超音波計測に最も用いられる種類の探触子には、以下に示すような基礎的な機能特性があります。言い換えれば、探触子は、所与の材料で生成する音波ビームの特性に影響します。
種類:探触子は、接触型、遅延材付き、または水浸型のように、設計や機能に応じて識別されます。 表面粗さ、温度、アクセス性、音波透過特性や、測定対象の厚さの範囲など、試験材料の物理的特性はすべて、探触子の種類の選定に影響します。
直径:通常はやや大きい筐体に収められているアクティブな探触子振動子の直径です。 小径の探触子は多くの場合、最も容易に試験材料に作用しますが、大径の場合には、平均効果のため粗い表面により効率的に作用することがあります。 また、設計上の理由から、探触子の周波数が低下すると大径が必要になります。
周波数:1秒間に完了する波サイクル数です。通常はキロヘルツ(KHz)かメガヘルツ(MHz)で表します。 超音波計測のほとんどは500 KHz~20 MHzの周波数帯域で行われており、大部分の探触子はこの帯域にありますが、市販の入手可能な探触子には、50 KHz未満から200 MHz超の製品もあります。 低周波数になるほど浸透性が増し、高周波数になるほど分解能や焦点精度が増します。
帯域幅:厚さ計測用の典型的な探触子は、単一の純粋な周波数で音波を生成するのではなく、名目上の周波数指示値を中心とした周波数範囲全体にわたって生成します。 帯域幅とは、特定の振幅限度内に入る周波数応答部分です。 直接接触型、遅延材付き、水浸型などの探触子が関わる厚さ計測用途においては、通常広い帯域幅が望まれます。
波形持続時間:探触子でパルス発信する毎に生成される波サイクル数です。 狭帯域幅の探触子は、広帯域幅の探触子よりサイクル数が多くなります。 振動子径、バッキング材、電気同調、探触子の励振方法のすべてが波形持続時間に影響を与えます。 大半の厚さ計測用途においては、短い波持続時間(広帯域応答)が望まれます。
感度:励起パルスの振幅と、指定したターゲットから受信したエコー振幅の関係です。 これは探触子のエネルギー出力の関数です。
ビーム形状:実用的な近似として見ると、典型的な無焦点のディスク探触子からのビームは、アクティブな振動子のエリアから発したエネルギーの柱として考慮されることがよくあり、しばらくまっすぐな柱として伝搬し、その後直径が拡大し、スポットライトのビームのように次第に散逸します。
ところが実際のビーム形状は複雑で、音圧勾配は横軸、縦軸の両方向にあります。 下のビーム形状図では、赤色の部分がエネルギーの最も高い部分を表し、緑色と青色の部分はエネルギーが相対的に低い部分を表しています。
所与のビームに関する厳密な形状は、探触子周波数、探触子径、および材料音速によって決まります。 探触子正面からわずかな距離にあるエネルギー最大のエリアは、近距離音場と遠距離音場として知られるビーム成分間の遷移を示すもので、それぞれ特定タイプの音圧勾配によって特徴づけられるものです。 超音波探傷では、亀裂のような小欠陥からのエコー振幅に影響するため、近距離音場の長さは重要な要素ですが、厚さ計測用途では通常重要な要素とはなりません。
集束:水浸型探触子は音響レンズにより集束し、小さな焦点ゾーンに狭めてから広がる砂時計形状のビームを形成します。 特定タイプの遅延材付き探触子も同様に集束できます。 ビーム集束の使用が最適なのは、小径チューブや鋭角の試験体の検査です。音響エネルギーを小さい領域に集めることでエコー応答が高まるためです。
減衰:音が媒質を通過する際に、超音波探触子が発生させる規則性のある波面は、エネルギーが物質の微細構造を透過しにくくなるため弱くなります。 編成された超音波の機械的振動(音波)は、波面が検出不能になるまでランダムな機械的振動(熱)に変化します。 このプロセスは音の減衰として知られています。 減衰は材料によって異なり、周波数に比例して増大します。 一般的な法則として、金属のような硬い材料では、プラスチックなどの柔らかい材料より減衰しにくくなっています。 減衰によって、最終的には所与の厚さ計セットアップと探触子で測定可能な最大材料厚さが制限されます。減衰によってエコーが検出できなくなるほど小さくなる位置が決まるからです。