X線回析(略してXRD)とは、結晶物質の構造や相同定に関する情報を得るための分析法です。
XRDによって単結晶物質を同定し構造を明らかにすることができます。 地質学者にとってXRDが特に便利なのは、岩石中の鉱物など、混合物中に存在する結晶物質の同定に使用できることです。 粘土など、さまざまな化学式や構造を持つ鉱物の場合、同定してサンプル内でそれらの部分を判別するには、XRDが最適な方法です。
XRDとはどのような仕組みでしょうか。 ブログでは、XRDの科学的背景を掘り下げ、当社のポータブルXRD装置の仕組みについて説明します。
X線回析(XRD)の科学的背景
XRD分析では、X線のビームがサンプルに向かって照射され、散乱強度が出射方向の関数として測定されます。 慣例により、入射と出射のビーム方向間の角度は2θ(2シータ)と呼ばれます。
入射と出射のビーム方向間の角度は2θ(2シータ)と呼ばれます。
距離dで分けられた電荷シートで構成された、考えられる最も単純なサンプルの場合、ブラッグの法則n λ = 2 d sin θが成り立つと、建設的干渉(より大きな散乱強度)が見られます。
実際におけるXRDテクノロジー
当社の次世代モデルであるTERRA™ IIやBTX™ III XRD装置などのXRD装置では、このテクノロジーを使用して、鉱物の主要成分や微量成分を高速かつ高い信頼度で位相分析し、リアルタイムに直接装置に表示します。
またオリンパスのXRD装置は、独自の方法を使用してX線回折データを迅速かつ容易に収集し、処理しており、驚くほどコンパクトで持ち運びやすくなっています。 当社の技法について、詳しく見ていきましょう。
オリンパスのX線回折装置の仕組み
従来のゴニオメーターベースのXRD装置では、反射型回折法を使用してXRDデータを処理しています。 その結果、装置は大型で可動部品が数多くあり、外部冷却が必要な場合もあります。 もう一つの欠点は、分析用に大量のサンプルが必要なことです。 こうした制限から、かつてのXRD分析はラボで行われるのが常でした。
当社のエンジニアたちは、X線ビームがサンプルを通り抜ける独自の透過型回折法を採用することで、XRDを前進させました。
この技法は可動部品を必要としないため、世界初の商用電池式ポータブルXRDの設計が実現しました(後継モデルは新しいTERRA™ II装置です)。 現在、当社のXRD装置は携帯性と使いやすさを提供し続け、分析に必要なサンプルはほんの15 mgです。
サンプルをサンプル室に入れると、XRD装置では粉体液状化と呼ばれる粒子のランダム化が行われます。 この手法では、一定の圧電誘発周波数がサンプルに加わります。これによって粉体が上から下に対流し、粉体自体が回転します。
30秒以内に、サンプルウィンドウにあるすべての粒子があらゆる方向にX線ビームを通過します。 この方法で、オリンパスのXRD装置は、正確なX線回折の最も重要な要素である100%のランダム化を実現します。
定量鉱物分析をすばやく容易に実施する方法
当社の装置では、XRDプロセスをできるかぎりシンプルにしたため、定量鉱物分析をすばやく容易に行うことができます。 このプロセスはほんの数ステップで説明できます。
- サンプルを準備します。 サンプル準備の簡単なステップについては、ブログ「高速定量X線回折分析のクイックガイド」をご覧ください。
- 検査を開始すると、ウィンドウ内の対流するサンプルをX線が透過します。
- X線がサンプルに当たり、2シータ角度の範囲で回折します。
- CCD検出器が回折を測定します。
- SwiftMin®自動相同定および定量分析ソフトウェアが、リアルタイムの相または鉱物同定を回折装置に直接表示、または直感的なユーザーインターフェースに表示します。
一般的なXRDの用途
こうして得られたXRD結果は、幅広い用途に使用できます。 XRDの一般的な用途は次のとおりです。
- 採掘と鉱石
- 石油・ガス
- 医薬品
- 学術
- 宇宙探査
オリンパスXRD装置が持つ3つのハードウェア特性
時間を節約するソフトウェアとシンプルなサンプル準備に加えて、オリンパスXRDは独自のハードウェアコンポーネントで設計されており、装置の信頼性と正確性を非常に高いものにしています。
- 2次元のX線回折装置:多くのXRD装置では、サンプルから発せられる光子を1面のみ、つまり1次元測定でキャプチャするX線検出器を使用します。 オリンパスのCCDベースのXRD装置では、回折環の状態を確認できるため、サンプルが(粒子統計や結晶の選択配向について)正しく前処理されているかが分かります。 こうした情報を使用して、定量データが正確で代表的なものであることを確認できます。
- エネルギー弁別式X線検出器:従来の大型XRD装置では、一般的にエネルギー高感度検出器を使用できません。 そのため、検出器はX線回折で使用されない光子の影響を受けます。 それに対してオリンパスのXRD装置は、X線回折には直接含まれない光子(蛍光X線光子など)を除外できるため、高いSN比が得られます。
- コバルトおよび銅のX線管オプション:オリンパスのXRD装置には、標準で堅牢なコバルト(Co)のターゲットX線管が付属しています。 このアノードは、鉄(Fe)が多く含まれるサンプルの分析に優れているため、地質学者や鉱物学者の使用に適しています。 ただし、一部の用途(マンガンが多く含まれる材料)には銅(Cu)のターゲットX線管が必要です。 オリンパスでは、用途に応じてどちらのX線管もご用意しています。
ポータブルXRDテクノロジーの詳細
このブログは、X線回析の基礎知識と、最新のポータブル装置における仕組みを理解していただくことを目的とするものです。 このテクノロジーについての詳細は、オリンパスXRDに関するビデオをご覧ください。
SwiftMinは、MinEx CRCの登録商標です。
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