超音波ドローン検査でNDTの安全性を新たな高みへ

作者 Betsy Kenaston - 2021年 4月 29日

高所における一般的な非破壊検査（NDT）方法としては、構造物の表面を検査するための足場、高所作業台、ロープが挙げられますが、これらの方法は危険を伴い、時間と費用もかかりがちです。

もっと安全な方法があります。ロボット工学が進化し続け、作業方法を革命的に変えた結果、答えは空中の最新テクノロジーに見つけることができます。超音波ドローンです。

高所で作業するNDT専門家にとってのドローン検査の利点

無人航空システム（一般にドローンとして知られる）は、さまざまな業界のNDT専門家にユニークな空中からの視点を提供しています。この視点から、操縦者の安全を損なわずに、離れた場所や近づけない場所に簡単にアクセスできるようになります。 NDT専門家はドローンを使用することで、運用コストを削減し、安全性のリスクを最小限に保ちながら、迅速かつ正確に検査を実行できます。

ドローンを写真や動画の撮影と組み合わせれば、幅広い調査や検査サービスを安全で持続的に行えます。

高所での超音波NDT検査用ドローンの設計

カナダのトロント近郊を拠点とするSkygauge Robotics社は、石油・ガス、インフラ、海上、通信など多様な業界の検査チームにドローンを提供しています。特に、同社のロボット工学チームが製造した、安全性、高速性、費用効果に優れた超音波および目視検査用の独自のドローンソリューションが、Skygaugeです。

Skygaugeは、目視検査および肉厚測定用に設計されたドローンに、超音波厚さ計を装着したものです。ロープ、ブームリフト、足場を使う産業検査で作業員の安全性を脅かす代わりに、Skygaugeを使えば、作業員は地上にいながらにして、ドローンが危険な場所の検査を実行します。

下のビデオで、動くSkygaugeドローンをご覧ください。

超音波ドローン検査の仕組み

Skygaugeには、オリンパスの38DL PLUS™超音波厚さ計が一体化されています。ドローンに装備されたオリンパスD790-SM二振動子型探触子は、塗料コーティングを無視して金属の厚さを測定する検査のために、試験体表面に接触できます。

Skygaugeに搭載されてドローン飛行の準備が行われている38DL PLUS超音波厚さ計

Skygauge Robotics社の共同設立者兼CEOであるニキータ・イリューシキン氏は、このセットアップの仕組みについて次のように説明しました。

「38DLPは超音波を使用して肉厚を測定する、業界標準の超音波厚さ計です」とニキータ氏は言います。「構造物の上または下の表面に接触するために、プローブをさまざまな角度でドローンに装着できます」

Skygaugeドローンの一般的なワークフローは、現場状況の収集、飛行経路の計画、事後解析の3つの主なカテゴリーに分けられます。作業員は対象構造物を検査する前に、安全な運転ができるように、検査領域周辺に障害物がないことを確認する必要があります。

Skygaugeドローンが危険な場所で検査を実行する間、作業員は地上にとどまったままです。

「Skygaugeは金属肉厚の測定値を長期間にわたり（例えば6か月ごと）一貫して取得し、パイプ、圧力容器、貯蔵タンクの金属壁が薄くなっているかどうかを見つけます」とニキータ氏は言います。「壁が薄くなりすぎている場合、メンテナンスを行う必要性を示しています」

Skygaugeドローン（左）にはオリンパスD790-SM二振動子型探触子（右）が一体化されています。このシステムはカプラントを供給できます。人気の高いD790シリーズ探触子はエコーtoエコー測定の実行に用いられ、適切な高温用カプラントを併用して500 °C（930 °F）までの高温表面に使用できます。

ドローンは力センサー式プローブを使用して、厚さ測定の実行とスキャン時の表面接触の維持に必要な正確な力を加えます。 Skygaugeは、正確な飛行、力の接触、風の抵抗、角度のついた検査ができるように設計されています。

「このドローンの設計には推力偏向が織り込まれているので、フレームが動揺することなく、どの方向にも推進可能です」とニキータ氏は言います。「ローターを傾けることで対象物に近づいて飛行し、素晴らしい安定力で検査を実行できます」

Skygaugeドローンからのデータは、地上にいるオペレーターにワイヤレス転送されます

Skygaugeドローンで検査の困難な領域にアクセスするNDT検査員は、従来のアクセス手段では数日かかっていた、構造物の評価と包括的なデータ収集が可能です。

海上のボート、船舶、積み荷、石油・ガス精製所、風力タービンといった資本集約的資産における、高所や近付きにくい場所の検査の場合、Skygauge社は自社ドローンソリューションによるUT検査が、地上部隊（この場合は空中部隊ですが）による検査より5～10倍速いと見積もっています。

「このシステムでは、2人の検査員で2週間かかる作業を2日間でこなせるので、現場での作業時間を80%削減できます」とニキータ氏は言います。

ドリームチーム：NDT検査員とドローンの共同作業の仕組み

現在、ドローンは、さまざまな業界で人の手による作業を改善するために導入されています。 NDT検査にドローンを用いることで、ドローンの機動性に各種の検査手法を組み合わせる、あらゆる可能性が生み出されています。ドローン検査は、石油・ガス業界の多様な資産についての検査データを提供することで、欠陥を特定し、ひいては不具合や予期せぬ操業停止の発生率を抑えることができます。

Skygaugeシステムは、ドローンによるNDT検査の未来を垣間見せてくれます。作業員が高所での作業に携わる危険性に晒されないため、所要時間と検査費用の低減、安全性の向上が実現されるのです。