オリンパスの標準的な渦流プローブは、さまざまな構成で用意されています。
ここでは、それぞれの詳細について説明します。この情報を基にして、特定の検査に合った渦流プローブの選択に役立ててください。
通常は表面亀裂検出に使用するプローブで、高周波渦流(HFEC)プローブとも呼ばれます。小さいコイルを持っており、コイルはシールドされている場合もされていない場合もあります。ほとんどは絶対値式ですが、良好なバランスを確保し周波数範囲を大きくするために、プローブ本体にバランスコイルが組み込まれている場合もあります。あらゆる要件に対応するために、ストレートタイプおよび角度付きタイプの両方でさまざまなタイプが入手可能になっています。さまざまな形状に合わせて調節できるフレキシブルシャフト付きも入手可能です。
ペンシル型プローブは、主に試験対象となる材料に応じて、さまざまな周波数で作動するように設計できます。アルミニウムには100 kHzが最も一般的ですが、バランスコイルと使用する機器に応じて、最大200 kHz以上での使用も可能です。周波数が高いほどリフトオフに対して良好な角度が得られますが、プローブが500 kHzに近づくとリフトオフの影響を受けやすくなり、材料をあまり貫通できなくなります。このため、通常は、低い周波数に留める方が望ましいです。
最初の層で亀裂を探すとき、亀裂が層の反対側から広がりつつあるものの、まだ表面に至っていない場合は(被覆膜がある場合など)、ペンシル型プローブを100 kHz以下で使用するのが一般的になっています。20 kHz~50 kHzの周波数は被覆を貫通し、厚さの50%にしか達していない欠陥を検出します。標準的な100 kHzプローブでも、高いゲインを使用して補えば50 kHzで作動できるものがありますが、少し大きい直径を使用しなければならないとしても、低い周波数用に設計されたプローブを使用する方が望ましいです。
チタンやステンレス鋼などの導電率の低い材料の場合は、感度を上げ、破損して割れている表面との位相角を向上させるために、1 MHz~2 MHzの周波数を選択する必要があります。磁性鋼の場合は、周波数はさほど重要な要素ではありませんが、1 MHzまたは2 MHzで透過性のばらつきを最小限にすると良好な結果を得やすくなります。材料がカドミウムでめっきされている場合は、その影響を最小化するために低い周波数が必要です。25 kHz~50 kHzが最適な場合もありますが、大きいプローブ径が必要になります。
低周波数渦流(LFEC)プローブとも呼ばれるスポット式プローブは、表面下の亀裂や腐食を検出するために低周波数で使用します。100 Hz以上のもの(厚い構造体への浸透のため)が入手可能で、シールドされている場合もされていない場合もあります。シールドされているプローブは、プローブの下に磁界を集中させ、エッジやその他の構造からの干渉を回避するため、より普及していますが、小さい欠陥に対する感度がより高くなります。反射タイプのプローブも、ドリフト性が低く、より要求の厳しい用途で高いゲインを設定できることから、広く使用されています。ばねで止められた本体は、導電率の違いのスポット試験を行う場合など、必要なときに一定の圧力を維持するのに便利です。
表面検査用スポット式プローブとよく似ていますが、検査対象となるファスナーヘッド/穴の直径に対応できるように、中心部が大きくなって(穴になって)います。ファスナー/穴接合部が浸透を助けるため、割れに対する感度が上がります。これは、鉄製ファスナーでより顕著になりますが、浸透性のばらつきによって問題が発生する場合もあります。内径(ID)はプローブ選択において重要です。ファスナーヘッドより少し大きい内径を選択する必要があります。外径(OD)は、通常はそれほど重要ではありませんが、隣接するファスナーヘッドと重ならないようにしなければなりません。プローブの高さも重要ではありませんが、プローブを届かせるには制限がある場合は、特別な低いタイプも入手可能です。このタイプでは、プローブの高さを下げるために、プローブの試験コイル部とバランスコイル部が分かれています。
