概述
表面粗さを測定できる様々な測定機
表面粗さを測る測定機として、接触式と非接触式とに分類できます。
|
方式 | 測定機 | メリット | デメリット |
接触式 | 触針式表面粗さ測定機 |
|
|
非接触式 | 白色干渉計 |
|
|
レーザー顕微鏡 |
|
| |
デジタルマイクロスコープ |
|
| |
走査型プローブ顕微鏡(SPM) |
|
|
OLS5000の表面粗さ測定における課題解決 |
触針式表面粗さ測定機とレーザー顕微鏡のデータの相関は取れるのか? 非接触ですばやくデータを取得できるレーザー顕微鏡は魅力的ですが、長年使用してきた触針式のデータと相関が取れるのかは気になるところです。測定原理が異なれば多少の差異が生じるのは避けられませんが、測定条件や解析条件をできるだけ統一することで高い相関性が得られるようになります。
以下はレーザー顕微鏡と触針式表面粗さ測定機のデータを比較したものです。
1にλs=2.5μmのフィルタを適用した結果が2のデータになります。
サンプル:Rubert社製 粗さ標準片 No.504 1. レーザー(生データ):対物20× (NA0.6)
λs(2.5μm) filter 2. レーザー(フィルターあり):対物20× (NA0.6) 3. 触針式 (NA0.6)
課題
解決策
|
課題
解決策
|
課題
| ||||
解決策
|
国際規格の動向三次元方式に対応した様々な測定原理の測定機が広く市販されるようになり、利用される機会は年々増加しています。近年、この利用実態の後を追う形で、国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)では規格制定を推進し、ここ数年で主要な規格が揃ってきました。下表に輪郭曲線方式と三次元方式の主要規格の一覧を示します。 輪郭曲線方式では触針式測定機の利用だけを想定していたため、統一された測定条件(例えば、評価長さ、カットオフ、触針先端半径など)が規格の中で明記されていました。一方、三次元方式では様々な種類、原理の測定機(主に光学式測定機)が利用されるため、統一された測定条件は存在せず、評価の目的に応じて利用者が測定条件を決定する必要があることには注意が必要です。 輪郭曲線方式と三次元方式の主要規格 |
輪郭曲線方式 | 三次元方式 | |
表面性状
パラメーター | ISO 4287:1997(JIS B0601:2013) | ISO 25178-2:2012(JIS B0681-2:2018) |
ISO 13565:1996(JIS B0671:2002) | ||
ISO 12085:1996(JIS B0631:2000) | ||
測定条件 | ISO 4288:1996(JIS B0633:2001) | ISO 25178-3:2012(JIS B0681-3:2019) |
ISO 3274:1996(JISB0651:2001) | ||
フィルター | ISO 11562:1996(JIS B0632:2001) | ISO 16610シリーズ(JIS B0635:2018) |
測定機の分類 | - | ISO25178-6:2010(JIS B0681-6:2014) |
測定機の特性 | ISO 3274:1996(JISB0651:2001) | ISO25178-602 ~ 607 |
測定機の校正 | ISO 12179:2000(JIS B0670:2002) | ISO原案 作成中 |
校正用標準片 | ISO 5436-1:2000(JIS B0659-1:2002) | ISO25178-70:2013 |
図示法 | ISO 1302:2002(JIS B0031:2003) | ISO25178-1:2016(JIS B0681-1:2023) |
技術用語の解説 |
