光学顕微鏡はその用途に応じて最適化された構成に基づいて分類できます。
標本(観察したい物体)を上方から観察するタイプである正立型顕微鏡(写真左)は最も一般的な形として知られており、広い用途に用いられています。標本を 下側から観察するタイプである倒立型顕微鏡(写真右)は、鉱物の切片・金属材料などの切断面などを観察する用途で用いられています。
光学顕微鏡は次の大きな2つの基本機能で構成されます。
標本の拡大像を作る機能は、「鮮鋭な像を得る」・「倍率を変える」・「ピントを合わせる」という3つの基本機能からなり、これらの役割を果たす光学系を観察光学系と言います。
一方、標本を照明する機能は、「光を供給する」・「光を集める」・「明るさを変える」という3つの基本機能からなり、これらの役割を果たす光学系を照明光学系と言います。言い換えれば、観察光学系は標本(試料)を光学系によって投影し、さらにその投影像を眼あるいはCCD等の撮像素子に導く役割を果たす光学系で す。
一方、照明光学系は光源から発した光を有効に集め標本に導き照明する役割の光学系です。光学顕微鏡における観察光学系と照明光学系の配置は正立型顕微鏡で は下記図の通りですが、倒立型顕微鏡の場合は観察光学系と照明光学系の配置関係が、正立型顕微鏡の配置に対して標本を中心に上下を反転させた関係となりま す。
顕微鏡の光学系構成
光学顕微鏡では、対物レンズによって標本物体の拡大像をつくり、その拡大像を接眼レンズによってさらなる拡大像を作ることにより肉眼で観察されます。下記図において、標本物体をABとすると、対物レンズ(ob) によって、倒立実像の1次像(拡大像)A'B'がつくられます。次に、接眼レンズ(oc)をその前側焦点よりも接眼レンズ側にこの1次像A'B'が配置さ れるようにすることによって、さらに拡大された正立虚像A"B"がつくられ、肉眼を眼(瞳)の位置に配置することによって、拡大像が観察されます。つま り、観察される最終像は倒立の虚像となります。このように倒立実像をつくる対物レンズと、正立虚像をつくる接眼レンズを組み合わせて拡大像をつくる形式の顕微鏡は複式顕微鏡と呼ばれ、一般的に、光学顕微鏡の観察光学系はこの複式顕微鏡を基本としています。一方、対物レンズで拡大された倒立実像を直接観察する形式のものは、単式顕微鏡と呼ばれます。近年普及が拡大しているテレビ観察はCCDカメラ等でこの倒立実像を直接に撮像する形であるので単式顕微鏡の光学系となっていると言えます。
光学顕微鏡の原理