プリント配線板ガラスの繊維はく離検査事例
ほとんどの電子機器において、電子部品を実装した実装基板が使用されています。部品を実装する基板は一般にプリント配線板と呼ばれます。プリント配線板はガラスファイバーを布のように織り込み、そこに樹脂を浸透させたプレートをベースとなる基板としています。ガラスエポキシ基板が現在の主流となっています。その表面に銅製の電子回路をエッチングによって形成して、各電子部品を電気的に接続します。
現在、電子部品の高密度実装化の流れを受けプリント配線板も、数枚を積層させて狭いエリアに多数の電子部品を実装できる多層基板が市場で主流となっています。積層させる場合は熱を加えて、樹脂が軟化した状態の基板に圧力をかけて各層を密着させます。
その際、加える熱の温度やプレスの応力などの条件によって、基板内のガラスと樹脂の間にはく離が発生する可能性があります。はく離はガラスファイバーが重なった部分と熱の影響を受けやすい端に近い層で発生するケースが多く見られます。基板内にはく離があると、完成した積層基板内の絶縁性や耐熱性が弱くなる危険性があるため、はく離の有無の確認は重要な検査項目のひとつです。はく離検査は回路形成後に自動外観検査装置で行い、さらに基板完成後に拡大鏡などで目視検査を実施します。はく離が存在する箇所は基板が他の部分より白く見えます。はく離が検出された場合、その部分を切断して、はく離の状態を光学顕微鏡やデジタルマイクロスコープでより詳細に観察して原因の解析を行います。顕微鏡観察の場合、明視野観察ではガラスエポキシの状態が見えないため、偏光で観察するのが一般的です。
デジタルマイクロスコープDSX1000シリーズで解決できること
①深い焦点深度と高い解像力を両立させた専用対物レンズ
プリント配線板の断面を析出させるためには、断面をエッチングする必要があります。エッチングを行うと材料によって溶解度合が異なるので、端面は平坦ではなく凹凸が出る場合があります。したがって、対物レンズの焦点深度では全面にピントが合わないケースもあります。対物レンズの倍率を低倍にすれば、焦点深度は深くなりますが、解像力が低くなり、クリアな画像を取得できません。ズームで倍率を上げても、解像力は対物レンズによって決まるので、ズームでは見えないものが見えるようにはなりません。DSX1000シリーズでは、深い焦点深度と高い解像力を両立させた専用対物レンズをラインアップしています。したがって、エッチングされたサンプルでもクリアな画像で観察することができます。
②テクスチャ強調機能
ガラスファイバーに樹脂が浸透することで、ガラスファイバーと樹脂の界面がはっきりしない画像となる場合があります。その場合、コンソールボックスのボタンをワンプッシュするだけでテクスチャ強調機能が働き、ガラスファイバーの状態をよりクリアな画像で観察できます。
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明視野画像 |
暗視野画像 |