断面曲線(Primary profile)測定断面曲線にカットオフ値λsの低域フィルターを適用して得られる曲線。断面曲線から求めた表面性状パラメーターを断面曲線パラメーター(Pパラメーター)と呼ぶ。 粗さ曲線(Roughness profile)カットオフ値λcの高域フィルターによって、断面曲線から長波長成分を遮断して得た輪郭曲線。粗さ曲線から求めた表面性状パラメーターを粗さ曲線パラメーター(Rパラメーター)と呼ぶ。 うねり曲線(Waviness profile)断面曲線にカットオフ値λfおよびλcの輪郭曲線フィルターを順次適用することによって得られる輪郭曲線。λfによって長波長成分を遮断し、λcによって短波長成分を遮断する。うねり曲線から求めた表面性状パラメーターをうねり曲線パラメーター(Wパラメーター)と呼ぶ。 輪郭曲線フィルター(Profile filter)輪郭曲線の波長成分を長波長成分と短波長成分とに分離するフィルター。次の3種がある。
| カットオフ値(cut-off wavelength)輪郭曲線フィルターにおける境界波長。振幅の透過率が50%になる波長。 基準長さ(Sampling length輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線のX軸方向の長さ。 評価長さ(Evaluation length)輪郭曲線のX軸方向の長さ。 輪郭曲線方式の概念図 |
表面性状曲面(Scale limited surface)三次元表面性状パラメーターを求めるための基礎となる曲面データ。S-F曲面又はS-L曲面。輪郭曲面と呼ぶ場合もある。 輪郭曲面フィルター(Areal filter)輪郭曲面の波長成分を長波長成分と短波長成分とに分離するフィルター。作用に応じて次の3種がある。
注)標準的にはSフィルター、Lフィルターとしてガウシアンフィルター、F演算として最小二乗法による当てはめ演算が用いられる。 ガウシアンフィルター輪郭曲面フィルターの一種であり三次元方式で標準的に用いるフィルター。ガウス関数で与えられる重み関数との畳みこみ演算によりフィルターを実現する。振幅の等価特性はネスティングインデックスの値で50%に減衰する特性を持つ。 スプラインフィルター輪郭曲面フィルターの一種でありガウシアンフィルターに比べデータ端部での歪みが少ないとされる。 ネスティングインデックス(Nesting index)輪郭曲面フィルターにおける境界波長を表わすための指標。ガウシアン輪郭曲面フィルターを用いる場合のネスティングインデックスは長さの単位で指定され、この場合は輪郭曲線方式におけるカットオフ値と等価な意味合いとなる。 | S-F曲面(S-F surface)Sフィルターによって小さい波長成分を除去した曲面から、F演算によって形状成分を除去した曲面。 S-L曲面(S-L surface)Sフィルターによって小さい波長成分を除去した曲面から、Lフィルターによって大きな波長成分を除去した曲面。 評価領域(Evaluation area)特性評価を行うために規定した表面性状曲面の一部。指定が無い限り評価領域は正方形である。 三次元方式の概念図 |
レーザー顕微鏡での表面粗さ評価のポイント |
1. 下表から測定したい項目(粗さ、うねり、段差)に適した対物レンズ(◎, ○)の中で、作動距離W.D.の値が標本と対物レンズの接近可能な距離以上である対物レンズの候補を選択します。
2. 候補に挙げた対物レンズを使って測定対象物を観察した時に、主要な形状成分(表面の特性を決定すると思われる最も支配的な形状成分)が観察視野内に十分な数(X,Y各方向に主要形状成分の5倍以上を推奨)が含まれる対物レンズを本採用します。
- 条件を満たす対物レンズが複数ある場合には、なるべく開口数N.A.の大きいものを選択します。
- 条件を満たす対物レンズが存在しない場合、△印の対物レンズも含め再選定するか、貼り合わせ機能を使って測定領域を拡大することを検討します。
対物レンズ | 仕様 | 測定項目 | |||||
開口数
(N.A.) |
作動距離
(W.D.) (単位:mm) |
集光スポット径*
(単位:μm) |
測定領域**
(単位:μm) | 粗さ | うねり |
段差
(Z) | |
MPLFLN2.5X | 0.08 | 10.7 | 6.2 | 5120 × 5120 | X | X | X |
MPLFLN5X | 0.15 | 20 | 3.3 | 2560 × 2560 | X | X | X |
MPLFLN10XLEXT | 0.3 | 10.4 | 1.6 | 1280 × 1280 | X | ○ | △ |
