コンポーネント表面や液体内の汚染物質(粒子、埃、残留物)の数と性質を解析することは、多くの製造アプリケーションで製品の性能と安全性を確保するために欠かせません。自動車、航空宇宙、医療機器製造などの産業では、コンポーネント清浄度を評価するための固有の規格や方法があります。
清浄度検査の最初のステップは、コンポーネントからのサンプル採取から始まります。使用する厳密なサンプリング法は、産業やアプリケーションによって異なります。前回のブログでは、コンポーネント清浄度検査における一般的なサンプリングワークフローと、サンプリング法の種類について説明しました。
このブログシリーズでは、それぞれのサンプリング法について詳しく見ていきますが、最初は洗浄法です。
コンポーネント清浄度検査における洗浄法とは
コンポーネントの工業用清浄度は間接的に検査しますが、これは検査対象の製品を顕微鏡で直接検査しないためです。微粒子汚染物質は、洗浄、すすぎ、または超音波洗浄でコンポーネントから取り除きます。洗浄法では、残留物や粒子がコンポーネントからすすぎ液に抽出されます。
注記:自動車産業のほとんどのケースでは、液体で粒子を抽出する方法が適切です。抽出に使用する液体が、コンポーネント材料、ろ過装置、フィルターメンブレンに使用可能であることを確認してください。
抽出後、すすぎ液をろ過してフィルターメンブレンに粒子を堆積させます。フィルターはその後の解析のために乾燥させる必要があります。すすぎ液やオイルは、デシケーター、乾燥炉、または専用機器を使用して除去することができます。
フィルターは清浄度検査に備えて乾燥させます。
場合によっては次のステップで、乾燥したフィルターメンブレンを、風防付き分析天秤を使って計量します。汚染物質の有無で重さを比較すると、選んだ部品のコンタミネーション量について、最初のおおまかな推定量が分かります。ただし、この重量測定データは任意的なもので、粒子のサイズ、形状、その他の性質は得られません。
フィルターメンブレンを風防付き天秤で計量します。
顕微鏡ベースのシステムでさらに解析すると、工業用清浄度の規格に照らした粒子の数、サイズ分布、特徴についての詳細な情報が得られます。目視分析を行うには、フィルターメンブレンをサンプルホルダーに固定してから、画像取得・解析のためにホルダーを顕微鏡のステージに載せます。
フィルターメンブレンをサンプルホルダーに載せます。
目視分析に関して、自動化とガイド付きワークフローを備えた顕微鏡システムを使用することをお勧めします。これによって、あらゆる経験レベルのユーザーが画像から信頼性の高いデータを取得できます。詳細は、ブログ経験の浅いオペレーターでも工業用清浄度検査が楽になる7つの機能をご覧ください。
洗浄法で使用されるフィルターメンブレンの種類
フィルターメンブレンにはさまざまな径があります。OLYMPUS CIX100コンタミネーション解析システムのデフォルトサンプルは、47 mm径のフィルターメンブレンです。47 mm径、25 mm径、55 mm径メンブレン用のサンプルホルダーもあります。
システムのソフトウェアには、各メンブレンサイズに合った検査領域プリセットが組み込まれているため、ボタンをクリックするだけでスキャンサイズを自動的に調整できます。また、サンプルの種類ごとにパラメーターも事前設定されて、経験の浅いオペレーターでも結果をたやすく取得できます。
使用するフィルターメンブレンのサイズは、用途と産業によって異なります。
- 47 mm径のフィルターメンブレンは、航空宇宙、自動車、石油産業でよく使用されます。これはほとんどのケースで使用されるデフォルトのフィルター径です。
- 25 mm径メンブレンは、オイル解析で使用されることがあります。
- 55 mm径メンブレンは、機械保守点検時や大量の粒子を扱う場合に使用されます。
各種の直径オプションに加えて、当社の専用サンプルホルダーには、多様な用途に合わせて黒色と白色の背景を持つものがあります。それぞれの背景の使用方法をいくつか紹介します。
黒色の背景:粒子の洗い流しに強力な薬品を使用する場合、すすぎ液の残留物がフィルターメンブレンに残る可能性があります。黒色の背景を持つサンプルホルダーは、主に陽極酸化アルミでできているため、化学物質に対して概ね不活性です(つまり化学反応しません)。これは、例えばオイルを解析する場合に有利です。オイルは白油で希釈されていることが多く、セルロースメンブレンでろ過しやすいからです。フィルターメンブレン上の溶媒残留物は、ホルダーの白色の背景を損傷するおそれがあります。
白色の背景:編まれたメッシュフィルターを使う場合は、白色の背景が有利です。メッシュフィルターのメンブレンは、すすぎ液をかなり速くろ過できるので、ろ過工程を速めるときによく使用されます。メッシュフィルターを検査する場合、顕微鏡ではサンプルホルダーのメッシュを通り越して見えます。黒色の背景では、黒色の部分が織目越しに見えて、粒子と勘違いしてしまいます。このため、メッシュフィルターを検査する場合は白色の背景を持つサンプルホルダーが推奨されます。
今後のブログ:清浄度検査のその他のサンプリング法の詳細
工業用清浄度検査のサンプリング法について、今後のブログにご期待ください。次のブログでは、直接液体ろ過を取り上げます。見逃さないようにしたり、清浄度解析に関する他の役立つブログを読んだりするには、InSight Blogを購読してください。清浄度検査の基本についてのカタログでも、標準ワークフローの詳細をご覧いただけます。