ポータブル蛍光X線分析計(XRF)は、土壌の重金属汚染評価を目的とする実証済みツールです。このことは、Vanta™ハンドヘルド蛍光X線分析計が、土地の汚染を評価する能力を潜在的に備えていることを話題にした前回のインタビューで、Sackedgate LtdのJulian Puzyna氏が証言されています。
今回も引き続き、英国でVanta分析計を土壌・環境分析に使用した経験をJulian氏に詳しく伺いました。
Q:どのような経緯で、土壌の重金属汚染の測定にポータブル蛍光X線分析計を使い始めたのですか?
Julian氏:何年もの間、土地の汚染調査を行ってきました。通常、作業はすべて現地で行います。次の問いの答えを探します。この土地の来歴は?人はここで何をしたのか?どんな汚染に見舞われたのか?
現地調査では、サンプルを採取しラボに送り、分析に回す必要があります。現地で行える調査の一つに、炭化水素のバイオアッセイ試験があります。以前は、バンの後部に小さなケミストリーラボを積み込みましたが、大変な作業でした。
土地の調査を始めたのは1997年です。それとほぼ同時に、地質工学的手法を要する土地の汚染が見つかり、汚染物質の試験を始めました。
においも色も感じられない重金属汚染を評価するには、Vanta蛍光X線分析計が頼りの綱でした。重金属汚染は目に見えないので、評価するのは至難の業です。英国の有毒な金属汚染の大半は、鉛(Pb)に由来します。土壌の鉛汚染の発生源は多岐にわたります。原因の一つとして、クレー射撃の後、鉛がそのまま地面に放置されたことが挙げられます。都市の土壌も、同様に鉛で汚染されているおそれがあります。建物の建築後、集積廃棄物が焼却された歴史があるからです。他に、四エチル鉛をガソリンの添加物として使用した歴史もあります。
Vantaハンドヘルド蛍光X線分析計については、装置そのもの、さらに金属汚染を画面に表示するという設計理念に感服しました。
Q:土壌の重金属汚染の分析に、Vantaのどのモデルを使っていますか?
Julian氏:2ビームGeoChemモードを搭載したVantaハンドヘルド分析計です。鉛(Pb)を見つける際の試験時間は、通常1分から1分15秒ほどです。他の金属の試験時間はもっと長く、2、3分です。サンプルを必要以上に長く照射することで時間を無駄にしたくありません。
分析計は、通常、三脚にのせて使用します。通常、地面を掘って土をかき出してから三脚に分析計をセットする必要があり、それから試験を始めます。三脚を使うと試験がずいぶんと楽になります。
Q:汚染土壌を蛍光X線分析計で試験するにあたり、サンプルに何か前処理をしますか?
Julian氏:土壌試験では、Vanta蛍光X線分析計を地面に直接置いて使用します。土壌を少し採取しサンプル容器に入れた状態でも、XRFを使って試験を行います。石が混ざっている場合、石が実質的に汚染源ではないことをXRFで確認してから、石を除くため、ふるいを時々使います。検証のため、XRFで試験したサンプルの5~10%ほどをラボに回します。
広い場所では、Vanta分析計のGPSを利用します。比較的狭い場所では、GPSを利用せず格子状に分画し、そこで何らかの調査を行います。穴を多数掘る必要がなければ、1日で100~200箇所を照射し試験を行います。
Q:1日あたり何回、土壌のXRF試験を行いますか?
Julian氏:XRF試験の回数は、1日あたり何百回にもなります。Vantaハンドヘルド蛍光X線分析計は、性能と堅牢性に優れています。作業現場に赴き、XRFの結果を基に、進行状況を確認します。問題を特定したら、ラボ用のサンプルをそこかしこから持ち帰ります。Vanta蛍光X線分析計は、優れた性能を何度も発揮しました。
多くの場合、ラボの試験は、鉛などの金属の値を1つ取得するために行われます。しかし私たちが欲しいのは、鉛で汚染された土壌の掘り出しなど、土壌修復作業を監督するのに役立つライブ情報です。例えば、菜園や植物園の造設を計画している用地から汚染を除去するのを手伝ってほしいと、開発業者から頼まれたとしましょう。掘削を進めるにつれ、私たちは掘削を都度中断し蛍光X線分析計で試験します。掘削をいつまで続け、いつやめるかを掘削業者に指示します。Vanta蛍光X線分析計を使用すれば、意味のない土壌処理に顧客が何千ポンドもかけずに済みます。
Q:XRFはどんな点で、土地用途の適性評価に有用ですか?
