これまで、トータルフォーカシングメソッド(TFM)フェーズドアレイ超音波探傷試験(PAUT)装置によるビーム範囲に関して、情報が不足していました。簡単に言えば推測ゲームのようなものでした。検査員は、ビーム範囲がターゲット領域全体で均一であると想定しなければなりませんでした。しかしご存知のように、想定は正確な結果を保証するものではありません。
各伝搬モードで提供される範囲レベルと、信号感度の最高点と最低点を事前に把握しておけば、検査員にとってかなりのメリットがあります。探しているタイプの欠陥を各モードで検出できるかどうかについて、より確実に判断できます。また、検査業務において、確実性を上げることは大きな利点です。
音響領域とトータルフォーカシングメソッド(TFM)
トータルフォーカシングメソッド(TFM)は、数十年にわたり医療業界で、NDTではここ数年にわたり使用されてきましたが、この技法を使用する検査員は、適切な結果を得るために試行錯誤を幾度も重ねることが常でした。伝搬モード(イメージングパスまたは音響パス)に対する非常に多くのオプションは、ユーザーを混乱させ、検査結果を予測不可能にする場合があります。
一般的なTFMシステムでは、ユーザーは音響影響(エネルギー)の領域がスキャンプランのターゲット領域全体に均一に広がっているのが当然だと見なします。実際には、音響影響レベルはTFMスキャン領域内で異なるため、欠陥によっては十分なSN比(SNR)でも検出されない場合があります。効果的な音響影響は多くの要因に左右されます。これには、材料音速、プローブ周波数、欠陥の方向性などがあります。さらに重要なのは、音響影響は選択した探傷モードに大きく依存するということです。
TFMを操作する際の課題
この作用ゾーンを作成する方法は、ユーザーに誤った期待を抱かせます。ソフトウェアによる取得後に実行されるビームフォーカシングも、従来のフェーズドアレイ超音波探傷試験(PAUT)と同様に、超音波の物理特性によって制約されます。 ある一定のビームは、想定されたフォーカスパワーではゾーンのすべての領域に到達できません。
例えばTTTモードでは、ゾーンの右上隅にある反射源を検出するのに十分な高さの音響感度を得ることができません(下のスクリーンショットを参照)。しかし、オペレーターはこのセクションがゾーンの範囲内であるため、焦点を合わせられると思ってしまう可能性があります。
AIMモデリングツール— 線状欠陥に対するTT-Tモードセットで、ゾーンの右上隅に振幅応答がないことを強調する赤色矢印が追加されています。
AIMの改善
Acoustic Influence Map(AIM)は、ユーザーが欠陥の種類に応じて最適なモードを選択できるようにするモデリングツールです。このツールは、線引きされたゾーン内の振幅マップを表すモデルを、OmniScan TM X3探傷器上で直接作成します。マップは以下のように色分けされます。
- 赤色のエリアは、超音波応答が非常に良好で、最大振幅は0 dB~−3 dBの範囲
- オレンジ色のエリアの最大振幅は−3 dB~−6 dBの範囲
- 黄色のエリアは−6 dB~−9 dBの範囲
- その他
検査員は、ポロシティなどの全方向反射源(容積欠陥)か、亀裂などの線状反射源かを選択できます。欠陥タイプを調整するとAIMモデルが更新されて、所定の欠陥に所定のモードを使用した場合の振幅の相違が示されます。
AIMモデリングツール — 反射源角度の調整に従ってAIMモデリングが変化します
この機能を使用すると、検査員は各モードのビーム範囲を比較できるため、指定したゾーン内で欠陥を検出するために最適な信号感度が確実に得られます。検査を開始する前であっても、検査員は対象とする欠陥のタイプに適したモードを使用することに確信を持てます。
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