多くの伝搬および検査設定パラメーター検証は、検査が曲面で実施されるにもかかわらず、平坦なブロックまたはプレートの上で行われます。 ビームが多様な表面(たとえば、ウエッジに対する被検部表面と後壁表面)の曲率半径の影響を受けるため、プレート上で測定される欠陥への反応がパイプ上で測定される反応とは大きく異なることがあります。 この課題に対処するため、オリンパスはPassive-Axis Focusing(PAF)ウエッジシリーズを開発しました。
超音波ビームが曲面で広がる際、表面は媒質の速度比に応じて収束レンズまたは発散レンズとして作用します。 ほとんどの標準的なNDT用途では、超音波はパイプ外面などの凸面を通り、(Rexolite(レキソライト)製ウエッジなどの)低速媒質から(炭素鋼などの)高速媒質へ透過します。 この結果、発散レンズ効果が生じビーム幅が広がります。 下の画像(図1参照)は、(CIVAソフトウェアを使用した)ビームのシミュレーションです。平面上の受動軸のビーム(左)と4.5インチ外径(OD)面に入るときの受動軸のビーム(右)との違いを示しています。 1つ目の媒質はRexolite(2330 m/sの圧力波速度)で、2つ目の媒質は炭素鋼(3240 m/sの横波速度)です。
パイプの内径(ID)面(または後壁)は、図2のように別の発散レンズとして作用し、ビーム幅を広げます。
図2:標準ウエッジ(左)およびPAFの集束用ウエッジ(右)のビーム発散路程
周溶接部検査を含む、ほとんどのNDT用途では、走査方向はフェーズドアレイプローブの受動軸に沿い、欠陥長さ測定はエンコードシステムを用いて実行されます。 最も一般的に用いられる振幅ベースのサイジング方法は6dBドロップ法です。 この方法の利点は欠陥の長さがビーム幅に影響を受けないことです。 しかしながら、これは欠陥がビーム幅より長い場合にのみ有効な方法です。 欠陥の計測値がビーム幅より短い場合はビーム幅の長さに対応します。 たとえば、5 mmビームが測定できる最小指示は5 mmの長さになります。 つまり、5 mmよりも短い場合、指示はすべて5 mmとして測定されます。
標準フェーズドアレイプローブは、平易さと汎用性から平面素子で設計されてきました。 小径検査用に設計されたプローブは被検部表面での発散を防ぐために(仰角凹曲[CCEV]プローブなどの)曲面素子を特徴としています。 しかしながら、この曲率値は固定されているため、広範囲な倍率には最適化されていません。
間隔の異なる1 mm径の垂直貫通孔を備えた2個の被検部を制作しました。 使用される被検部とウエッジは図4のとおりです。 1つ目の被検部はプレート(左)で、2つ目は外径4.5インチの半円パイプ(右)です。底面が平坦な標準のRexolite製ウエッジ(SA31-N55S-IHC)はプレート上のデータを取得するのに使用し、半円パイプの径に合った底面が湾曲した他の2つのウエッジは湾曲した被検部のデータを取得するのに使用しました。 湾曲したウエッジの1つは標準のRexolite製モデル(SA31-N55S-IHC-AOD4.5)で、もう1つは18 mmのレンズ半径のPAFコンポジットの集束用ウエッジ(SA31-N55S-PAF18-AOD4.5)でした。
試験の目的は、6dBドロップ法を使用し、ID(直接接触)およびOD(第2レグ)の貫通孔のコーナートラップ反射を使用して3つの異なるウエッジで取得できるビーム幅を測定することです。
3つすべてのウエッジに同じ超音波設定(5L32-A31プローブを使用した8振動素子の開口幅を持つ横波で屈折角55°(元々のウエッジの角度)のリニアスキャン)を使用しました。 プローブのアクティブ開口幅は、次のような特徴があります。