MPLAPON20XLEXT | 0.6 | 1 | 0.82 | 640 × 640 | △ | ○ | ○ |
MPLAPON50XLEXT | 0.95 | 0.35 | 0.52 | 256 × 256 | ◎ | ○ | ◎ |
MPLAPON100XLEXT | 0.95 | 0.35 | 0.52 | 128 × 128 | ◎ | ○ | ◎ |
LMPLFLN20XLEXT | 0.45 | 6.5 | 1.1 | 640 × 640 | △ | ○ | ○ |
LMPLFLN50XLEXT | 0.6 | 5 | 0.82 | 256 × 256 | △ | ○ | ○ |
LMPLFLN100XLEXT | 0.8 | 3.4 | 0.62 | 128 × 128 | ○ | ○ | ◎ |
SLMPLN20X | 0.25 | 25 | 2 | 640 × 640 | X | ○ | △ |
SLMPLN50X | 0.35 | 18 | 1.4 | 256 × 256 | X | ○ | △ |
SLMPLN100X | 0.6 | 7.6 | 0.82 | 128 × 128 | △ | ○ | ○ |
LCPLFLN20XLCD | 0.45 | 7.4–8.3 | 1.1 | 640 × 640 | △ | ○ | ○ |
LCPLFLN50XLCD | 0.7 | 3.0–2.2 | 0.71 | 256 × 256 | ○ | ○ | ○ |
LCPLFLN100XLCD | 0.85 | 1.0–0.9 | 0.58 | 128 × 128 | ○ | ○ | ◎ |
* 理論値です。
|
◎ : 最も適しています
|
表面性状の解析で使うフィルターの機能、フィルターの組合せ、フィルターサイズについて説明します。これらフィルターは解析の目的に応じて、条件設定を行います。 輪郭曲面フィルター(Areal filter)表面性状パラメーターの解析を行う場合、目的に応じて取得した表面形状データに対して3つのフィルター(F演算、Sフィルター、Lフィルター)の適用を検討します。 |
|
フィルターの組み合わせ
3つのフィルター(F演算、Sフィルター、Lフィルター)の組合せは全部で8通りあります。
下表の用途欄を参考に、適用するフィルターの組合せを選択します。
用途 | 取得したデータをそのまま解析したい場合 | うねり成分を除去したい場合球や曲面などの形状成分を除去したい場合 | 球や曲面などの形状成分を除去したい場合 | 球や曲面などの形状成分を除去した上で、さらにうねり成分も除去したい場合 | 細かな凹凸成分やノイズを除去したい場合 | 細かな凹凸成分やノイズ、うねり成分を除去したい場合 | 球や曲面などの形状成分と、細かな凹凸成分やノイズを除去したい場合 | 細かな凹凸成分やノイズ、および球や曲面などの形状成分を除去した上で、さらにうねり成分を除去したい場合 |
F演算 | - | - | 〇 | 〇 | - | - | 〇 | 〇 |
Sフィルター | - | - | - | - | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
Lフィルター | - | 〇 | - | 〇 | - | 〇 | - | 〇 |
- : 適用しない
○ : 適用する
フィルターのサイズ(ネスティングインデックス)
フィルターの強さ(形状の分離能力)をネスティングインデックスと呼びます。(Lフィルターは慣習的にカットオフと呼ぶ場合があります)
- Sフィルターはネスティングインデックスが大きいほど、細かな形状成分が強く除去されます。
- Lフィルターはネスティングインデックスが小さいほど、うねり形状成分が強く除去されます。
ネスティングインデックスは、…,0.5, 0.8, 1, 2, 2.5, 5, 8, 10, 20,…の数値系列の値を用いることが推奨されますが、次のような制約もあります。
- Sフィルターのネスティングインデックスは光学的な分解能(≒集光スポット径)以上、かつデータのサンプリング間隔の3倍以上の値を設定する必要があります。
- Lフィルターのネスティングインデックスは測定領域の大きさ(矩形の短辺の長さ)よりも小さな値に設定する必要があります。