超音波フェーズドアレイ探傷装置(PA)では、ユーザーにより超音波ビームの形状およびグラフィック画像の解像度に影響を与える多くのパラメーターをプログラムすることができます。下のスキャン画像は、振動素子の励振タイミングをグループ単位で制御して形成されるバーチャルアパーチャーを増減させることによる変化を紹介しています。0.6mm(0.024インチ)ピッチで配列された64振動素子入りのプローブを使用し、振動素子の励振タイミングを4個、8個、16個のグループ単位で制御すると同時に、試験片のドリル加工孔(横穴)の画像を生成します。最大の開口幅(16振動素子) はより小さい開口幅(4振動素子、8振動素子)と比べてより鮮明な画像を生成し、ターゲットのドリル加工孔から最大振幅を受信しています。勿論、最大の開口幅は多数の振動素子が入ったフェーズドアレイプローブだけしか実現できません。そのようなフェーズドアレイプローブは高価であり、そのプローブを駆動するために通常高価な探傷装置を必要とします。
超音波フェーズドアレイ探傷装置のセットアップを行う際のもう一つのパラメーターは、プログラム化されたフォーカルロウの数もしくは1スキャンに含まれる角度成分の数です。その数が画像生成に使用される個別の A-スキャン画像数を効果的に制御することになります。一般的にフォーカルロウの数が多い程、より詳細な画像を生成できますが、フェーズドアレイプローブの走査速度が遅くなると電力消費量が増加する可能性があります。フォーカルロウの数が少ないということは、画像がより速く更新され電力消費は抑えられますが、その結果、画像は鮮明さを失います。
開口幅とフォーカルロウの数と同様に、電子制御による超音波ビームの集束(2.14章で説明)は、画像の鮮明さおよびターゲット部位からの反射エコーの振幅に大きな影響を与える可能性があります。下のスキャンはスチール製の試験片のドリル加工孔(横穴)3個を周波数5MHzのリニアアレイ探触子で探傷した画像(左側は非集束ビームによる画像、右側は集束ビームによる画像)を表示しています。
画像解像度に影響を与える最も基本的な要素は、フェーズドアレイプローブの選択です。高周波数のプローブは低周波数のプローブと比べて通常高い解像度を示します。一方、ビーム路程が非常に長いアプリケーションや、超音波ビームの減衰や散乱が大きい材料のアプリケーションでは、低周波数の方が透過性の面で優れています。下のスキャンはスチール製試験片の一連のドリル加工孔(横穴)の画像です。これらの画像は5MHz、64振動素子が入ったプローブ(左側)と、2MHz、16振動素子が入った探触子(右側)で生成されています。開口幅は、両画像共に16振動素子の固定開口幅を使用してセクタースキャンを行っています。画像は5MHzの方が著しく鮮明です。
どのような物質でも減衰は周波数に比例して増加するため、5MHzでの検査は2MHz以上に高いゲイン・レベル(感度レベル)を必要とします。しかし、超音波フェーズドアレイを利用したシステムでは、多くの場合、ゲインは制約要素ではありません。
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