図5はC-スキャン表示、S-スキャン表示、およびレイトレーシング画像の関係を表しています。 左側のNDT SetupBuilderソフトウェアの画面には、後壁に反射後ODのコーナートラップに到達した低いビーム、およびIDのコーナートラップに到達した高いビームが表示されています。 S-スキャン表示(中央)ではIDのコーナートラップは時間的に早く到達するため、ODのコーナートラップよりも高く見えます。 C-スキャン表示(右)ではODとIDのコーナートラップは走査方向ですべての貫通孔に対して重なって表示されています。
この最初のデータセット(図6参照)は平板上の標準ウエッジで取得されました。 反射材は完全には同じではありませんが、7つの異なる貫通穴のコーナートラップは同じであることが容易に認識できます。 IDおよびODの指示上の振幅は同程度です。 6dBドロップ法を使用して、ビーム幅はIDでは5.0 mm、ODでは4.1 mmと測定されました。 結果は表1にまとめられています。
図7は4.5インチ外径半円パイプサンプル上の標準ウエッジから取得した2つ目のデータセットを表しています。 C-スキャン表示の信号振幅および欠陥表示は、前述の結果と比べ認識しにくいです。 サンプルにある特異な指示数を判定するのは困難です。 ビーム幅はIDでは5.7 mm、ODでは7.5 mmと測定されました。 7.5 mmのビーム幅はすべての指示が最小7.5 mmの長さで測定されることを示しています。 規格例に応じて最大許容欠陥長さが6 mmまたは6.4 mmを示すASME B31のような一般的な規格に従うと、この設定で検出された指示はすべて拒否されます。
3つ目および最後のスキャン(図8参照)は外径4.5インチ半円パイプサンプル上のPAFウエッジシリーズで取得しました。 C-スキャンの表示は標準ウエッジと比較して大幅に向上しています(図8参照)。 さらに、全体的な画像は平板で取得できる画像よりも鮮明です。 測定されたビーム幅はIDでは3.5 mm、ODでは4.2 mmでした。
ID
[mm] | OD
[mm] | |
---|---|---|
標準ウエッジ:プレート | 5.0 | 4.1 |
標準ウエッジ:パイプ | 5.7 | 7.5 |
PAFウエッジシリーズ:パイプ | 3.5 | 4.2 |
表1:ビーム幅測定結果一覧
PAFウエッジでレンズ効果を生み出すのに使用される素材は薄い表層内の音響リンギングを避け、ビームが集束できるように、伝搬速度に若干の違いはあるが可能な限りRexoliteのインピーダンスに近いインピーダンスを持ったものが選ばれました。
指示振幅を特定のレベルに設定した際の新PAFウエッジシリーズと標準ウエッジシリーズのゲイン差を明確にするため試験を行いました。 半円パイプサンプルの2穴上でOmniScan™ MX2欠陥検出器の250%モードを使用して両方(標準およびPAF)のウエッジで走査を行いました。 後処理で各指示がフルスクリーンの高さの80%になるように数値ゲインを調整しました。 表2は各指示に対するデシベルでの最終ゲイン値およびウエッジの組み合わせを示しています。 エネルギーが集束されているため、PAFウエッジから取得したゲインレベルが標準ウエッジのゲインよりも低いことに注目してください。
ID#1
[dB] | ID#2
[dB] | |
---|---|---|
標準ウエッジ-パイプ | 43.7 | 43.7 |
PAFウエッジシリーズ:パイプ | 41.6 | 42.3 |
差 | -2.1 | -1.4 |
平均差 | -1.75 |
表2:標準ウエッジとPAFウエッジのゲイン差
この実験は長さサイジング分解能に関して被検部の湾曲がマイナスの影響を与えることを明らかに示しています。 新しいPAFウエッジシリーズにより、被検部の外側への湾曲で起こるビーム発散は標準フェーズドアレイプローブと互換性を持つシンプルなソリューションを使用することで相殺することができます。 新しいPAFウエッジシリーズは、ビーム幅が小さくなり、より小さな欠陥を測定できるだけでなく、より鮮明な画像を提供し、データを簡単に解釈して拒否率を減少します。
特許登録データ:公報番号:US9952183。
出願番号: US14/851739