背景
風力発電は、環境負荷が低い、化石燃料の代替エネルギーです。主に欧州と米国において、20世紀後期に普及しました。21世紀に入ると、風力発電は特に中国で急速に成長し、全世界に広まりました。風力発電にはさまざまな利点があり、その一例として無尽蔵な自然エネルギー源を使用すること、二酸化炭素をほとんど排出しないこと、および他の発電所に比べて建設費が少なく建設期間も短いことが挙げられます。
さらに、太陽発電とは異なり、風力発電には昼夜を問わず発電できるという利点もあります。したがって、今後の大規模な設置が期待されます。
一方で、風力の変動に起因して発電能力が不規則であること、発電容量が小さいことなどの不利な点があります。故障や事故によるダウンタイムを防ぐためには、各構成部品の検査やメンテナンスが重要となります。
目視検査の普及が求められる
風力発電機のギアボックスの内部には、風力を発電機に伝達するための多数のギアと、それらを支持するベアリングが収められています。この発電機は、風上に向かうように回転するナセルに収容されています。ブレードの回転を発電機に伝達するシャフトには、特定の条件下では100トンもの負荷がかかることがあります。シャフトに連結されたギアボックスには多数の変速ギアが収容され、これらのギアを支持するために多数のベアリングが配置されています。
ベアリングは、回転させたまま回転力を支える役割を果たす、極めて重要な構成部品です。ベアリングに何らかの故障が発生すれば、連鎖反応的に他の構成部品が損傷し、風車が動作不能に陥ります。ビデオスコープ検査は、ベアリング内部のローラーや、ギアなどの近接する構成部品など、目の届かない場所の非破壊検査として実施されます。
何らかの故障が発生した場合には、原因とその影響が及ぶ範囲を迅速に特定することにより、修理費と修理期間を最小限に抑えることが可能になります。そのためには、目視点検を容易にするビデオスコープが不可欠な検査ツールなのです。
風車には、一般的な装置よりも大きなベアリングが多数使用されています。この大きさにもかかわらず、ベアリングのローラー間の空間は極めて狭くなっています。したがって、ビデオスコープで目標ポイントにアクセスするには、適切なサイズの装置に加え、経験と技能が要求されます。小さなアクセスポイントを通過した先に、面積が比較的大きな検査部分があります。十分な照明と、カメラを検査部分の周囲で湾曲させて検査領域に向けることが求められます。
さらに、検査は潤滑剤による油性環境内で行われるため、防滴機能が必須です。オリンパスが提供する工業用ビデオスコープは、輝度、サイズ、操作性の点でこれらの要求を満たしています。これが、オリンパスのビデオスコープが産業界で幅広く受け入れられている理由です。
画像—ギアボックスの内部を検査する
風力発電に適したオリンパスのビデオスコープIPLEXシリーズ
風力発電機に使用されるベアリングの検査には、通常外径4.0～6.0mm、長さ2mのタイプのスコープが使われています。以下に挙げる優れた機能により、オリンパスのビデオスコープは世界中で風力発電機の検査に広く使われています。
- バッテリ駆動：コードレス機能が、狭いナセル内部であっても作業効率を高めます
- 小型軽量：優れた携帯性により、高所でも手持ち操作が可能です
- 防塵防滴：埃っぽい、湿った、あるいは油性の条件での検査に適しています
- 交換可能な光学アダプター：意図する検査に合わせて、各種の光学アダプターを利用できます
- 対象物の効率的な目視検査を促進する湾曲機能：リモートコントローラーを使用して、正確かつ迅速に先端部の狙いを定めることができます
- 耐久性のあるスコープ挿入ヘッド：タングステン組紐を使うことで、複雑な挿入に耐える耐久性を実現しています
- WiDER機能：反射面がある場合、光量補正で黒つぶれになり見づらくなることの多い、暗部の階調を広げます。
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携帯性の高いIPLEX RX
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軽量設計と耐候性ボディを兼ね備えるIPLEX UltraLite
信頼性の高い検査記録のためのInHelp検査アシストソフトウェア
ビデオスコープ検査中に、報告書に添付する多数の画像が保存されます。記録した画像は似通っている場合が多いため、個別に簡単な注釈を付けない限り、取り違えが起こるおそれがあります。ナセル内部の窮屈な場所にいるときや、ギアボックスに腰掛けているようなときに、このような注釈を付けることは容易ではありません。こうした状況では、検査アシストソフトウェアであるInHelpが役立ちます。InHelpの機能を使って検査を行うと、取り込んだ画像が撮影場所を特定するフォルダに保存されるだけでなく、検査結果や定型コメントが画像に追加されます。
検査後に報告書を作成しなければならない場合には、InHelp Viewerを使えば画像数が多くても迅速に報告書を作成できます。
目視以外の検査装置
オリンパスでは、ビデオスコープの他にも、風力発電機の検査でよく使用される超音波探傷器、超音波厚さ計、XRFおよびXRD分析計を製造、供給しています。ブレードや他の構成部品の内部欠陥の検査には、超音波探傷器が使用できます。バッテリー駆動式のXRF分析計（X5000）を使用すると、サンプルを検査室に送らなくても、抽出したオイルサンプルに混入している金属の種類、サイズ、量を現場で判定することができます。
したがって、ギアボックスの健全性管理を現場で行うことが可能です。例えば、X5000によって特定の金属の増加が確認された場合には、その金属が使用されている場所をビデオスコープを使って直ちに点検すれば、手遅れになる前に判断が可能です。
オリンパスのビデオスコープおよび検査装置は、世界中の風力発電施設の検査に使用されています。各製品の詳細、またはお客様が必要とする風力発電検査のソリューションにつきましては、オリンパスまでお問い合わせください。