Julian氏:土地の用途を、商業目的から住居目的に変更する場合は常に、土地が汚染されていないことを証明する必要があります。土壌が汚染されていないと想定するのではなく証明することは、宅地開発業者にとって重責です。
そのため、宅地開発業者は、試験の専門家として私たちチームを雇います。私たちは、開発業者が土地の評価をするのを手助けします。対象は、古い農場から作業場の土地に及びます。開発業者から調査を受注し、Vanta蛍光X線分析計で調査を実施します。この装置は、調査に不可欠です。
Q:土地の汚染調査をする際、どのような政府規制を順守する必要がありますか?
Julian氏:英国では、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)が、汚染された土地に関するガイドラインを定め指導にあたっています。
土壌の鉛汚染を例にとっても、義務付けられている作業がたくさんあります。植物が鉛を取り込み、人がそれを食べると、最終的に鉛中毒になりかねません。
DEFRAや他の環境当局が定める安全レベルを基準として、土壌の鉛汚染が許容できるかを見極めます。
Q:土地の汚染調査で、蛍光X線分析試験の出番となるのは主にどのような場面ですか?
Julian氏:現場の掘削リグで、蛍光X線分析試験を時々実施します。掘削リグから掘り下げる穴の深さは30メートル、フィートで言うと98フィートにもなります。作業の一環として、どの天然金属が存在するかを確認するため、蛍光X線分析計で掘削コアの試験をします。
時には、掘削機で試掘坑を掘り地中を探索し、その場所が安全と判断されると、蛍光X線分析計を掘削穴に入れます。そうできない場合は、試掘坑からサンプルを取り出し、安全に分析所を設営できる場所まで運びます。多くの場合、土地の過去の用途に由来する残留土壌や汚染物を最初に現場で発見するのは私たちです。
Vanta蛍光X線分析計を使用すれば、褐鉄鉱や黒マンガンで染まった土壌を迅速に評価できるので、調査の次の段階をその場で計画できます。ラボに回すのと違い、結果を受け取るまで2週間待つ必要がありません。
Q:土地の汚染調査中に発見した過去の遺物は?
Julian氏:ビクトリア朝時代から少し前のご先祖様の時代まで、ぞっとするようながらくたが、いつでも見つかります。ある試掘坑では、端が丸い大きな金属塊を同僚が発見し、爆弾処理班を呼ぶはめになりました。ところが実際は、レールに鎮座したままの蒸気機関車と判明し、鉄道の歴史家に連絡を入れました。
ある時は、まったく身の毛がよだつことに、同僚がクロロホルムの樽を発見しました。彼が言うには、樽からディーゼルエンジンのような音が聞こえたそうです。私の経験談をお話します。サンプルのにおいを嗅いで、少しの間意識を失ったことがあります。意識を取り戻したときには、私が落としたサンプル瓶から散らばったガラスの破片と土壌の上に、膝から崩れ落ちていました。
第二次世界大戦中、多くの物や物質が、適切な処理を施されないまま急いで廃棄されました。興味深い過去の遺物の発見は、枚挙にいとまがありません。
英国のオックスフォードの粘土地層から出土した黄鉄鉱化したアンモナイト
天然粘土や泥岩を掘り下げて採取したサンプルから見つかった化石には、いつでも興味をそそられます。私の戸棚は、Shiny Fool's Goldの歯のようなサメの歯やアンモナイト、植物の枝でぎっしりです。このような発見物のいくつか(アンモナイトなど)をVanta 蛍光X線分析計で試験したところ、イオウやヒ素が大量に存在することがわかりました。硫ヒ鉄鉱脈に沿って黄鉄鉱が存在すると考えられます。これこそまさに愚者の黄金です。
対談相手のご紹介Julian Puzyna氏は、チームの主任技師として、または単独の技師として、英国で800件を超える土地調査に何年も携わってきました。 地球環境調査のため、地図や航空写真の評価、第I相の机上研究の経験を積み、これまで土地を汚染してきた産業や活動に関し見識を伝えています。このような経験に基づき、リスクの事前評価を集中的に行い、さらに必要な作業について思慮深い提言を与えています。 Julian氏は蛍光X線分析計を使用することで、偏在的または散在的な鉛汚染が発見されている場所の調査にも成功しています。何百もの場所を綿密に試験するのは、試験坑を採掘したりラボ分析に回したりすることを考えると、資金面で厳しいです。しかし蛍光X線分析計を使用すれば、金属のホットスポットや多様性をその場で見つけ、汚染土に限定して土壌修復作業を行うことができます。 |
その結果、プロジェクトの件数が増える中、開発業者にとって、調査と土工事にかかるコストの大幅な節約となります。
土壌の金属汚染分析について
ポータブル蛍光X線分析計を用いた土壌の重金属汚染評価の詳細を見るには、ここからJulianの1回目のインタビューをお読みください。蛍光X線分析計について質問があれば、Evident担当者にご連絡ください。専門的な助言を差し上げます。
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