Cloud™(OSC)への接続が可能になります。
当社の超音波探傷器は以下のとおりです。
- EPOCH™ 650探傷器:大型画面、内蔵データロガー、レポート作成機能を備えた上位探傷器。 この探傷器はほぼすべての検査環境で使用できます(極度な屋外や危険な条件下ではベンチトップ検査を行います)。
- EPOCH 6LT探傷器:高所での作業やロープアクセス検査が必要な場合に片手操作が可能な、最もポータブル性のある軽量探傷器。 オプションのワイヤレスLAN接続を使用すると、OSCに接続できます。 腐食検査モジュールも用意されており、腐食厚さ計の最も重要な機能と探傷器の機能が結合されています。