ボルト穴用プローブは、ファスナーを取り外した後に穴の内側を検査するように設計されています。ボルト穴用プローブは、次の2つのグループに分けられます。
調整可能なカラー付きの手動作動タイプ:プローブが正しい深さにインデックスされており、手動で回転します。手動のボルト穴用プローブで一般的に使用されるコイル構成は、絶対値式、ブリッジ、およびブリッジディファレンシャル型です。
回転スキャナー:さまざまなスキャナーと組み合わせることが可能であり、最高の対応範囲と高い検査速度を提供します。回転スキャナープローブは、通常、反射式差動型コイルを構成に含んでいます。ディファレンシャルコイルは結合部に対する感度が低く、欠陥検出に優れているためです。反射モードは、ゲインを最大化するために使用され、広い周波数範囲を提供し、プローブが高速回転する際にプローブ内に蓄積した熱により生じる可能性のあるドリフトを最小限に抑えます。
低周波数ボルト穴用プローブ:低周波数コイルがプローブに組み込まれており、ブッシングを貫通する穴の検査に使用されます。このタイプのプローブには、表面検査用スポット式プローブで使用されているのとよく似たコイルが使用されており、コイルサイズが大きいため、通常は径が大きいボルト穴に限られます。
カウンターシンク(皿穴)用プローブ:開口穴の入り口を検査するために、特殊なファスナーヘッド形状に合わせて作られています。標準的なボルト穴検査で使用されるのと同じコイル構成で、手動用にも回転スキャナー操作用にもできます。大量の穴を検査する必要がある場合は、回転スキャナータイプを使用すればはるかに速く検査できます。
長年の間、径の大きい穴は手動のボルト穴用プローブを使用して検査されてきました。既存のプローブ設計は、標準のハンドヘルド回転スキャナーで使用するには重くてバランスが悪く、自由に回転させることができないからです。手動のスキャンとインデックス化は、時間がかかるだけでなく、全域をカバーすることも困難です。さらに、大きい穴は、多くの場合、分厚い部品にあり、その厚さ全体をカバーするには大量のスキャンが必要になります。
最近設計された大口径プローブの設計は、重量が最小化され、機械的なバランスが最適化されています。このため、比較的小さい電力で回転するスキャナーで、過度の速度低下や振動を防ぎながら駆動できます。50 mm(2インチ)を超える直径での検証に成功しています。直径を調整できるタイプのプローブでは、正しい直径でプローブを設定することができ、過剰な摩擦や小さい傷に対する感度の低下を防ぐことができます。
プローブには、お客様の特定の要件のために作られたタイプが多数あります。お客様の用途の図面またはスケッチを弊社までお送りください。お客様の部品に適した特製の渦流プローブをお見積りします。
プローブの使用中に問題が発生する場合は、シンプルなテストをいくつか行ってみることをお勧めします。
すべてのハンドヘルドスキャナーの動力が同じというわけではなく、直径の大きいプローブはより多くの動力がないと検査結果の信頼性が低くなります。お使いの回転スキャナーについて疑問点がある場合は、弊社までご連絡ください。ご相談をお受けします。
直径の大きい穴を試験しているときには、コイルが欠陥の上を高速で通過します。これにより信号の継続時間が変わるため、機器のフィルター設定を高い値に設定し直すべき場合があります。通常であれば楕円率(リフトオフの変化)などのゆっくり変化する変動要素による影響を減らすハイパスフィルター(HPF)が、効果的に作用せず、設定を100 Hzから200 Hz以上などに増やす必要があります。ローパスフィルター(LPF)が傷の信号の部分をカットする可能性もあります。ここでも、設定を200 Hzから500 Hz以上などに上げてみると回避できる場合があります。バンドパスフィルター(BP)はこの両方の組み合わせで、一部の機器で使用可能です。これらも、高い値に設定し直す必要があります。最高のSN比を得るために、常にフィルターを調整してください。機器によっては、大口径プローブの利点を最大限に発揮できるフィルター設定を備えていないものもあります。